全世界に大きな衝撃を与えたトランプ前大統領の暗殺未遂事件。アメリカメディアによると、射殺された容疑者が使用していたのは、父親が合法的に購入したライフル「AR15」だといいます。私たちは2022年に、AR15ライフルの人体へのダメージを調査するミシガン州の研究機関を取材し、その殺傷能力の高さを聞きました。
【写真で解説】「殺傷能力は拳銃の約5倍」実証実験で見る「AR15」の威力
警察官がはしごを降りた隙にトランプ氏に向けて発砲 容疑者は射撃クラブの会員
テレビ中継もされていた選挙集会中に起きた、トランプ前大統領の暗殺未遂事件。この事件でトランプ氏は右耳をけが。ほかに男性3人が撃たれ、うち1人が死亡、2人は重傷です。
事件当時、現場で射殺されたトーマス・クルックス容疑者(20)は、トランプ氏が演説をしていた場所からおよそ135メートル離れた建物の屋上にいたとみられています。
選挙集会に参加していた人
「シークレットサービスが突然フェンスを乗り越えて建物に駆け上がるのが見えたんだ」
AP通信によりますと、クルックス容疑者は駆け付けた警察官にライフルを向け、警察官がはしごを降りた隙にトランプ氏に向けて発砲。また、アメリカメディアによりますと、使用されたのは殺傷能力が高いライフル「AR15」で、容疑者の父親が合法的に購入したものだということです。
専門家は「軍事用の武器」と指摘 使用された「AR15」の殺傷能力は
今回犯行に使用されたライフル「AR15」は過去にも銃乱射事件で使われ、その危険性からたびたび問題視されてきました。州によっては18歳から購入が可能とされています。
2022年5月、 テキサス州の小学校で18歳の容疑者によって児童ら21人が殺害された銃乱射事件でも、犯行に使われたのはライフル「AR15」。病院で 子どもたちの対応にあたった医師はライフルの威力についてこう証言しました。
ロイ・ゲレーロ医師
「子どもたちの身体は銃弾によって破壊され、頭部は吹き飛び、肉体は引き裂かれていました。かろうじて残っていたキャラクターのTシャツでしか身元確認ができませんでした」
この事件の1週間前にも、ニューヨーク州のスーパーマーケットで銃乱射事件が発生、10人が死亡。同じく、容疑者は18歳で、この事件でも AR15が使われていました。
AR15の威力はどれだけのものなのか。銃撃を受けた人体のダメージなどについて研究を行っているミシガン州の研究施設を2022年に取材し、その殺傷能力の高さを聞きました。
ミシガン州ウェイン州立大学 シンシア・バー教授
「これは拳銃用の9ミリと AR15用の弾丸です」
ウェイン州立大学のシンシア・バー教授は銃撃を受けた人体の反応などについて研究を続けてきました。
特殊な発射装置を使い、 拳銃の銃弾とAR15ライフルの銃弾それぞれを人間の組織に見立てたゼラチンブロックに撃ち込み比較すると、AR15の威力が強いのは一目瞭然。
ミシガン州ウェイン州立大学 シンシア・バー教授
「9ミリの場合、おそらく臓器に損傷はありますが、迅速な医師の手当てを受ければ生存は可能です」
ミシガン州ウェイン州立大学 シンシア・バー教授
「こちらがAR15。衝撃が大きいです。こんなにも損傷が広がっています」
バー教授によると、 AR15はたった一撃でも拳銃のおよそ5倍の威力があり、子どもが銃撃された場合、生き残る可能性はほとんどないといいます。
ミシガン州ウェイン州立大学 シンシア・バー教授
「この研究によってAR15が必要ないものだということが理解できると思います。これは軍事用の武器です」
「軍事用」と言えるほど破壊力が高いAR15で、トランプ前大統領を襲撃したクルックス容疑者。射撃クラブの会員だったとも報じられていて、FBIは単独での犯行とみて動機の解明を進めています。