出口なき低迷 中国経済どこまで落ちる?【Bizスクエア】

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2024-04-04 06:30
出口なき低迷 中国経済どこまで落ちる?【Bizスクエア】

ゼロコロナ政策の終了から1年3か月、いまだ中国経済は出口なき低迷を続けている。
中国経済は一体どこまで落ちるのか。長期化する不動産不況や、高止まりする失業率の今後を考えていく。

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経済出口なき低迷 節約に走る消費者

数年前まで、ハイブランド目当ての客が連日殺到していたという。北京市郊外のショッピングモール。動画の配信者は「2024年は厳しい1年になりそうだ。このショッピングモール前はとてもにぎやかだった。今はご覧の通り、人が去ってテナントが去り、とうとう空っぽになってしまった」と語る。

日系百貨店やブランドショップが立ち並ぶ上海中心部。メイン通りに面した商業ビルでも、テナントの空きが目立つ。

一方、人が集まっているのは日本の100円ショップのような店。「4点お買い上げ」「2点買えば2点無料」という店員に「スゴイ、スゴイ!」と声を上げる買い物客。

「オーリオ(オレオクッキー)は3.5元(72円)、梅ゼリー1元(21円)、ヨーグルト2.5元(52円)。想像できます?この価格!!」中国のSNSで紹介されているのは、賞味期限が迫る食品をお勤め価格で売る「臨機食品スーパー」。2杯目が1元(21円)になるドリンクショップは都市部で急拡大している。

節約志向が強まる中国。株価の下落で所得が15%減ったという30代の個人投資家に暮らしの変化を聞くと「ショッピングの大部分を通販に変えた。買い物に行くと交通費がかかるし、店の値づけの変動の影響も受けて、結果的に高い買い物をしていることに気づいた。通販ならそういうストレスもなく届けてくれる大事なポイント」という。

中国の消費者物価指数は春節効果があった直近の2月を除き、2023年10月から4か月連続のマイナス圏で消費の弱さが顕著になっている。

全人代の冒頭、成長目標を5%前後と発表した李強首相も…

全人代 李強首相:
目標達成は容易ではない。的確な政策を講じ各方面が心を1つにして2倍努力する必要がある。

消費が振るわない原因は、長引く不動産不況。中国の新築住宅販売は下落を続け、2023年はピークだった2021年から62%減少。不動産開発会社の相次ぐ経営危機で建設がストップ。社会不安が増大したためだ。

2024年1月、恒大集団は香港で会社の清算を命じられ、事実上の破綻に追い込まれた。最大手だった碧桂園も債務不履行を巡り、債権者から法的整理の申し立てを受けている。

経済出口なき低迷 進む「中国離れ」のウラには何が!?

2023年、外資企業の投資額は330億ドルで、2022年に比べ82%減少しており、
1993年以来30年ぶりの低水準。

外資が雪崩を打って資金を引き揚げる背景にあるのは反スパイ法だ。2023年7月に改正強化された反スパイ法は、どのような情報をどのように集めると違反になるのかが曖昧で、外資企業の投資を阻む一因となっている。3月23日には、反スパイ法の香港バージョンとも言える「国家安全条例」が法案提出から11日後にスピード可決。可決4日後に施行された。

外国からの投資を呼び込む一方で、それを阻むかのような矛盾を抱え、中国経済は、出口の見えない低迷が続く。

経済出口なき低迷 背景に高失業率。その原因とは?

――中国経済。より出口が見えなくなって深刻になってきている。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
先が見通せなくなった。10年前の中国経済というと供給過剰、今が需要不足。30年前の日本とよく似ていて、専門家から「中国の日本化」が指摘されている。

――直近の中国のGDP。2023年は25.2%の成長で一応5%以上の目標は達した。3月にあった全人代で李強首相は2024年も5%前後の成長を目指すと宣言したが、達成は可能か。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
可能というか、多分達成したと発表されるだろうが、中国のマクロ経済統計が信用できないとよく言われる。2023年に亡くなった李克強首相自身も、「信用できない」と言っていて「李克強指数」まで作られた。外国のマクロ経済統計を推計するアメリカのシンクタンク「ラジウムグループ」によると、中国の2023年の経済成長率は5.2%ではなく、高くて1.5%しかなかったと推計した。私の体感温度でどちらが近いかというと多分、1.5%の方が近いという感じはする。

