インド洋を「中華洋」に?美しい島国に手を伸ばす中国の野望【報道1930】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-04-03 18:37
インド洋を「中華洋」に?美しい島国に手を伸ばす中国の野望【報道1930】

南シナ海では、海域を我がものにせんと、中国がフィリピンと戦争寸前のつばぜり合いを重ねて久しい。中国の海洋進出は南シナ海にとどまらず、インド洋に広く展開していた。インドの南、スリランカはすでに中国と密接な関係にあり、その動きはインドやアメリカにとって看過できないものとなりつつある。そして今、中国は新たに美しい島国に手を伸ばしている。

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「マラッカ・ジレンマ」 エネルギー政策の要衝がウイークポイントにも

パナマ運河、スエズ運河、ホルムズ海峡とともにシーレーンの世界的要衝となっているマラッカ海峡。日本を含む東アジアにとって、太平洋とインド洋をつなぐ最短ルートとして欠かせない航路だ。これは中国にとっても同様で、中国の石油などエネルギー輸入の8割がここを通る。

だが、マラッカ海峡周辺における覇権は長く西側が握っている。つまり、有事の際ここを封鎖されると中国にとって大きな痛手だ。対外政策、エネルギー政策の要衝がウイークポイントにもなる。これが「マラッカジレンマ」だ。国家主席時代の胡錦涛氏が「エネルギー安全保障を確保するために積極的対策が必要だ」と語ったのは20年以上前だ。

元外務副大臣 佐藤正久 参議院議員
「このマラッカ海峡を中国が押さえるのか、アメリカが押さえるのか、でぜんぜん戦略体制が変わってきちゃう。もし中国が押さえたら日本も台湾も韓国も干上がっちゃう。このジレンマは日本も韓国もみんな同じ」

笹川平和財団 小原凡司 上席フェロー
「中国は胡錦涛以前から危機感を持っていた。しかしそのころはコストもかかるし、技術も追いついていなかったが、胡錦涛が2003年もう一度危機感を強めている。それは中国がGDPでアメリカの6割を超えたら必ずアメリカは中国を潰しに来ると…。マラッカ海峡を封鎖される手段を非常に懸念していた。中国が経済力を増せば増すほど危機感も増している」

他人ごとではない。日本と韓国、実は中国以上にエネルギー輸入の9割がこのマラッカ海峡を通って行われている。しかし中国にとってはそれどころではない。そして中国は習近平時代に入り特にこのルートでの勢力を確保することに力を入れ始めた。南シナ海の領有権しかり、インド洋進出しかり…。南シナ海ではアメリカ軍が撤退したフィリピン相手なので順調に勢力を拡大している。だがインド洋では当然のことながらインドが強い。

佐藤正久 参議院議員
「(敵である)インドは非常にいい場所に軍事基地を持ってる。アンダマル・ニコバル諸島と言って、マラッカ海峡の出口を扇のように押さえてる。中国はこれを打破するために後ろ側のスリランカ、モルディブ、パキスタンと上手くやるしかない」

「特定の国に傾いている印象を与えないことで、最大の利益を得ることができる」

インドを出し抜くために周辺国とのつながりに力を入れる中国。そのひとつとしてスリランカに接近した中国は、巨額の融資でスリランカの発展に協力した。その結果、負債を返済しきれなくなったスリランカは南部・ハンパントタ港を99年間にわたり中国企業にリースすることとなった。これは「債務の罠」とも呼ばれ、今は中国の石油関連施設などが建設されているが、軍事拠点にならないとは限らない。

そして今、スリランカと同じ道を歩くかもしれないのが、インドの南西に1000を超える島々で構成される「アジアの楽園」モルディブ共和国だ。

このモルディブは中国が「一帯一路」を打ち出した2013年以降、インドや欧米諸国との関係が悪化。一時期インド寄りに揺り戻しはあったが、去年親中派の政権が誕生し今や蜜月だ。

モルディブの安全保障と外交政策を分析するインドのシンクタンクに聞いた。

グルビーン・スルタナ研究員
「(2023年に就任したモルディブの)ムイズ大統領が中国に近づき、インドとの関係を捨てているような印象であることに(国民は)あまり満足していないと思う。モルディブの人々は健康面などでインドに依存しているし、主食の多くはインド産だ。コロナの期間中、完全にロックダウンされ、インド国内では州から別の州を訪問することができなかったが、モルディブ人は健康診断のためインドを訪れることが許された。(中略)モルディブはインド洋の島として非常に戦略的な位置にある。小さな国だが戦略的立地を最大限に利用することができる。インドとも中国とも関係を上手く管理しバランスを取り、特定の国に傾いている印象を与えないことで最大の利益を得ることができる

「インド洋は中国の故郷ではない。インドの故郷なのだ」

中国のモルディブ接近は軍事面で大きな脅威になっていると語るのはインドの西部海軍司令部の元司令官シンハ氏だ。中国軍はモルディブに対して無償で軍事援助を行う協定を結んでいるという。

シェカール・シンハ氏
「インドに近い島々は中国の監視下に置かれることになる。将来私たちが脅威にさらされないためにインド海軍は新しい基地(ミニコイ島)を設置した。(中略)モルディブが中国に自国の土地でも活動を許したとしよう。中国軍は監視レーダーや沿岸レーダーをモルディブの様々な場所に設置する。その監視範囲は、400キロ?、500キロ?、600キロかもしれない。(中略)訓練と称して空中からも監視されるかもしれない。地上7、8000メートルから1万メートルくらいを飛ぶ航空機からだ。より広いエリアが監視され、構造物をピンポイントで見ることができる。橋、道路、車両基地、鉄道基地…。そうなれば中国はインドの重要地域を正確に知ることになる」

インドはモルディブの近くにあるインド領のミニコイ島に新たに基地を設置。今後これを広げる計画もあり、警戒を強めている。

しかし中国はこの海域に海洋調査船のような船が頻繁に活動しているという。これをシンハ氏は潜水艦対策の調査船だと見ている。

シェカール・シンハ氏
「潮の流れや水中温度、音の伝わり方などを調査している船だ。この調査データを兵器システムにプログラムすれば敵の潜水艦を見つけるのに役立つ。(中略)中国はすでにパキスタンに進出している。スリランカにも、ジブチにも、ミャンマーにもいる。このようにインド半島はインド洋で中国の影響に包囲されつつある。インド洋は中国の故郷ではない。インドの故郷なのだ

親中派になるモルディブの気持ちをアメリカのシンクタンクでインドを中心に安全保障を研究しているハドソン研究所の長尾賢氏が解説してくれた。

米ハドソン研究所 長尾賢 研究員
「モルディブが生きていくためにはインドは必要です。ただサイズが全く違う『もの凄く巨大な隣人』。さらにインドはこの地域のリーダーを自認しているので、あーだこーだうるさい。強力な後ろ盾がいすぎると違う選択肢も欲しいという気分になる。そこに中国は入り込んだ。つまり選択肢が一つというのは自分で何かを決めている感じがしない」

モルディブの心理的隙間を上手くついた中国の手口。スリランカと同じ轍を踏まないことを祈るばかりだ。

(BS-TBS『報道1930』4月2日放送より)

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