3月10日、JR宇都宮線で「トコジラミ」を発見したという情報がSNSに投稿されました。
韓国・フランスでも社会問題となった害虫「トコジラミ」が、日本でも増加しています。
春から夏にかけ、さらに活発化するトコジラミ。その生態と対策について国立環境研究所室長の五箇公一氏に聞きます。
【写真を見る】「針で突き刺されるような耐え難いかゆみ」トコジラミ日本でも増加 実はカメムシの一種?専門家が生態と対策を徹底解説【ひるおび】
「夜に吸血」「飛ばない」トコジラミの生態
トコジラミは、シラミという名前がついていますが、カメムシ目です。昔は南京虫と呼ばれていました。海外では布団についていることでBed Bugと呼ばれています。
▼体長は5~8ミリ前後
▼赤褐色
▼アリと同程度の速さで歩き、羽が退化しているので飛んだり跳ねたりすることはない
▼オスメスともに、幼虫から成虫まで吸血
▼夜行性
▼繁殖力が強い(メスは一生のうちに100~500個産卵)
▼過ごしやすい温度は25℃前後
トコジラミに刺されると、発疹や強いかゆみが続きます。
国立環境研究所室長 五箇公一氏:
トコジラミの唾液でアレルギー反応がおきてかゆみが出ます。
市販の薬だとかゆみが治まらないほど非常に強くなりますので、できるだけ早い段階で皮膚科医に診てもらってきちんと薬を処方してもらうといいと思います。
トコジラミの逆襲!?被害は世界中に 日本でも
トコジラミは、世界で数を増やしています。
去年韓国では、韓国語でトコジラミを意味する「ビンデ」と「パンデミック」を合わせて「ビンデミック」という造語が作られるほどの社会問題となりました。
また、今年オリンピックが行われるフランスでも、パリの地下鉄や映画館など公共の施設での目撃情報が相次ぎ、トコジラミパニックになりました。現在も政府が駆除など対応に追われ、議会でも激しい議論になっています。
五箇氏:
基本的には全世界に広がっています。ヨーロッパ、アメリカ、東南アジアなどでも発見されていますので、別にパリや韓国だけが特別というわけじゃないと思った方がいいです。
日本でも被害が急増しています。
東京都ペストコントロール協会によると、2009年には東京都で38件しかなかった相談件数が、2023年には350件と9倍以上となっています。
五箇氏は、「インバウンドの増加で、スーツケースなどに紛れ込んで海外から日本へ流入し、日本国内での激しい人の動きによって、すでに私達の家の中に入り込んでいる可能性もある」としています。
五箇氏:
海外でも戦後の経済発展の中で公衆衛生が発達してトコジラミも数を減らしていたんですが、その後人の移動が活発になるとともに薬が効かない系統が進化してまた増え始めています。
恵俊彰:
殺虫剤が効かない?
五箇氏:
薬を使い続けたことで薬に対して耐性を持つ遺伝子が進化していったんですね。
殺虫剤に耐性を持つトコジラミは、「スーパートコジラミ」と呼ばれています。
恵俊彰:
これ‟トコジラミの逆襲”ですよね。殺虫剤で絶滅の危機に瀕して、それに耐えるようなものが生まれたという。
「耐え難いかゆみ」実際に刺された人は
2023年8月、大阪市内の宿泊施設でトコジラミの被害に遭った方に話を聞きました。
「足全体とお腹、露出している部分を全体的に刺されてしまいました。翌朝すぐに自分の体を確認すると、真っ赤に腫れている状況が目に入りました。
針で常時突き刺されているかのような、蚊に刺されたときの感覚とはまた違う、耐え難いかゆみが1週間ほど続いてしまいました。」
五箇氏:
本当にアレルギー反応が強くてかゆみが強いんですね。蚊よりもそういった反応が強く出て、痒みが長く続いてしまうことになります。
ひどい人だと1週間から1か月ぐらいかゆみが続きます。
複数刺さればその箇所全部でずっと続くことになります。
五箇氏によると、トコジラミは、夜間に寝ている人の露出した手足や首などを狙って潜伏場所からはい出てきて吸血をします。刺されたと思ったら、皮膚科を受診してください。
「トランクはバスルームで開ける」旅行で気を付けること
トコジラミ対策は、「持ち込まない」「持ち帰らない」ことが重要。
宿泊先に着いたときには、荷物を一旦バスルームへ移動させます。そして、部屋の中をチェックしてから持ち込む。ビニール袋に洋服を入れて部屋に持ち込むのも有効です。
国立環境研究所室長 五箇公一氏:
緊急避難というか、要はその部屋が安全かどうかわかるまでは荷物はうかつに床に置かない方が安心です。
床のカーペットの裏側やベッドマットレスの隙間に潜んでいますので、荷物を置いたときに荷物に紛れ込んでしまうと、知らないうちに運び出してしまうという恐れもあります。
バスルームのように引っ掛かりがないツルツルしたところだと彼らは登れないんです。
恵俊彰:
万が一部屋で見つけたらどうすればいいですか?
