神戸市の街中で10メートルほどの高さまで水が噴き出しました。部品の劣化が原因とみられています。毎日使う「水」を運ぶ水道管。実は、老朽化による破裂事故は年間で2万件以上発生しています。こうした中、注目されているのは宇宙から水道管の老朽化を見抜くシステムです。
【写真で見る】トラウデン直美さんが取材 老朽化する水道管の水漏れを見抜くシステムとは
水道管の“地球4周分”は漏水リスク大…AI分析で調査すべき場所を判定
5月上旬、神奈川県小田原市では地中の水道管が破損。2023年、静岡県浜松市では高く噴き上がる水柱が…。
老朽化による水道管破裂は、日本全国で年間2万件以上起きています。
相次ぐ漏水事故を、どう減らしていくのか。全国の自治体から注目を集めている都内のベンチャー企業「天地人」、どんな会社かというと…
天地人 白坂滋行さん
「人工衛星を使って自治体とかの社会課題の解決をいろいろやっている会社です」
地球の周りには人工衛星が多数飛んでいて、気象など様々な地球のデータをとっています。そのデータを活用することで、たとえば地表面の温度を見ることができます。
天地人 白坂滋行さん
「この温度が35度を超えてくると、漏水している水道管が増えてきて、50度を超えると半分ぐらい水道管が漏水しましたというデータもとれています」
従来の水道管の水漏れ検査は、地面の下の水漏れの音を聞いてチェックしていきますが、水道管は途方もない長さです。
トラウデン直美さん
「日本全国の水道管の全長は地球を18.5周分、約74万キロになります。このうち約2割の4周分は、漏水や破損するリスクが高まるとされている40年を超えているのです」
天地人は人工衛星のデータを使って、水道管の水漏れしそうなところを見抜くシステムを2023年春に開発しました。その名も「宇宙水道局」。
地図上の網目のような青い線は、自治体から提供された、地中に埋まっている水道管の位置。そこに人工衛星から得た地表面の温度や、地盤のデータを加えます。そして、AIで解析すると…
天地人 白坂滋行さん
「AIの方が、そろそろこのへん漏水してくる可能性が高いといった判定をしてくれる」
リスクを5段階で評価して、「赤」が漏水のリスクが最も高いところとなります。
天地人 白坂滋行さん
「赤いところが、ここ2年ぐらいで漏水する確率が一番高い。赤が集中しているこのあたりで、漏水調査、調べてみてはどうですかという形でお使いいただいている」
トラウデン直美さん
「(地中の)水道管は見えないですよね?どういうことなんだろうと思ってしまうんですけれども…」
天地人 白坂滋行さん
「地面の微妙な変化情報をとらえている。過去の漏水の実績や管の種類、いつ水道管を敷設したのか。そういった情報を総合的に判断させることで、より確度の高い分析ができる」
実際に「宇宙水道局」のシステムを導入した、群馬県前橋市の水道局では…
前橋市 関真樹さん
「システムを導入することによって、費用負担が6割~7割削減」
「宇宙水道局」に関する問い合わせは全国の約100の自治体にのぼり、すでに11の自治体の水道局に採用されています。
2046年までに96%の事業体が水道料金「値上げが必要」…地域格差も問題に
小川彩佳キャスター:
目視できない水道管を人工衛星とAIでチェックする「宇宙水道局」というシステム、どうでしたか。
トラウデン直美さん:
人手で直接チェックしていく従来のやり方だと、時間も人材もコストも莫大にかかります。
「宇宙水道局」ではAIに学習させて、AIが「リスクが高い」という部分を優先的に見ていくことで、コストが抑えられるということです。リスクの高いところを見て、少しずつ変えるということが効率よくできるようにはなるので、注目のシステムだと感じました。
藤森祥平キャスター:
日本で破損のリスクが高い水道管は地球4周分ということで大変です。
老朽化対策は水道料金に関わってくる問題でもあります。宮城県石巻市の800メートルの水道管の交換には、約1億3000万円かかるという試算が出ています。
石巻市と東松島市には老朽化した水道管は約600キロあるそうですが、交換には約1000億円かかるということです。原資は利用者の水道料金です。
ある研究結果では、2046年までに水道料金の値上げが必要とされる事業体は96%とされています。
特に値上げ率が高くなるのは、人口減少率が高い地域や人口密度が低い地域です。水道の使用量が減少していくためです。
水道料金の推計比較(月)によると、2021年と比較して2046年には、東京では26%、石川県輪島市では84%、能登町では153%上がる見込みです。金額にすると、能登町では5440円から1万3747円となってしまうかもしれません。
トラウデン直美さん:
人口が密集していない地域では、老朽化しても原資になるお金が足りないことで、チェックも遅くなるように思います。老朽化していてもギリギリで保っている地域は、たくさんあるのではないでしょうか。
「宇宙水道局」のようなシステムを導入するなど、それぞれの地域に合った形で、長い目で見てどういうシステムがいいのかを考えていかなくてはいけないと感じます。
そうでないと、大きな地震や災害の際に耐えられなくなってしまいますし、起こってからでは遅いということになりかねません。
小川キャスター:
地域による格差があってはならないのがインフラです。
水道料金の格差をなくす「広域化」と?車で水を運搬する方法も
藤森キャスター:
格差解消のために、周辺の自治体が統合する「広域化」の動きもあります。
2046年の水道料金は、石川県の能登町が月額1万3747円、金沢市は月額3558円と試算されています。
石川県が広域化した場合、月額4703円で抑えられるということです。能登町が9033円安くなるのに対し、金沢市は1145円高くなりますから、住民の理解が必要になってきます。
また、水道のコストダウンでは、老朽化した水道管を交換せず、水をタンク車で運ぶ「運搬送水」という方法もあるそうです。
浄水場から直接、水道管を通して各家庭に水を通すのではなく、タンク車で水を家の近くの大型のタンクなどに運び、大型タンクから水道管を利用して各家庭に運ぶというものです。水道施設からの長い水道管を維持する必要がなくなり、コストダウンに繋がるということです。
宮崎県宮崎市の天神・持田地区では、2005年に台風で浄水場が使えなくなってしまいました。浄水場を復旧するためには2億4000万円かかりますが、運搬送水にしたことで1500万円で済んだということです。
開始20年間で、従来の水道のランニングコストより、約1億9000万円もコストを削減することができたということです。
小川キャスター:
メンテナンスなどもありますから、地域に合った方法を考えていくことが必要ですね。
トラウデン直美さん:
地域で話し合って、ベストな形を選んでいくのが大事かなと思います。
小川キャスター:
原資を支払うのは私たち市民ですからね。