“ポスト岸田”の「志ある」密かに燃える加藤勝信氏 「幸運の女神の前髪掴む」【「ポスト岸田」候補の素顔】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-04-28 06:05
“ポスト岸田”の「志ある」密かに燃える加藤勝信氏 「幸運の女神の前髪掴む」【「ポスト岸田」候補の素顔】

「常に高みを見据える」。自民党・加藤勝信元官房長官が総理・総裁を目指すかを問われ、初めて公然と意欲を示したのは2018年10月。安倍政権下で、自民党の最終的な意思決定を行うポスト「総務会長」に任命された就任会見のときだった。
あれから5年半が経ち、この間は総理総裁への意欲についての発言を封印。そして現岸田政権下では3度目の厚労大臣となるも、去年9月に任を終えてからは閣僚や党の役職に就かず、鳴りを潜めている。しかし、心に灯した火は決して消えたわけではなくて──。

【写真を見る】“ポスト岸田”の「志ある」密かに燃える加藤勝信氏 「幸運の女神の前髪掴む」【「ポスト岸田」候補の素顔】

【連載】「ポスト岸田」候補の素顔 記事一覧はこちら

「政治家というより官僚」「つまらない」立ちはだかる”1%未満”の壁

「加藤さんは世論調査の人気度で、ちょっと数字が低すぎるんだよな」
総裁選で動向が注目される自民党の閣僚経験者は、周囲にこう呟いた。
各社の世論調査で質問項目にある『次の総理・総裁にふさわしいのは誰か』。
選択肢にたびたび加藤氏の名前は挙がるものの、支持率は1%に満たないことがほとんどだ。
24年3月に実施したJNN世論調査では、1位から順に石破茂氏(19.0%)、小泉進次郎氏(15.8%)、上川陽子氏(10.0%)と続き、加藤氏は0.6%にとどまった。
※JNN電話世論調査 実施:3月30日・31日 対象:全国18歳以上2190人 有効回答:1036人

コロナ禍の安倍政権で厚労大臣、続く菅政権では官房長官への登用と重要閣僚を歴任し、発信の機会を得ながら、なぜ“ポスト岸田”としての支持が広がらないのだろうか。

加藤氏の仕事ぶりを間近で見てきたある政府関係者は、加藤氏についてこう語る。

ある政府関係者
「頭も良いし、加藤さんは何でもできる。総理になってくれたらやりやすい。ただ、政治家というより官僚のようだ

元財務官僚の加藤氏。実際、永田町や霞が関で“加藤評”を聞いてまわると今でも、良くも悪くも「官僚のようだ」と評されることが少なくない。

その理由はまず1つに、加藤氏の実務能力には政官ともに一定の評価があること。

2020年9月に誕生した菅政権で、加藤氏は女房役の官房長官に抜擢された。安倍元総理の生前、自らが官房長官だった頃から菅氏は「他に官房長官が務まるのは加藤氏か河野氏」との考えを持っていた。

官房長官時代、幾多の災害や北朝鮮のミサイル対応など危機管理、調整能力の高さなどで腕を鳴らした菅氏。その菅氏から信頼を得るほどに、答弁力や安定感には定評がある。

また加藤氏は厚労大臣時代、働き方改革法、年金制度改革法、改正マイナンバー法など、重要法案の成立にあたり幾度も国会で答弁に立ったが、事前に所管省庁から説明を受ける「答弁レク」は、自ら想定問答をチェックし必要箇所のみ最小限で行い、理解も早い。

一方で、「官僚のようだ」と言われるもう1つの理由は・・・

ある政府関係者
「加藤さんに足りないのは狡さ。裏表がないんだよな。良く言えば真面目だけど、つまらない

別の政府関係者
「加藤さんは面白味がない、遊びがない、意外性がない。もう少しを見せたら良いのにと思う」

脱・「つまらない政治家」?SNS戦略で見栄えの良さより重視した「親しみやすさ」

加藤氏の答弁と言えば、厚労大臣時代の2018年、働き方改革の国会審議において、野党側から「質問に正面から答えず、論点をずらす、いわゆる『ご飯論法』だ」と指摘を受け、“不誠実だ”と批判もされた。
官房長官になった加藤氏は在任中、会見などで目立った失言もない一方で、カメラの前で相好を崩すことはほとんどなく、厳しい表情で記者とやり取りする姿が目立った。そのため、加藤氏の周辺は「冷たい印象を与える」「本来の人柄が伝わらない」と気を揉んだ。

そしてわずか1年で菅政権が終焉を迎え、加藤氏も任を終えた。官房長官が行う1日2回の会見がなくなり、“発信”の機会が減ることから、強化したのがSNSでの発信だった。

