トランプMAGAでどうなる新NISA【Bizスクエアで学ぶ投資のキホン#22】

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2024-08-01 06:00
トランプMAGAでどうなる新NISA【Bizスクエアで学ぶ投資のキホン#22】

トランプMAGAでどうなる新NISA 

――今日のテーマはトランプMAGAでどうなる新NISA。アメリカの大統領選は、トランプ前大統領対ハリス副大統領となりそうだ。市場では「もしトラ」を見越した動きも出てきている。トランプ氏の掲げる「アメリカを再び偉大に」の意味の「MAGA」(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)は今後新NISAにどんな影響を与えていくのかを見ていく。

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ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
一時期は「ほぼトラ」ともいわれていた。まだ大統領選自体は2か月以上先なので、ハリス氏が副大統領候補に誰を立てるかなど、今後の状況次第でも形勢逆転もあるが、少なくとも今の時点ではトランプ氏が少し優勢なので、トランプ氏が当選した場合という仮定のもとに、備えておくのも悪くない。

日経平均株価は7月11日に付けた最高値4万2224円からなんと4000円近く下落、3万8000円を割った。

さらに半導体などハイテク株の多いS&P500やナスダックも下落している。

――下落の理由は?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
主な理由は2つ。特に半導体。7月に、アメリカ政府が中国向け先端半導体の規制を強化するという方針が伝わった。もう一つ、トランプ氏が「半導体分野を台湾が独占していてけしからん」という発言をした。この2つが大きくきっかけになったと思う。特に規制強化は半導体関連企業の収益環境にも少なからず影響するかもしれない。さらにトランプ氏が「ドル高是正」を宣言したが、これも別に今に始まった話ではない。例えば半導体規制に関しては2年ほど前からアメリカ日本オランダ、この3カ国で中国向けには先端半導体の製造装置などを販売しない、技術面で中国を締め出すことをやってきている。今回の方針は、販売だけでなくメンテナンスもやめようということ。別に目新しい話ではない。

なぜここまで半導体株が売られたかというと、これまで半導体株はずっと上がりっぱなしで、割高も指摘されてきていた。エヌビディアの株価も結局6月ぐらいをピークにずっとダラダラと下がってきた。投資家の多くも「ちょっと高すぎるかな、買われすぎかな、でもまだ株価は上がっているし売るの勿体ないかな」とみんな迷っていたところに、規制強化みたいな話が出てきたので、「ここで一旦利益確定売りをしよう」というきっかけになっただけでは。株価が大きく下がったといっても1か月半ぐらい前の水準に戻っただけ。騒ぐ必要は全然ないと思っている。

――確かに1月のところから見ると、半年でものすごく上がっている。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
ものすごく上がっています。

――新NISAというテーマで見ていくが、1月から始めた方は、右肩上がりの恩恵を受けているかと思うが、7月ぐらいから株高を受けて始めた人は非常に心配だと思う。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
「安心しろ」と言っても難しいと思うが、心配する必要は全くない。7月の天井で始めた人は今、含み損だが、例えば4月の下落時に始めた人は一旦含み損になったが、その後1~2か月でまた戻っていった。今回も1~2か月で戻るという保証はもちろんないが、長い目で見れば株価はダラダラ上がって、ストンと下がって、またダラダラっと上がってストンと下がって、またダラダラっと上がっていくと考えれば、何ら心配する必要はないと思っている。

それこそ年明けから投資していた方だったら、S&P500は、円ベース。円安のおかげもあって、年初からここまでで30%ぐらい上がっていた。日経平均株価も30%ぐらい上がっていた。それがS&P500はここで5%下がっただけ。円高を入れても10%ぐらいしか下がっていない。だからまだ全然含み損でも何でもない。損切りなんていう話にはならない。

――皆さん、含み益がここ1~2週間でかなり下がっていることが心配だ。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
僕も含み益がだいぶ吹き飛びました。それでもまだ十分残っているが、金額を言うと、100万円以上飛びました。そんなの株だから当たり前。こういう動きをするもの。だから僕がいつもいうのは、投資は上がった下がったと足元を見たら駄目。車の運転と同じように遠くを見るのが大事。怖くなって売るとか、積立を一旦やめるという行動に出てはいけない。