――3月の全人代。サプライズや新しい政策は全然打ち出されなかった。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
本来は経済の状況が悪くなっているので、もっと大胆かつ速やかな政策を打たなくてはいけないが、ほとんど発表がなく、李強首相の記者会見も取りやめになった。なぜこれが重要かというと、マーケットと首相との対話。そのチャネルがないから、これから中国経済がパニックに陥りやすく、ハードランディングしやすくなるから、どちらかというとポリシーメーカーの間ではちょっと混乱してるような感じがする。

――外から見て不思議なのは、中国はゼロコロナが終われば、消費が回復して、V字型回復をみんな期待していたが、回復どころかずっとズルズル下に落ちている状況。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
日本もコロナ禍のときに不要不急の場合はあまり出かけないように呼びかけた。ただ日本は、ライフラインを止めなかった。店も営業していたが、中国はロックダウンをして、飲食店もスーパーも全部停止したから多くの中小零細企業は潰れてしまい、失業率が上がってきた。なぜかというと中小企業は最も雇用に貢献するセクター。それでコロナ禍が終わっても倒産した会社が再建されないから、失業率が上がっている。ただ、この統計。問題があって、21.3%の若者の失業率があった2023年6月まで発表されたが、その後発表されなくて2024年に入ってからまた発表されて、下がったように見えるが、統計の定義が変えられていて、大学卒業して仕事見つかっておらず本来は失業者としてカウントされるけれども、「実家に帰って親に養ってもらってるんだから、失業してない」というふうに定義が変わって含まれていない。

――非公表の間に定義を変えたと。そこに(中国の)苦しさがあらわれている?

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
統計の定義を変えたことによって下がったようには見えるが、実質的な失業者が、むしろ増えている。

――中国では、コロナ禍の時に、中小企業を支えるための給付金はなかったのか?

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
日本でコロナ禍倒産が少なかったといわれたが、中国はなぜコロナ禍倒産が多かったかというと、1つが、給付金が1人民元も払われていなし。2番目が、元々中小企業信用保証制度というのが整備されてない。この2つのいずれもなかった上に、ライフラインが止められて店が潰れた。それでたくさん中小企業が潰れ、数百万社。天文学的数字になるが、それによって今の失業率がどんどん上がった。

――失業率が若者を中心に高ければ、消費の意欲は起こらず消費者物価指数も、じりじり物価が下がってくような状況が続いている。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
岸田首相も「これから日本は物価が上がっていく」と言うが、消費が伸びるかどうか。中国も同じだが、今の中国の家庭が生活防衛に走っているために買い物していても、値段の安いものを買う典型的なデフレ現象が起きている。

――少し前まで中国人は競うように高いものを買って、見せびらかすような感じの消費行動をして旺盛な需要を生んでいたが、そんなに簡単に変わるものか。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
お金がないわけではない。今中国では貯蓄率がものすごく上がっている。お金はある。でも期待値が悪くなっている。人間は消費するかどうかは、期待値に係るエクスペクテーション(期待)。期待値のマインドが悪化したことによって、買い物控えて消費が落ち込んでそれでデフレに突入している。

――そこに輪をかけているのが、不動産不況。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
買いたいというニーズはあるが、若い人たちの失業率が高くお金がなく、マンションが売れなくなるが、売る人が大勢出てくる。なぜかというと富裕層が今、欧米諸国、特に北米ヨーロッパあるいはオーストラリアなどへ移住している。海外脱出するにあたって、自分が買って保有しているマンションを売るので、ただでさえ供給過剰のマンション市場がますます需給バランスが崩れてしまう。良くなる気配が全くない。不動産バブルは崩壊したといっていいと思う。

(BS-TBS『Bizスクエア』 3月30日放送より)

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