先生が足りない! 教員採用試験前倒しは解消に繋がる? 1クラス1人の担任制を廃止し「チーム担任制」を導入した小学校も【news23】

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2024-06-18 13:18

多くの自治体で教員採用試験が行われた6月15日~16日。実は今年は、例年より1か月ほど前倒しして行われました。その理由は?

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教育実習の現場を見て、一般企業への就職に考えを変える学生も

週末(6月15日~16日)に行われた、公立学校の教員採用試験。2023年度の受験者数は12万1132人と、減少の一途を辿っています。

なぜ、若者の教職員離れは止まらないのでしょうか。長崎県の教育委員会は、教育学部に通う学生との意見交換会を開催。“教員の働き方”について、どんなイメージを抱いているか尋ねると…

学生
「『残業が多いのかな』というのと、仕事を(家に)持って帰ってしていることが多いというのを聞いて大変だなと」
「自分自身の時間がなさそうというイメージがある」
「人生設計が立てづらいなと思って。女性だったら出産や結婚があると思うから」

長時間労働の一因となっている、部活動については…

学生
「部活は中学生にとって学校生活の一部だし、それに教員が積極的に関わっていくというのは当然のことかなと思うが、私生活にまで関わってくるところなので、そこは考えていかなきゃいけない」

さらに…

学生
「長時間労働で大変だから、一般(企業)を考えようかなとか、最近結構動き始めている友達がいたり」

教育実習の現場を見て、一般企業への就職に考えを変える学生もいるといいます。こうした不安を解消するためには、何ができるのでしょうか。

教員の精神疾患による休職は2022年度で6500人超 約2割は復職できず

小川彩佳キャスター:
切実な声ですよね。教育学部の学生からも教員になることをためらう声が上がっているという、この現状…。

藤森祥平キャスター:
もっと不安になってしまうかもしれませんが、実はこうしたデータがあります。

<教員の精神疾患による休職>(文科省)
●2020年度:5203人
●2021年度:5897人
●2022年度:6539人

教員になったとしても、うつ病などの精神疾患で休職する人は、2022年度で6500人を超えています。このうち約2割の1270人が、復職できずに早期退職してしまっているという現状があります。

さらに、休職や早期退職による人員不足というのは、年度末にかけて深刻化する傾向があるそうです。たとえば東京都の公立小学校では、2024年1月の3学期が始まる段階で、教員の欠員が160人にも及んでいるという状況です。

小川キャスター:
教員の働き方改革を進めなければという声はずっとありましたが、いよいよ深刻度がどんどん増していますね。

株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
本当に問題がたくさんあって、それこそ給特法の改正というのはずっといわれていましたが、実質的にそんなに変わっていないという声もあります。

そもそも日本のシステムは知育と徳育と体育という、外国だとバラバラにやるものを全部やらされ、さらに保護者対応などの雑務が乗っかってくる。そうなるとリスキリングする、自分で学ぶ時間もないみたいなことになり、本当に教員の首を絞めるシステムばかりになってしまっているわけですよね。しかも、そこに「子どものため」というやりがいが乗ってしまうから無理をしてしまう。

やはり教育は、どの人も通ってきているせいで、みんなが口を出せてしまいます。それゆえに“あるべき論”が先走ってしまって、どんどん現場に合わない、柔軟性のない制度や決まりみたいなものが現場で出てきているのかなと思います。

まずは、現場もそうですが、我々教育を取り囲む人たちが“べき論”を見直す必要があるのかなと思うので、とにかく現場にいる人たちが中心になってほしいです。

藤森キャスター:
何とかしなきゃいけないということは、みんなわかっているのですが、こうしたなか文部科学省が人材確保のために打ち出したのが、教員採用試験の前倒しです。

2023年度までは7月に1次試験(筆記)、8月に2次試験(面接)という日程が多かったのですが、2024年度からは1次試験を6月16日、そして2025年度からは1次試験を5月11日に、どんどん前倒しするよう、各都道府県の教育委員会に要請しているそうです。

民間企業の採用に先んじて人材確保をしようという狙いがあるのですが、先生を目指す学生の皆さんにとっては、このスケジュール変更でかなり影響が出そうですね。

株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
2024年度はやらない自治体もあるということで、どういう影響があるのかデータが取れるのはいいことだと思いますが、それ以上に現場が苦しくなってしまったり、というのがありますし、これは根本的な解決ではまったくないので、やはり現場を変えたいですよね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
これはいかにも一時しのぎということで、文部科学省という役所は、実はあまり教育現場のことをよく知らないんですよね。教育免許を持っていない人もいっぱいいますし。

やはり現場をよく知っているのは都道府県の教育委員会ですので、その自主性に任せればいいのですが、こういう通達や通知ばかり出しているものですから、現場は混乱しますよね。

基本的には先生の働き方、長時間労働や雑用などをどうやって解決していくか、そういう問題に取り組むべきだと思います。

小川キャスター:
苦肉の策という感じもしますし、こうして国が有効な手を打てていない間にも、教員たちは続々と現場を離れてさらに深刻さを増しているわけですが、鹿児島県ではこの負担を軽減するため、新たな取り組みを始めた小学校があります。

