沖縄県では沖縄島、西表島の次に大きな石垣島は、沖縄島から約400キロメートル離れており、台湾の方が近くにあるほど。国内外から観光客が集まって、リゾート施設や飲食店などはにぎわいを見せている。温暖な気候を生かして農業や畜産業、そして漁業が盛んであるため、滞在中に石垣島グルメを堪能できるのが旅の醍醐味だ。そんな石垣島で生産されている魚ミーバイ(ヤイトハタ)とスギ、そしてパイナップル、パパイヤについて紹介する。
ミーバイとスギをいけすで養殖
ミーバイとは聞き慣れない名称だが、沖縄の方言でハタ類のこと。上品な白身で旨味があり、さまざまな料理との相性が良いのが特徴だ。『八重山漁業協同組合』に所属する日系でブラジル出身の川畑ジョナタスさんは、ハタの一種であるヤイトハタとスギの養殖を9世帯の漁師と共に行っている。スギの味はカンパチに似て、沖縄の魚には珍しく脂のりが良いのが特徴だ。
石垣島でヤイトハタの養殖が始まったのは、約30年前。自家製の餌にこだわり、島内の鮮魚店から出る魚の残渣(ざんさ)を集めて、これに島内の農家から引き取った米ぬかを混ぜてペレット状に加工している。「魚の残渣をいけすにそのまままくと、血が流れ出て海を汚すと思われてしまうのを懸念しています。また、血の臭いに引き寄せられて他の魚が近づき、網を破る恐れがあるので加工しています。この取り組みは今から30年以上前から。餌を島外から運ぶと送料がかかって餌代が2倍になるという事情がありました」と川畑さんは説明する。
ミーバイを出荷するまでには約3年が必要で、その間に経費がかかることから、養殖期間1年ほどでミーバイと同じ大きさになるスギの養殖を約3年前に新たに始めた。また、月に一度、11月からは週に一度は1つのいけすに1トン以上もいる魚を取り出して真水で洗い、ハダムシの寄生を予防するなど、大変な作業もある。「子どもの頃から海に憧れて、日本の専門学校で水産業について学びました。漁業が好きなので、生態系を崩さないように海の資源を守りながら、これからも持続可能な漁業に取り組みたいと思っています」。川畑さんが愛情を注いで育てたミーバイは、同市内の飲食店などで食することができる。
市内にある地魚料理が自慢の居酒屋「まるさ本店」では、通常はヤイトハタの刺身や煮付けが食べられるが、事前に予約・注文(数週間前)すれば通常メニューにはないものも食べられる。和洋中、どんな料理にも合うヤイトハタのおいしさを味わうチャンスだ。
また川畑さんのミーバイを直接買いたい方は、八重山漁協もしくは川畑水産で購入することができる。
『川畑水産』
住所:沖縄県石垣市字崎枝530‐133 電話番号: 070‐9023‐7788 営業時間:9:00~17:00 定休日:日曜
Instagram:@KAWABATA_SEA_PRUDUCTS
『八重山漁業協同組合』
住所:沖縄県石垣市新栄町77‐3
電話番号: 0980‐82‐2448 営業時間:9:00~17:00 定休日:土曜、日曜
『まるき本店』
住所:沖縄県石垣市石垣503-1 電話番号:0980-83-1903 営業時間:17:00 – 22:00(L.O. 21:00) 定休日:日曜
ミーバイを食べたい場合は要予約
味の違いが楽しめるパイナップル
海外産のイメージが強いパイナップルだが、沖縄県でも生産されている。その栽培が可能なのは沖縄島北部、西表島とここ石垣島のみで、いずれも高い山があり、土壌が酸性である地域に限られる。石垣市内にある『石垣島SUNファーム』では、太陽を意味するティダパインの他、桃の香りがするピーチパイン、酸味が穏やかで甘みが強いスナックパイン(ボゴール)などを年間120トン育てて、加工・販売も行っている。
同社は元々関東地区にある学校給食用に生のパイナップルを栽培していたが、出荷サイズに合わないものを有効利用するために6次化に着手。カットパインを製造し、そこで出た端材をジャムやアイスクリームにも加工するように。さらにあめやラングドシャ(フランス生まれの薄い焼き菓子)などの菓子類のほか、パイナップルの芯を活用した石けんも商品開発して販売している。
「パイナップルは追熟しない果物です。海外産は輸送期間などを考慮して収穫されますが、国内産の場合は熟度を合わせて収穫することができます」と同社の當銘敏秀(とうめとしひで)さんは話す。国内産パイナップルの場合、これまでに味わったことのないおいしさに出合える可能性があるのだ。『石垣島SUNファーム』は、加工所に直売店を併設。しぼりたてのジュースやアイスクリーム、加工品も取りそろえているので、石垣島を旅した際はドライブがてら立ち寄ってみるのがおすすめだ。
『石垣島SUNファーム』
住所:沖縄県石垣市石垣市平得 1662-79 電話番号:0980-87-5584
営業時間:10:00 – 17:00 定休日:日曜・祝日
外国人からもお墨付きのパパイヤ
沖縄のフルーツと言えばマンゴーやパイナップルのイメージが強いが、石垣市にある農業生産法人『石垣島パパイヤ』では約1700本の木でパパイヤを育てている。パパイヤ生育の最低温度は15度だが同市内でも場所によってはこれを下回ることがあり、台風被害や畑での連作障害を考慮して行き着いたのが、ポットによるハウス栽培だった。さらにここでは、地面を掘った穴にポットを置いて栽培している。「地面を低くすれば井戸水のように涼しくなって夏場の高温対策になり、パパイヤが成長しても地面に埋まっていれば鉢が倒れることはないと思ってこのようにしました」と玉城真男さんは説明する。
フルーツパパイヤの代表格であるサンライズ種の栽培はここでは難しかったことから、石垣珊瑚(2008年に開発、品種登録)を選択。パパイヤは高いところに実がつくイメージがあるが、これは地面から実がつくため、高さ3メートルのハウス天井までびっしりと実をつて効率的な栽培が可能になる。
現在は同市内の事業者に卸しており、ホテルのビュッフェで提供されたり、スーパーで販売されたりしている。「ホテルで食べたパパイヤの味に感動して、タイ人の女性が栽培の様子を見たいと訪ねてきたことがありました。また、パパイヤに慣れ親しんでいる台湾の方にもおいしいと言ってもらえました。平均糖度は13.8度ですが、最高糖度が18度に達したこともあります」と味に自信を持つ玉城さん。現在の生産量では島外に出荷するのが難しい状況にあるため、食べてみたい人はぜひ石垣島に足を運んでほしい。