猫の『手術につながる病気・ケガ』6選 避けたい麻酔のリスク、予防法はある?

2024-03-21 06:00

猫との暮らしは愛情と癒しの時間を提供してくれますが、ときには「健康上の懸念」が浮かんでくることもあります。とくに愛猫が手術を必要とする病気やケガを患うことは、飼い主にとって深刻な悩み事の一つです。そこで今回は、猫の手術につながりやすい病気やケガを6つと麻酔のリスクなど解説します。猫の飼い主さん必見の内容です。

猫の手術につながる病気とケガ6選

無影灯

1.ガン

人間の死因第一位が「ガン」であるように、猫の死因の第一も「ガン」です。そしてガンになると、多くの場合手術を行います。

ガンとは悪性腫瘍のことで、周りの細胞に浸潤したりほかの臓器に転移したりして命を奪う、非常に怖い病気です。とくに猫によく見られるガンは、乳がん・肥満細胞腫・扁平上皮癌など。

初期に見つかって手術や抗がん剤をつかった治療を行えば命が助かることもありますが、猫は不調を感じても状態がひどくなるまで隠し続ける習性があるので、見つかったときには「手の施しようがない」ことも珍しくありません。

そのため「ガン」から猫を守るには、健康診断といった「早期発見」につながることを飼い主が積極的に行う必要があります。

とくに猫の長寿化も進み、シニア猫のガン罹患率は高まっているので注意が必要です。

2.子宮蓄膿症

子宮内腔への細菌感染がおこり、膿が子宮内に貯留した状態を子宮蓄膿症と呼びます。未避妊の雌猫に発症しやすい病気です。

そしてこの病気になると、残念ながらほとんどのケースで「子宮全摘出」の手術となります。

猫の子宮蓄膿症の発病には性ホルモン(プロゲステロン)が関わっているため、交尾排卵動物(交尾した刺激で排卵する)である猫は、犬よりも発生頻度は低いといわれています。

とはいえわたしが従事していた動物病院でも、猫の子宮蓄膿症は少なからず見られました。子宮蓄膿症は時間の経過とともに進行し、最終的には敗血症などの合併症を引き起こし命に関わるため早急な対応が重要です。

3.尿路結石

尿路結石とは、猫の膀胱や尿道に結晶や結石が詰まり尿の排出が妨げられる病気です。

尿が排出できない・しづらい状態となるため、毒素が体にまわる「尿毒症」を併発する可能性があり、非常に危険な病気です(尿毒症になると、数日以内に命を落とすことがあります)。

尿路結石には「ストルバイト結晶」と「シュウ酸カルシウム結晶」という2タイプがありますが、とくに後者の場合は自然な融解を期待できないため、外科的に結晶や結石を取り除く必要があるのです。

猫は水分を積極的に摂らないで膀胱に尿を貯めすぎてしまうため、この病気にかかりやすく、とくに尿管が細くてカーブしているオス猫は要注意!

尿路結石をわずらうと、頻尿・尿がでない(出ても少量)・排尿時に痛がる・尿の出口を舐める・尿のなかにキラキラ光るものが混入しているなど、特徴的な症状があらわれることが多いので、気づいたら早めに獣医師に相談しましょう。

4.誤飲

猫が危険なものを誤飲したときも、手術をすることがあります。

たとえば長いひも状のもの・ゴム製品・おもちゃの細かい部品・電池・コットンや女性用衛生品・スポンジなど。

消化できなかったり、腸閉塞といった危険な病気を引き起こす可能性があるものを飲み込んでしまった場合は、お腹を開く手術を行うケースがあります。

誤飲は、飼い主がきちんと管理すれば防げるトラブルです。とくに好奇心旺盛で、なんでも口に入れてしまうような猫と暮らしている人は、管理を徹底しましょう。

5.骨折

猫の骨折は、骨が外傷によって折れた状態を指します。外部からの衝撃や事故、高い場所からの転落などが主な原因です。

猫は犬と比べてしなやかな関節をもち、一般的なソファやキャットタワーから落ちたくらいで骨折することは滅多にありません。しかしいくら猫でも、高いところから落下するとただではすまないでしょう。

骨折をすると、ギブス・プレート・ピンといった道具を用いた手術を行います。そして数ヵ月後にプレートとピンを抜去するため、もう一度麻酔を使った手術を行うことに。

また骨折の手術はさまざまな専門的な器具を使ったりするため、大きな動物病院への転院が必要なこともあり、猫にとっても飼い主にとっても負担が大きくなることが多いです。

6.歯周病

歯周病とは歯と歯ぐきの周囲に発生する炎症性の疾患で、歯垢や歯石の蓄積が主な原因となります。進行すると歯を失うだけでなく、全身の健康にも影響を与えることもある病気です。

シニア猫のほとんどが歯周病を患っているといわれており、口臭がひどい・歯が抜けた・顔が腫れるといった症状があらわれることが多いです。

とはいえ「歯周病で手術?」と思う飼い主さんも多いでしょう。しかし猫の場合は、歯のお掃除や抜歯をするときも全身麻酔をかけて処置をします。人間のように局所麻酔だけで行うと、猫が恐怖で大暴れしてしまうためです。

とはいえ、シニア猫で全身麻酔のリスクのほうが大きかったり、飼い主が希望しなかったりして全身に懸念される症状がなければ、積極的に手術(歯科処置)を行うことはありません。

麻酔のリスクは?

病院で処置される猫

麻酔は手術に欠かせないものですが、同時に次のようないくつかのリスクが伴います。飼い主はこれらのリスクを理解し、猫の麻酔の注意点を知っておく必要があります。

  • 呼吸抑制
  • 筋障害
  • 注射部位の炎症
  • 血圧低下
  • 昏睡
  • 死亡 など

もちろんこれらの状態に陥らないよう、手術の前は麻酔をかけても問題ないかを確認するため、血液検査などを行ったり、年齢・体重・基礎疾患といったその猫の状態を総合的に考慮したりして、獣医師が判断します。

麻酔での死亡率は高いものではありませんが、ゼロではありません。そのため猫の手術の前には獣医師としっかり話し合い、不安や疑問点をクリアにしてから承諾書にサインしてくださいね。

病気を予防する方法は?

話をする猫の飼い主と獣医

病気を予防する方法はそれぞれの病気によって異なりますが、日常生活のなかではとくに次のようなことに気をつけてみましょう。

  • 健康診断を受ける(年一回シニア猫は年に2回)
  • 水をたくさん摂取させる
  • ストレスをかけさせない
  • 子猫を希望しないのであれば避妊去勢手術を行う
  • 食欲や排泄、体重などの記録をこまめにつける

以上のことを実施すれば、100%ではありませんが、病気を予防したり、病気を早期発見するのに役立ちます。ぜひ今日からでも始めてみてくださいね。

まとめ

猫の顔をつつく女性

今回は6つの病気・ケガを紹介しましたが、猫の手術が必要な病気はまだまだあります。

いずれにしても、手術となると全身麻酔を必要とするため少なからず猫にリスクをともなうことに…そのため日頃から猫の健康状態に気を配り、病気の早期発見に努めることが大切です。

とはいえ今後手術という治療手段を選択するときがあれば、手術内容をしっかり理解し、信頼する獣医師のもとで手術を受けるようにしましょう。

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