「考えるかもしれない、かぞくってなんだろうって」性的マイノリティの家族写真展『シルエットファミリー展』

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2024-04-10 15:10
「考えるかもしれない、かぞくってなんだろうって」性的マイノリティの家族写真展『シルエットファミリー展』

3月29日から4月7日まで、足立区役所アトリウムでの性的マイノリティのカップルとその子どもの家族写真が展示される「シルエットファミリー展」が開催されました。

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写真を通じて、LGBTQファミリーの姿を可視化

展示を企画したのは「一般社団法人こどまっぷ」。こどまっぷがどんな団体なのか、そして「シルエットファミリー展」を企画したねらいを代表理事の長村さと子さんに聞きました。

「一般社団法人こどまっぷ」代表理事の長村さと子さん
「LGBTQの当事者の人たちが子どもを育てたい、産み育てたいと思ったときにサポートできるような、そんな体制を整えている団体です。LGBTQの人たちというのは、まず子どもを持つということ自体が想定されていませんので、いろんな困難が待ち受けています。本当にいろんな制約があって顔を出せない人たちの思いっていうのが伝わればいいなと思って、LGBTQファミリーの姿を可視化するために、今回の展示になっています」

日本でも、ゲイ、レズビアンなど性的マイノリティのカップルが第三者からの精子提供、卵子提供や、里親制度などを活用して子育てをするケースは年々増えています。足立区でも2021年から「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を設けて同姓カップルが「結婚」に相当し、その子供なども「家族」に相当すると認めています。しかし、日本の法律では同性婚が認められていないことからそういった家族関係を公にできずにいる性的マイノリティはまだ多くいます。

顔を“隠す”だけではない、願いを込められた刺繍表現

「シルエットファミリー展」に展示された写真は、10組のLGBTQファミリーが桜の木の下や商店街などで撮影されていて、顔を隠す上で、カラフルな糸で「刺繍」が施されています。今回、どのような想いから「刺繍」という表現に辿り着いたのか。撮影と刺繍の制作を担当した京都在住のアーティスト澄 毅(すみ たけし)さんに聞きました。

アーティストの澄 毅さん
「モザイクをかければ、確かにその人の個人情報は消えて、顔は見えなくなってくるんですけど、やはりすごくネガティブになってしまうんですね。それを回避したいという思いから制作を始めました。この家族にはこういう色がいいだろう、こういう形がいいだろうっていうふうな形を見出しながら作っていった感じですね。刺繍という手法を選んだのは、糸をほどけるからなんですね。いつか糸をほどいてその顔を見せられるときが来ることを願っています」

家族の顔はモザイクではなく刺繍糸で顔を隠されています。どのような形で顔を隠したいのかは家族によって異なり、お子さんだけ顔が隠れていたり親も隠れていたりと、刺繍の表現はその家族次第。それぞれの家族と会話を重ね、どのような色の糸、どのような形、柄がこのファミリーに似合うのか、試行錯誤しながら制作を進めたと澄さん。

展示されている写真をじっくり覗き込むと、試行を重ねられた“糸の通り道”が残っていました。この赤ちゃんは空を眺めているから希望感をより感じるようにと、「彗星」の柄を描いたそうです。

また、撮影当時、生後1か月の赤ちゃんを間に抱き抱えている戸籍上 女性同士の長村さんカップルや、肩を寄せ合う7人家族の写真など家族構成は様々です。中でも、17歳のお子さんを囲む家族写真について、長村さんは特別な想いを語りました。

「一般社団法人こどまっぷ」代表理事の長村さと子さん
「あの方は私個人が21歳ぐらいのときに、あの人のブログを読んで、当事者の方でも精子バンクを使って子どもを持つことができるんだっていうことに気づいて、私はそのとき、自分の性自認がレズビアンなんだなっていうことを知ったときだったので子どもをレズビアンでも持てるんだなっていう希望になった方の展示です。そんな人の子が、もう17歳になるっていうのはすごい私自身ももう感傷深いというか、今回こういう形で展示できてすごい嬉しかったです」

そして長村さんは、知人の男性からの精子提供を受け、2021年にお子さんを出産しました。それぞれの写真の隣には親から子へ宛てられた「手紙」が添えられていて、長村さと子さんのパートナー、茂田(もだ)まみこさんからお子さんに宛てた手紙でこのような言葉がありました。

「ある日君は気付くかもしれない
私と君に血のつながりがないことを
そして考えるかもしれない かぞくってなんだろうって」

「シルエットファミリー展」に訪れた人の感想です。

来場者の60代女性
「こうやって文章で写真もそうだし、文章で見ると、思いが伝わってきてなんか泣きそうになるね。1人1人の人間として家族をね、当たり前に持つってことが、世の中で反映されないといけないなって」

来場者の70代男性
「ポジティブなメッセージとポジティブな写真を拝見させていただいたんですけど、 やっぱりその中でも一抹の不安みたいなものは言葉の端々にも感じられて、どれを見てもうるっときてしまうなっていう、そんな状況です」

全体を通して、念願の新たな命を迎えられたことを喜ぶ心温まる手紙ばかりでしたが、親としての心配や不安が滲む言葉もあり、胸が締め付けられました。

子どもを産み育てたいと思った人達が選択できる社会へ

長村さんは子どもを産み育てたいと願うLGBTQの方々の想いや現状、そしてこれからの願いをこのように話しました。

「一般社団法人こどまっぷ」代表理事の長村さと子さん
「法的に認められてないというところでも心理的な負担もあって、周りにカミングアウトするとか、親にまず、そもそも私達は子供を育てたいということを話すとか、周りの人に理解してもらうっていうことも、二重のカミングアウトがあるというような、そんな状況ですね。 時代は変わっていくと信じてますし、やっぱり追いついてないのは、法律・政治の部分だなって感じてます。私は何よりも生まれてきた子どもたちが後ろめたさを持たないで、子どもを産み育てたいと思った人達が後ろめたさを持たないで、選択できる社会になってほしいと思ってます」

子どもを持つも持たないも、どのような立場であっても自由に選択できる社会の実現を心から願う時間でした。

(TBSラジオ「人権TODAY」担当・久保絵理紗 (TBSラジオキャスター))

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