視察や地元の行事などの訪問先で加藤氏が自撮りし、カンペを読まずに即興で話す。加藤氏のSNSに投稿された動画を見ると、顔面のアップで画面の半分ほどが埋まる不思議な構図。一貫しているのは、「手作り感」に拘り、あえてNGテイクで緩んだ表情の加藤氏の姿を載せるなど、「動画を見た人に親近感をもってもらう」ような動画であること。「つまらない」「遊びがない」など従来の“加藤評”を覆すべく、薄紙を剥いでいくような作業だった。

今も総理総裁への志消えず 密かに明かす胸の内

様々な角度から発信を試みる加藤氏だが、今もポスト岸田を見据えているのか。公の場でその核心に触れられることはなかったが、周囲にはその胸の内を明かしている。

「ずっと高みを見ている。志はある」
今でも総理総裁への意欲を持ち続けていることを、明言しているという。

まだ一度も総裁選に出馬したことのない加藤氏。では、いつ動くのか。

そもそも、世論調査の数字が低くても「ポスト岸田」の1人として加藤氏の名前が上がり続ける理由の1つに、清和研(安倍派)と志公会(麻生派)という、党内の2大派閥が、「加藤支持」でまとまる可能性がある、という点も大きかった。加藤氏は安倍元総理と近く、麻生副総裁も加藤氏を高く評価しているからだ。また、当選同期の萩生田前政調会長(安倍派)、武田元総務会長(二階派)と定期的に会合をもち、彼らからも「ポスト岸田」の一人として一目置かれる存在となっている。
しかし自民党派閥の裏金事件を受け、麻生派を除く派閥は解散。総裁選に向けての動きは不透明さを増している。

また、自身が所属する平成研の茂木会長が「ポスト岸田」をうかがっていることから、加藤氏も表立っては動きにくかった。派閥としての平成研は解消されたものの、「政策集団」としては存続することとなり、加藤氏は現在もメンバーとして残ったまま。今後、加藤氏がどう動くのかが注目されている。

そんな中、加藤氏は今のタイミングで「ポスト岸田」を狙い、自ら積極的に動くことには否定的な考えだという。

「仕掛けた人は大体、嵌っている。やはり大きな流れというのがあって、それに乗っていくものだ。『幸運の女神に後ろ髪はない(古代ギリシャの諺)』。前を通り過ぎた時には掴める後ろ髪がないので、ふっと現れた時すかさず前髪を掴めるよう準備はしている。いつ、何があるか分からないから」(加藤氏・周囲に対し)

加藤氏は時流に乗ることを大切にし、頼まれた仕事は基本的に断らないスタンスだ。一方で、自ら手を挙げ「これをやりたい」ということはない。それゆえ、「何でもできるが、何を一番したいのかが分からない」と評されることもある。自分が総理総裁になり、一番やりたいことは何か。それは加藤氏自身も模索している最中であるように思える。
党内で今も社会保障や憲法改正、税調の議論をリードする責任ある立場を任されている加藤氏。存在感を示し、総理総裁への足がかりを掴むことはできるのか。
準備に時間をかけ没頭していれば、幸運の女神を見逃すことにもなりかねない。

政治部 与党担当 サブキャップ
難波澪

  1. JR東日本「サイバー攻撃受けた」 モバイルSuicaなどに障害
  2. 紀州のドン・ファン元妻 須藤早貴被告 詐欺事件の初公判「私の体をもてあそぶために金を払った」
  3. 【速報】平山綾拳容疑者(25)を殺人容疑で11日に再逮捕へ 「殺害についても指示を受けた」那須夫婦遺体 警視庁
  4. 赤坂御用地内で業者の男が屋外の女性用トイレに侵入し建造物侵入の疑いで逮捕 皇宮警察
  5. フィリピンで日本人の男を拘束  大阪府での性的暴行事件で逮捕状  強制送還へ
  6. 【朝の悲劇】これぞ究極の邪魔猫!?新聞が読めない飼い主の嘆きに爆笑必至
  7. 太田海也 “競技歴3年”異色の金メダル候補が五輪前哨戦で快勝 ボートから自転車競技転向はサイクルショップ勤務が始まり
  8. ウクライナ北東部ハルキウ州内にロシア軍が1キロ進軍か 国境付近で大規模攻撃 住民は避難
  9. 田中希実パリ五輪出場内定お預け 15分11秒21でパリ五輪参加標準記録突破ならず【DL・ドーハ大会】
  10. 犬に嫌われる『スキンシップ』5つ 愛犬が実は大迷惑に思っている触り方とは?
  11. コーヒー豆高騰の背景に…中国でブーム“悪魔のフルーツ”、ピザや火鍋にも【Nスタ解説】
  12. “政権交代望む”48%…窮地の自民立て直すには?「ポスト岸田」1位・石破茂氏が語る【国会トークフロントライン】