裏金問題で逆風が吹く中、国賓待遇でアメリカを訪れている岸田総理は、バイデン大統領との首脳会談に臨みました。防衛・安全保障での連携強化のほか、共同会見では、岸田総理が意欲を示す北朝鮮の金正恩総書記との“直接対話”に意欲を見せていることについて、バイデン大統領は「歓迎する」と述べましたが、その背景に「もしトラ」への懸念が…23ジャーナリスト・宮本記者の解説です。
【写真を見る】日朝の直接対話 バイデン大統領が「歓迎」の背景に「もしトラ」への懸念? 日米首脳会談【news23】
日米首脳会談 岸田総理 晩さん会で“ジョーク”も
日本時間11日午前に開かれた、バイデン大統領夫妻が主催する公式晩餐会。200人あまりのゲストが招かれ、音楽ユニットYOASOBIの2人や、クリントン元大統領夫妻、俳優のロバート・デ・ニーロさんなど、多くの著名人の姿がありました。
その席で岸田総理は、ジョークを交えたスピーチで会場を沸かせました。
岸田首相
「私の妻・祐子も(ゲストの多さに)息をのんで『誰が主賓かわからない』と私に言いました。なので大統領の隣の席に案内されてホッとしました」
これに先立ち行われた首脳会談。主要な議題となったのは、防衛・安全保障です。
バイデン大統領
「日米同盟が発足して以来、最も重要なアップグレードだ」
会談では、自衛隊が一元的に部隊を運用する「統合作戦司令部」を創設することに伴い、在日アメリカ軍との連携を強化するほか、防衛装備品などに関して、日米の実務者で話し合う協議体を設置することを決めました。将来的なミサイルの共同開発も模索するとしています。さらに、バイデン大統領からは、こんな発言も…
バイデン大統領
「同盟国(日本)が北朝鮮との対話を開始する機会を歓迎する」
岸田総理が北朝鮮の金正恩総書記との直接の対話に意欲をみせていることについて、支持する姿勢を示しました。
バイデン大統領 “日朝首脳会談支持” 懸念は「もしトラ」
小川彩佳キャスター:
バイデン大統領は日朝首脳会談の実現に理解を示しました。唐突に話が出てきたようにも見えます。
23ジャーナリスト 宮本晴代:
今年は11月にアメリカ大統領選挙があります。実はこれが鍵となるのですが、『もしトラ』も絡んできます。岸田総理は以前から北朝鮮と対話をしたいという意欲を示していましたが、背景にあるのは国内の支持率の低さです。北朝鮮と会談をし、何か成果を上げることができれば支持率は上がるわけですが、そのためには周辺国、特にアメリカへの根回しは欠かせません。
今のバイデン大統領は中東、ウクライナと、北朝鮮以外のことでとても忙しい。そのため日本のやりたい外交に特に口出しはしない姿勢ですが、もしトランプさんが大統領になると、北朝鮮はある意味“因縁の相手”ですので、「北朝鮮との交渉は俺に任せておけ」と横槍を入れてくる可能性もゼロではない。出方が読めないのです。
そのため、今のうちにバイデン政権にある意味、仁義を切り、やれることをやっておきたいという意図があるのです。
小川キャスター:
「もしトラ」に備えたということなのですね。
ジャーナリスト浜田敬子さん:
もちろん北朝鮮問題も非常に気になりましたが、なぜ国賓待遇だったのか。それほどの対応を受けたのは、日米間での大きな安全保障政策の転換があったと見ています。
驚いたのは、武器の共同開発に踏み込んだり、米軍と自衛隊の組織統制を一元化して連携を強化していくというような話が唐突に出てきたことです。
今、岸田政権は裏金問題の解明もできず、支持が低迷しています。国民の信がない政権でそのような大きな転換をしてよいのでしょうか。
宮本記者:
岸田総理は日本時間12日未明にアメリカ議会で演説を行いました。重要なテーマは「日米のパートナーシップ」=「一緒にやりますよ」ということです。
念頭にあるのは、ますます力をつけている中国です。中国にどう対抗するか、日本とアメリカが手を組んでやっていきましょうというメッセージが込められているのですが、先ほどの防衛力強化も合わせて、いつの間にかそういう方向に進んでいるということを私達は押さえておきたいですね。
浜田さん:
「それ知らされていましたっけ?」という感じですよね。全く議論がない。国民不在の中で進んでいるようです。
小川キャスター:
晩さん会でのスピーチはとても盛況だったようですが、国民に対しても同じ熱量で語りかけていただきたいですね。