児童は「楽しい」、教員は「手探り状態」…チーム担任制のメリットとは

鹿児島県志布志市の伊﨑田小学校。児童数は65人で、各学年1クラスです。小学校では1つの学級を1人の先生が担当し、朝の会から授業、給食と、1日中一緒に過ごすのが一般的ですが、伊﨑田小学校ではどの時間も、異なる先生が担当しています。

児童
Q.担任の先生は?
「内園先生と、山下先生と、大楽先生と、西村先生」

伊﨑田小学校では2024年度から学級担任制を廃止し、複数のクラスを複数の先生で受け持つ「チーム担任制」を導入しました。その背景について、校長は…

大山昭二 校長
「小学校の教員は1人で授業をする、1人で保護者対応をする、全ての責任を負ってやるというのが基本になりますので、最終的に1人にしてしまっているのではという校長としての反省」

チーム担任制によって空き時間が生まれ、これまで放課後に行っていたテストの添削や準備などを、効率的に行えるようになったといいます。

また、精神的な負担も軽くなり、休みを取りやすくなるというメリットも。

子どもたちは…

児童
「相談しやすくなった」
「いろんな先生が褒めてくれるので嬉しいし楽しい」

Q.授業楽しい?
「はい!」
「いろんな先生と勉強できるのが楽しい」

複数人で児童を見るチーム担任制では、先生同士の情報共有が重要な課題に。

伊﨑田小学校では週に一度、子どもたちの様子や時間割などを話し合い、これまで学級担任1人に任せられていた指導方針の決定を、チーム全体で進めているといいます。

教職1年目 瀬戸山泉生 先生
「(課題が)終わってやることがない子が、フラフラと立って歩いてしまうときがたまにあるんですけど、そういう時はどういう指示をすれば…」

教職15年以上 田代皓亮 先生
「逆に分からない子たちのところに行って教えてもらう、サポートするみたいな」

教職30年以上 小田ひとみ 先生
「『終わったら立って何回音読ね』とか、そういうのをさせて、動きを入れてあげる」

行事や保護者対応の分担をどのように進めるかなど、想定される問題を書き出し、対策を考える場でもあります。

教職15年以上 田代皓亮 先生
「何もモデルがないから『どうします?』みたいなところから。まだ手探り状態なので、いい方法を自分たちで見出していけたら」

先生の負担軽減策は? 公金納付システムの利用や地元大学との連携も一手

小川キャスター:
新しい取り組みですが、これこそ先ほど伊沢のおっしゃっていた「教師はこうあるべき」という“べき論”から、先生たちを解放できるような気もしますよね。

株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
やはり世の中の流れとして、良い学びや良いやり方はネットにあふれていたりします。先生は教えるティーチャーから教えに導くナビゲーター、良い学びにアクセスを繋ぐ存在になっていくべきかなと思っているので、そういうところに繋がってくる取り組みかなと思います。

僕も学校に毎月行って、生徒たちと喋るみたいなことをやっているのですが、先生方は笑い声を聞いたら「あ、誰々だな」「誰がふざけてるな」というのがわかるぐらいに、生徒への解像度が高いわけですよね。だから共有と一言でいっても、共有すべき内容がすごく多い。

もしくは、そこまでの解像度を求めないということも我々には必要かもしれませんが、その共有がちゃんと上手くいくことだったり、チームビルディングが上手くいかなかったり、先生の人気の差が出てしまったりすると、また新たな障害が生まれてきます。そういった課題を解決できるような環境を周りが整えていくこと、柔軟に求めていくことがすごく大事かなと思いますね。

小川キャスター:
体制のサポート態勢ということにもなりますが、いろんな工夫がまだまだできそうですよね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
多くの先生は、使命感を持って働いているわけです。たとえば自治体に公金収納システムというのがありますが、先生が給食費を集めたりするのは、すごい雑用ですよね。そこは公金納付システムを使って、自治体がサポートできるわけですね。

それから、たとえば部活動は先生にとっても負担ですが、地元の大学生に助けてもらったり、補助してもらったりも十分ありうるわけです。そういう工夫をどんどんやっていく必要があるのと、やはり全体として国の助成というか、教育に対する支出をもっと増やしていくことが大事だと思いますね。

藤森キャスター:
現場レベルでは先生や学校がいろんな新しい取り組みをしていると思うので、保護者も皆さんも温かい目で、寛容な気持ちで見守りたいですよね。まずは、どんどんチャレンジしてほしいなと思います。

教員不足について「みんなの声」は

NEWS DIGアプリでは『教員不足』について「みんなの声」を募集しました。

Q.教員の働き方改革 何が最も必要?
「労働時間の把握と管理」…21.4%
「『チーム担任制』など業務軽減」…21.2%
「部活など授業以外の業務軽減」…30.3%
「教員以外の人員採用」…23.6%
「その他・わからない」…3.4%

※6月17日午後11時22分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは18日午前8時で終了しました

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<プロフィール>
伊沢拓司さん
株式会社QuizKnock CEO
東京大学経済学部卒
クイズプレーヤーとして活躍中

星浩 さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年

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