トランプ氏が返り咲いた場合、MAGAは新NISAにどんな影響を与えるのか見ていく。

まずトランプ氏の主な政策は「ドル高是正」「減税」「原油、天然ガス採掘増」「一律10%の関税」。まずこのドル高是正発言により、円高方向に振れた。さらに今週は日銀の利上げの思惑もあり、一時151円台まで円高が進むという場面もあった。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
円高になるとまず心配されるのが、輸出企業の業績への影響。これまですごい円安で業績を押し上げる効果が期待されていたが、今153円ぐらいまで円高になったと。輸出企業の業績見通しを組む前提になっている想定為替レートは平均で1ドル143円ぐらい。実際の想定レートまで、まだまだ余裕がある。だからこの円高によって輸出企業が減益になったり、赤字に転落することでは全くない。まだのりしろが10円ぐらいある。要は今まで強い追い風が吹いていたのが、若干弱まるという程度の話だと思っておけばいい。

それから一律10%の関税の話。トランプ氏は外国の自動車には最大200%の関税をかけると。要は車の値段が元の値段の3倍になるという話。これは大変な話だが、一方でトランプ氏は原油・天然ガスの採掘増も掲げている。「脱炭素なんてくそくらえ」「化石燃料をを掘って掘って掘りまくるんだ」と言っている。EVには逆風だ。

日本車は、皆ご存知の通り、EV(に関しては)出遅れ。周回遅れか2周遅れぐらいになっている。自動運転もそう。一方で日本車の強みはハイブリッド。2023年あたりから、EVよりもハイブリッド車の方が売れるようになってきている。もしトランプ政権になってくれたら、日本車には一時的とはいえ、追い風になる可能性もある。200%の関税を本当にかけられた場合はわからないが、選挙対策で票集めのために言ってるだけかもしれない。実際にどこまでやるかはまだわからない。ただイーロン・マスク氏がトランプ氏に接近している。マスク氏の真意はよくわからない。

――テスラにとっては、トランプ氏が大統領になったときに、ネガティブに働くのでは。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
もしかしたらEVにこれから吹くであろう逆風を少し和らげるためにトランプ氏に取り入ろうとしてるのかとか。今後いろんな動きを見ていく必要があると思う。

――アメリカ株はトランプ氏が1期目を務めたときに上昇していった。「トランプ・ラリー」と呼ばれたが、今回も同じ動きになるのか。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
2016年11月、「トランプ氏当選確実」のニュースが流れた直後から日経平均株価は1300円下がった。今みたいに4万円の時代ではなく、1万8000円台のときに1300円下がった。今でいったら約2倍。2500~2600円下がったという計算、すごい下がり方をした。でもその日の夜、アメリカ市場がバーッと上がり始めて、次の日から日経平均もガンガン上がってきた。このトランプ・ラリーが今回も来るかという話だが、基本的にはアメリカ株は上昇すると思う。当然日本株も連れ高。方向性でいったら上だと思う。「MAGA」は結局アメリカを強くするわけだ。

アメリカの経済が良くなる、景気も良くなる、アメリカ株が上がる。日本も一定の恩恵を受けるはずだと。そう考えると、日本株にも上昇が期待できると思う。ただ、8年前のような大きなインパクトはないかもしれない。トランプ氏は「減税」もいっているが、前回ほどの大規模ではない。それから移民政策や関税もマーケットも大体慣れている。目新しさはあまりない。そう考えると新鮮味がないので、前回ほどの大幅上昇は期待しない方がいいと思う。

――トランプ氏のいうようにドル高是正で円高に進んだ場合、アメリカに投資する為替リスクみたいなものを警戒するべきか。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
為替の動きは正直非常に読みづらい。トランプ氏は財政拡張派。そう考えるとドルが売られる恐れもあるが、一方、財政拡張でアメリカの長期金利が上昇すると、それは円安要因にもなる。だから為替はどちらにも取れる。だから何となくイメージしているのは大統領選でトランプ氏が当選した直後は1回、円高。ドル高是正とか。だけど次の年位の後半ぐらいからはやはりアメリカが強いよねと、またドル高円安方向かなと、中長期的には円安かという気がする。

――110円、120円みたいな時代はもう来ないか?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
海外旅行に行くなら来てほしい。もう少し円高に動いてほしい。それこそ日本の輸出企業は1ドル120円ぐらいでも十分やっていけるだろうから、もう少し国民の生活を考えると、円高に行ってほしいが、仕方がない。円の価値が弱くドルの方が価値が高いからなかなか簡単には円高には動きそうにない。

――反対にアメリカ株に投資してる人たちはそこまで為替リスクは円高に進んで心配する必要はないか。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
為替が仮に10%円高に動いたとしてもざっと150円として、135円まで10%為替が円高に動いたとしても、株のリターンは、年率6%から8%あるから1~2年ですぐ取り返せるぐらいの水準なので、極度に恐れる必要はないと思う。

