“憧れ”の田中希実に競り勝った16歳・久保凛、素顔は「天真爛漫な明るい子」パリ五輪も「狙っていきたい」

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2024-04-29 06:00
“憧れ”の田中希実に競り勝った16歳・久保凛、素顔は「天真爛漫な明るい子」パリ五輪も「狙っていきたい」

4月13日、この日は久保凛(16、東大阪大敬愛高2年)にとって、競技人生のターニングポイントになったに違いない。熊本で行われた第32回金栗記念選抜陸上中長距離大会2024(えがお健康スタジアム)の女子800mで、8個の日本記録を持つ中長距離のエース、田中希実(24、New Balance)に競り勝ったのだ(記録は2分5秒35)。世界陸上、オリンピックをはじめ世界の大舞台で戦う“憧れ”に勝利したレース後、久保が単独インタビューに応じ、田中の存在や今後の目標について語った。

Q.レース振り返って
久保:
今回のレースは初めて憧れの選手やシニアの選手と走れる機会。その中で初めてだからこそチャレンジをして、最初から積極的なレースをする事が出来て、ラストスパートをかける事が出来て、優勝するという結果で終わる事ができて良かったです。

Q.最初から仕掛けていく事は考えていた?
久保:
はい。いつもの自分のスピードで、先頭で走りたいと思っていたので、その部分は積極的に走れたかなと思います。

Q.召集所では隣にいる田中選手をチラッと見ていましたね。
久保:
今日は憧れというのを無くして走ろうと思っていたんですけど、少し気になってしまう部分がありました。試合前の雰囲気とか、どういう感じかを見て、やっぱり憧れの選手なので、そういう部分は気になりました。

Q.何か勉強になった部分は?
久保:
試合への集中力を高めている部分が、見ていて感じた部分でもあったので、その部分はすごく自分も良い経験をする事ができたと思っています。自分の世界に入るというか、そういう感じですごく集中されていました。

Q.練習中から田中選手を意識して、勝ちたいと思っていた?
久保:
今回の試合でもしかしたら、一緒の組になるかもしれないというワクワク感があって、その中でも勝負なので、しっかり勝ちにこだわって、チャレンジしたレースにしようと考えていました。

久保は大会前日、指導を受けている野口雅嗣監督にあるメールを送っていた。

久保:初めてのこういう舞台だからこそ、楽しむ事を忘れずに、その中でも勝つという部分で積極的なレースをする。最後まで諦めずに全力を出し切るという事を話しました。

野口監督:1日練習の振り返りということで、就寝前に「今日の振り返り」をメールで送っているというのが、毎日のやりとりというか。彼女が思っていた練習のその日の内容とか良いところ、それから改善しなければならないところをやり取りしています。彼女は入学して1年経つんですけど、ネガティブなことって書かないんです。ポジティブに「今日はこうだったから、いいところを次はこうしたい」って。今回のレースでも「楽しみたい。憧れの田中希実さんと走る、でも楽しんでレースをしたい」というコメントが入っていました。

Q.普段はどんな性格?
野口監督:
普段は天真爛漫な明るい子です。だから、人間力も高い。いつも練習の時に声を出して体操しますけど、一番大きな声が聞こえます。凜の声が聞こえます。そして、いつも最後にフォーム走というのをするんですけど、かなり遠いところに僕がいて、必ず僕を見つけないとスタートできないということを言っているんですね。「野口先生行きます!」と一番大きな、グラウンドに響き渡るような声で言えるような子です。他の(選手の)声とボリュームが違います。

Q.声を出す体の力も強い?
野口監督:
強いのかもしれないです、体幹も。中学の時はまだ体幹が弱かったんですけど、やっぱり体の軸を、体幹を鍛えてあげて段々ブレなくなってきましたし。そういう声も元々出せる子だったんですけど、普段の(話す)ボリュームが高くなってきて、というような感じです(笑)。それを見て、周りの子たちも「ああいう風にしたいね、なりたいね」っていう風にみんな思っていると思うんです。今年の1年は久保に憧れてみんな入ってきてくれました。何か彼女の持っている明るさと前向きな姿勢を見て、みんなそれを真似してどんどんどんどん良くなっていくような気がします。

Q.今後の久保選手の可能性は?
野口監督:記録を設定というのはあまりしたことはないんですけれども、高校記録(2分02秒57)、そして2分00秒という2分の壁を破って、またそれ以上のレベルにもいってもらいたいと思っています。彼女の中で限界を作ってほしくないので、自分の感覚で今日よりも明日、1年前よりも今年、(それ)がまた来年(も)っていう。自分のタイム設定じゃなくて、自分の走りの感覚を研ぎ澄ましていってもらいたいということで。タイムを決めちゃうと、どうしてもそのタイムを越えなくてはならんとか、今日が良い悪いっていうのははっきりするので、あまりタイム設定をせずに自分の感覚で走ってもらうということを日頃やっています。
スピードとそれから持久力を兼ね備えたスピード、持久力が他の選手よりもあるのかなと感じています。今後100mでいうと、多分12秒台後半で、400mは53秒台では走れる力はあると思います。長距離のようなペース走であったり、また短距離のような短い距離でということを、今まであまり長距離選手がやっていないような練習を組み合わせてやっています。彼女はスピードを生かしていきたいというふうに思っているので、長い距離だけをずっと走ってラストスパートとかという練習ではなくて、短距離の練習の要素も入れていくようなことで、両方いいとこを取って練習の内容というのは組み立てています。

久保が掲げる「座右の銘」

久保:「楽しむ」事と「今出せる全力を出す」そういう部分は大切にしているところです。記録だけでなく、自分が伸びやかに走るという部分で、記録だけにこだわらない。記録はあまり気にしていないです。

Q.周りからも注目される事については?
久保:
今日という日を境にそういう立場になってきたのは感じるんですけど、それで終わるのではなくて、他にもっと頑張らないといけない部分や課題点があるので、そういう部分はこれから頑張っていこうと思います。今年はワールドランキングに入る事も大切で、パリ五輪を狙っていきたいと考えています。今回の大会ですごく自信になったので、日本選手権に向けて、練習にしっかり取り組んで優勝という部分を目指して頑張りたいと思います。

■久保凛
2008年1月20日生まれ、和歌山・串本町出身。潮岬中~東大阪敬愛高。小学6年生までは、サッカークラブに所属し、中学から本格的に陸上競技を開始。3年時には、全日本中学陸上競技選手権大会の女子800mで優勝。昨年8月のインターハイでも1年生ながら女子800mでNo.1に。自己ベストは今年3月にマークした2分05秒13。5月3日に行われる静岡国際陸上にエントリーしている。サッカー日本代表の久保建英はいとこ。

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