性的に興奮して「鼻血ブー」…これ、ホント? その“元祖”は1970年代のギャグ漫画にあった

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-04-20 07:00
性的に興奮して「鼻血ブー」…これ、ホント? その“元祖”は1970年代のギャグ漫画にあった

「性的に興奮すると鼻血が出る」ということを一度は耳にしたことがあるのでは?実際に鼻血が出るのか出ないのか?またどうしてそのようなイメージがついているのかを取材した。

【実際の漫画を見る】谷岡ヤスジの“鼻血ブー”が表紙を飾った当時の週刊少年マガジン

耳鼻科医も知らない“鼻血のイメージ”が広まった理由

みなさんはよく鼻血が出ますか?

私は数か月に一回ぐらいの頻度で鼻血が出る。その姿を妻に見られると「変なこと考えてたでしょ?」とツッコミが入る。「仕事のメールを確認してただけ」と訴えても、なかなかその疑念は晴れないようで…。

真偽を確かめるため、耳鼻科の医師に話を聞いた。

──性的に興奮すると…鼻血って出るものなのでしょうか?

山本耳鼻咽喉科 山本一博 医師
性的に興奮して鼻血が出るというのはほとんどないです。

──「ほとんど」ですか…?つまり、可能性はあるということ?

耳鼻科としての根拠はないですし、これまでに私が担当した(東京の町田市医師会の)ウェブサイトでも「ない」と言っていたのですが、いろいろ見聞きしていると、可能性はゼロではないのかなと…。

ですが、実際にそれで鼻血が出てしまうと、繫華街だとかレンタルビデオ店のそういったコーナーだとかは大変なことになってしまいますよね。性的に興奮すると鼻血は出やすくなるかもしれないけれど、それが理由で鼻血が出るということはまずないだろうと思います。

そもそも鼻は血が出やすいものです。「キーゼルバッハ」という血管が多い器官が鼻にあり、鼻血の90%以上はそこから出ていると言われています。鼻の前方の辺りにキーゼルバッハがあることで、指で触わるといった刺激が加わりやすくなっています。

──ではなぜ「性的なことを考えると鼻血が出る」と言われるようになったのでしょうか?

理由は分かりませんが、私もそういったイメージはありますね。特にアニメや漫画で多い表現という印象ですが…。

きっかけは昭和のギャグ漫画家「谷岡ヤスジ」

「性的なことを考えると鼻血が出る」というのは、現実ではほとんどないようだ。しかし、なぜそのような印象が、年齢も生まれた地域も違う私と妻、そして山本医師にもあるのだろうか。

キーワードになりそうなのは「漫画」だ。そこで、漫画に詳しい京都精華大学マンガ学部の田中圭一教授に話を聞いた。

京都精華大学マンガ学部 田中圭一 教授
「性的に興奮すると鼻血が出る」というのは、1970年代のギャグ漫画家・谷岡ヤスジ先生(故人)が週刊少年マガジン(講談社)で連載していた「ヤスジのメッタメタガキ道講座」が元祖だと思います。

谷岡ヤスジ先生の作風は、一言で言うと無意味で過激。破天荒な作風のギャグ漫画家です。ただその頃は「性的に興奮したから鼻血が出る」というわけではなく「怒りなど感情がたかぶった時に鼻血ブー」という描写だったはずです。

──なぜ同じ感情のたかぶりでも「性的に興奮」という部分に特化していったのでしょうか?

1980年ごろに少年誌でラブコメディ(青春恋愛ものに笑いの要素が合わさったもの)漫画が増え、いわゆる「ラブコメブーム」が訪れます。真剣な恋愛を描いてもいたのですが、女性のセクシーな姿を見た主人公が鼻血を出すという描写が多くみられました。当時の漫画家はもちろん谷岡ヤスジ先生を知っていたはずですから、影響を受けたのでしょう。

──なぜここまで漫画の表現として定着したのですか?

一つの感情を表す漫画にとって便利な記号になったということですね。

例えば、漫画などで笑ったときに目を「(^^)」とか「へ」のような形で表現するのは、実際に笑った人間の目をデフォルメしていますね。一方で、お金に目がない人を表すときに目が$マークになったり、好きなものを見るときに目がハートマークになったりするのは、実際の人の目とは違いますよね。

「漫画ではこれを覚えておきましょう基本のルール」として、「性的に興奮していると、キャラクターは鼻血を出す」となったわけです。今では一周回って「この時代にその表現をするか」という、あえて古典的なものとして使う漫画も出てきました。いずれにせよ、その強烈な印象が、50年経った今でも漫画作品のみならず、私たちに残っているのでしょう。

全くないとは言い切れない? バイアグラの副作用に「鼻出血」

昭和の一人のギャグ漫画家に端を発し、漫画の世界で記号化した「性的興奮」と「鼻血」。しかし「全くのフィクションとも言えないかもしれない…」と山本医師は言葉を濁す。

山本耳鼻咽喉科 山本一博 医師
耳鼻科としての根拠はないのですが、性的に興奮すると顔の辺りが紅潮したり、血の量が増えたりすると言われていますよね。鼻の中の脆弱な血管から、血が出やすくなる可能性もあるかもと…。

あとはバイアグラという勃起不全の薬がありますよね。あれも副作用のところに「鼻出血」という項目があるんです。おそらく血管を拡張させるわけだから…と一応書いてあるんです。

──それでは、やっぱり鼻血がよく出る人はエッチなことを考えがち…ということでしょうか?
それはただ鼻の血管の多い部分にでっぱりがある、鼻血が出やすい鼻の形をしている人というだけです。鼻血で耳鼻科にかかる人も、花粉症や鼻炎がきっかけの人が大半で「性的に興奮して…」という人は見たことがありません。もしかしたら理由を秘密にしているだけかもしれませんが…

つまり「性的に興奮すると鼻血が出る」可能性があるだけで、鼻血が出たからといって必ず「性的に興奮している」わけではないということです。

──安心しました…ありがとうございます。

「これで妻に疑われずにすむ」と胸をなで下ろした。もしまた鼻血が出て妻に疑われたときは、昭和の一人のギャグ漫画家が、令和を生きる私たちにも影響を与える表現を生み出したのだと伝えたい。

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