自民党「過激ダンスショー」と「裏金事件」の共通点 なぜ問題は繰り返されるのか

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-03-16 06:05
自民党「過激ダンスショー」と「裏金事件」の共通点 なぜ問題は繰り返されるのか

派閥の裏金事件に続き、去年11月、自民党の若手議員が参加した懇親会が物議を醸している。
懇親会には、露出の多い衣装を着た女性ダンサーが招かれていたことが分かり、「不適切にもほどがある」などと批判の声が高まっている。

【当日の写真をみる】和歌山県連が主催した懇親会の様子 近畿の若手の地方議員や、国会議員などおよそ40人が参加し、会場には余興として女性ダンサー5人が招かれた

自民党の相次ぐ不祥事に政治不信が広がっているが、なぜこうした問題が繰り返されるのか、そこには自民党議員が抱える、ある共通点が見て取れる。

自民党・若手議員の懇親会で「過激ダンスショー」

問題が起きたのは去年11月、和歌山市で開かれた自民党の「青年局近畿ブロック会議」後に催された懇親会だった。
和歌山県連が主催した懇親会には、近畿の若手の地方議員や、国会議員などおよそ40人が参加し、会場には余興として女性ダンサー5人が招かれた。
出席者によると、ダンサー達は一度、会場をあとにしたというが、再び姿を現すと、下着と見まがうような露出の多い衣装に着替えていたという。

懇親会を企画した和歌山県連の川畑青年局長(当時)は、「多様性=ダイバーシティがテーマだった」と主張したが、出席者と女性ダンサーが口移しでチップを受け渡す場面や、衣装に紙幣を挟むような場面がみられるなど、とても党の行事として適したものとは言えず、批判が殺到。川畑氏は離党することとなった。

自民党青年局長らが役職辞任「国民の信頼を損ねる行為だった」

「過激ダンスショー」として問題が明るみになった3月8日、事態は急変する。懇親会に参加していた自民党の藤原崇青年局長と中曽根康隆青年局長代理の2人が役職を辞任すると表明した。

藤原氏は「国民のみなさまの信頼を損ねる行為であったと考える」と陳謝。中曽根氏も「中断とか中止を促すこともできたし、行動もとれたはずだが思い・行動が至らなかった責任を大変感じている」と反省の弁を述べた。

報道が出て半日足らずの辞任劇に、ある閣僚経験者は「裏金事件の処分に時間がかかってるから、せめて青年局の対応は早くやった方が良い」と話し、早期辞任を評価した。

派閥裏金事件 初の参院・政治倫理審査会

不祥事が続く自民党だが、派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件を受け、3月14日、参議院では初となる政治倫理審査会の弁明と質疑が行われた。

トップバッターに立ったのは、安倍派の幹部を務めた世耕前参院幹事長だった。世耕氏は2022年4月、安倍元総理が提案しキックバックの廃止が決まった幹部会合の出席者。7月に安倍氏が亡くなると、安倍派議員の中からキックバックの復活を求める声が上がり、8月上旬、安倍氏を除くメンバーでキックバックの扱いについて協議した。その後、復活が決まるのだが、世耕氏は「この会合で復活が決まったということはない」と断言する。

では、いつ復活が決まったのか、派閥幹部である世耕氏だが政倫審の場で問われると「はっきり言って分からない。誰がこんなことを決めたのか私自身知りたい」と主張し、結局実態解明に繋がる証言は得られなかった。
世耕氏の答弁をめぐっては、野党が「派閥の幹部であるからこそ、知らないのであれば調べるべき」と追及するだけでなく、身内の自民党内からも「説明責任を果たしていない」「逆に疑惑は深まった」と不満の声が上がり、連立を組む公明党の石井幹事長も「無責任のそしりは免れない」などと痛烈に批判した。

自民党の調査報告 「『収支報告書に記載しないように』と言われていた」

なぜ自民党では派閥の政治資金パーティーの収入の一部がキックバックされ、政治資金収支報告書に記載されない事態が続いてきたのか。

自民党の聴き取り調査の報告書では「派閥事務局から収支報告する必要は無いと言われ信じていた」「『収支報告書に記載しないように』と言われていた」との声が複数あがり、キックバックされた金を使用していなかった理由として「裏金みたいなものではないかと思い、全額残した」と、裏金の認識を認めた議員もいた。
だが結局、声高に是正する動きを見せる議員は出ず、派閥側の指示に従う形で、収支報告書への不記載が少なくとも10年以上続くこととなった。

「裏金事件」と「過激ダンスショー」の共通点

「過激ダンスショー」や「裏金事件」といった政治不信に繋がる不祥事がなぜなくならないのか。そこには、議員達が”おかしいと気付きながらも周りの空気に流され、行動を起こそうとしない”という共通点がある。

不適切な懇親会に参加し、青年局長を辞任した藤原氏は「パフォーマンスの途中で、どうかなと思いましたが、和歌山県連が用意したので止めるのもどうだろうかということで止めませんでした」と話す。

一方、裏金事件をめぐっては、党の調査に対し「派閥に属している者からすると、派閥から記載するなと言われてたものを記載するわけがない」「派閥の一会員は派閥から指示されると、そこから外れたことは出来ない」などと答えるなど、上には逆らえないとの心情が滲む。

ただ、国会議員は新人であろうと、大臣経験者であろうと、その土地土地で選ばれた国民の代表でもある。自民党が、いわゆる「派閥」を解消し、金と人事と完全に決別すると謳う中、議員一人一人には有権者の声を、「代」わりに「議」論する「士(さむらい)」であるとの自覚が求められている。

政治部 与党担当キャップ
中島哲平