五箇氏:
宿泊施設の場合はフロントに言って部屋を変えてもらうなり、ホテル自体変えた方が安全だと思います。
特に集団宿泊施設に関しては、1部屋いれば他の部屋にもいるだろうと考えなくてはならない。1匹でも見たら警戒が必要になってくると思います。
恵俊彰:
みつけたトコジラミはその場で処分していいんですか?
五箇氏:
ティッシュなどでつまんで、ビニール袋があれば中に入れて、トコジラミかどうかを確認してもらうのがいいです。
旅先から家に帰ってきた時も要注意。スーツケースはバスタブの中で開封します。
さらにその中の洗濯物は、使っていないものも含めてすぐに洗濯します。
五箇氏:
トコジラミ自体は水で溺れることはないんですけれども、洗剤を入れると界面活性剤で体表のワックスが落ちて溺死します。洗剤を使っていただくのが大事です。
キャリーケース以外にも、宅配で届いたダンボールの中に入っているということもありえます。荷物が届いたら、ダンボールなどは外で開けてすぐに処分をしてしまうのもひとつの方法です。
五箇氏:
必ずしも今、日本で流通しているダンボールにいるというわけではありませんが、念のため、特に海外から輸入されるような荷物に関しては十分注意していただいた方がよろしいかと思います。
家の中で潜む場所は・・・
万が一家に持ち込んでしまった場合、繁殖しやすい場所があります。
◆ベッドマットレスの「下」
◆ソファの隙間
◆ラグの裏側
五箇氏:
明るいところが苦手で、昼間の間にできるだけ暗いところに入りこみます。体の大きさがそれなりに大きいので、ダニみたいに布団の中まで入り込むということはないんですね。
どちらかというとマットレスの下、あるいはベッドの裏側にへばりついて隠れていて、夜間這い出して人間の体を襲ってくるということになります。
弁護士 八代英輝:
布団乾燥機で熱を加えると駆除できるんじゃないかなと思ったんですけど、ベッドのフレームの下とかマットレスの下にいるんだと、トコジラミには効果がないってことですか?
五箇氏:
そうですね。乾燥機自体は布団の中に住んでいるチリダニと言われるものには効果があるんですが、残念ながら布団のさらに下にいるトコジラミまでは殺虫するだけの熱は届きません。布団乾燥機をかけているから安心とは言えないということになります。
恵俊彰:
見つけた1匹を処分したとしても、殺虫剤に耐えるスーパートコジラミなどがいるので、そのあとはどうすればいいんでしょうか?
五箇氏:
おっしゃる通り、家庭用の殺虫剤で処理しても死なないものがたくさん出てきているんですね。やはり専門の業者さんを呼んで徹底的に駆除しない限りは、一匹でも残っていればまたすぐ再生してしまうことになります。
できれば自治体を通して相談して適正な業者さんに処理していただく。
徹底的に隙間にいる個体をやっつけて、1回だけでなくしばらく時間をおいてから次の個体が出てくるのを見計らってまたもう1回という具合に、大体3回ぐらい繰り返して駆除することになります。
トコジラミを見つけたら
万が一、トコジラミを見つけた場合の対処法です。
◆カメムシの仲間なので潰すと強い臭いがする⇒つぶさない
◆熱に弱いので、ドライヤーをあてる(火事に注意)
◆掃除機で吸って、ゴミ袋に入れてしばって捨てる
◆ガムテープにくっつけて、ビニール袋に入れてしばって捨てる
◆虫よけスプレー(ディートが含まれたもの)が有効
暖かくなる春以降、トコジラミが活発化するので注意が必要です。
五箇氏:
昆虫ですので、1年間のサイクルとしては春から夏にかけてが一番活動が活発になります。肌の露出が増えてくる季節に入りますから、一層刺される機会が増えるという意味で注意していただきたいと思います。
こういった虫がいるということを知った上で警戒して、入ればすぐに駆除する心構えをしていただくのが大事だと思います。
(ひるおび 2024年3月14日放送より)