そして再びアメリカがまた景気回復していくと、インフレが再燃してしまうのではないかという恐れがある。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
トランプ政権になった場合の最大のリスクは「インフレ再燃」だ。3つのルートでインフレが起こりうる。まず(トランプ氏は)財政拡張派だから、景気を刺激するのでインフレになりやすい、それから関税を引き上げたらアメリカ国内の物価が上昇する。もう一つ、移民を抑制するということは、働き手が足りなくなる。企業は賃上げしなければいけなくなる、賃上げした分を価格転嫁する。もう紛れもないインフレ。だから、いろんなルートでアメリカのインフレが再燃するリスクが一番怖い。でもインフレになればまたアメリカの金利が上がっていくので、やはり為替は円安。それとトランプ氏のドル高是正方針とその綱引きみたいなことになっていくのだろう。

――日本は引き続きアメリカの動向次第か。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
仕方ない。経済面では相当アメリカとの関係性というのは強い。これはもう避けようがない。

トランプ・トレード 有望セクターは?

――ではトランプ氏が返り咲いた場合、値上がりしそうなセクターは?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
単純に防衛関連がまず買われやすい。足元でもだいぶ買われてきた。それから石油、石炭など化石燃料系も足元で上がっている。あとは規制緩和という意味で金融関連も買われやすくなると思う。要は、バイデン政権・民主党政権であまり恩恵を受けられなかったセクターが、逆にトランプ政権・共和党政権になったら買われやすいという割と単純な構図だと思う。

一つ気をつけなければならないのが、ハイテク関連。特に半導体は、二面性があると思っている。すなわちアメリカのハイテク企業は優遇される、守られるが、海外のハイテク企業は少し締め出されがちだと思う。例えばTSMCとか。もう既にトランプ氏は「台湾独り占めでけしからん」と言っている。TSMCやサムソンなどは若干厳しいかもしれない。日本の半導体メーカーは正直まだ読めない。日本の政治行政がトランプ政権といかに上手に渡り合っていけるかどうか、ここに鍵がある。政治家と企業と行政が三位一体となって、トランプ政権と渡り合っていく。トランプ氏でなくてもハリス氏であろうともアメリカと上手に交渉していくことに尽きると思う。

――新NISAを始めたばかりの人は、トランプ相場の中でどう投資するのがよいか。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
足元は株価が揺らいでいるが、トランプ政権になったらアメリカが強くなる、MAGAだということで長期的にはアメリカ株が上がるということでよいが、その効果が出るのは、2025年の後半以降だと思う。大統領に就任するのも2025年の1月。そこからいろんな政策を打っていって効果が出るのは多分2025年後半だろうと。問題はそれまでの間にアメリカの景気が崩れないかどうかが心配。消費が少し弱まってきている。GDPは強めに伸びたが、アメリカの個人消費のデータを丁寧に見ると少しスローダウンしてきている。だからもし景気の減速色が強まるようなことがあると目先もう1回アメリカ株が大きめに下がる。S&P500で5000ポイント割れのリスクはあると思う。ただ、中長期的にはまたアメリカ株を中心に上がっていくというトレンド自体は変わらないので、とにかく積立投資の場合は途中で止めない。一旦お休みしようかとか。SNSの書き込みはインプ稼ぎ(閲覧数稼ぎ)だと思っている。あんなのに惑わされる必要ない。一般の人は何も難しいこと考えずに、淡々と機械的に積み立てていく。これが一番いいと思う。(最初にした設定を変えずに放置)遠くを見続ける。近くを見たらダメ。

――最後に投資のプロの井出氏から相場の格言です。「売るべし、買うべし、休むべし」。これはどういう意味でしょう。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
相場の見通しが、極度に不透明なときはもう売ったり買ったりしないで、一旦お休みする。「休むも相場」という格言もある。

自分の中で大した根拠もなく、売ったり買ったりして失敗したときは、本当に悲しいだけではなく、何が失敗だったかもわからないから反省すらできない。反省できればまたそれを次に生かして投資できるが、根拠レスで売ったり買ったりするぐらいだったら、一旦思い切ってお休みしましょう、という格言。

ただこれはあくまで、短期投資向けの格言であって、積み立て投資の場合は休んでは駄目。それから投資先をコロコロ変えたりとか、投資額をコロコロ増やしたり減らしたりは必要ない。毎月できれば定額というのがいいと思う。そのときの自分の懐事情に合わせて「今月は1万円多くしようか」とか「今月は出費がかさんだから少し減らそうか」とか、多少あってもいいかもしれないが、投資判断で上がりそう、下がりそうで積立額を変えるのはおすすめしていない。

それよりも大事なのは、世の中の大きな流れ。もしくはその流れの変化をつかむこと。底流・潮流みたいな話。変化に応じて投資先を変えるというのはありだ。例えば今、中国に積極的に投資しようと考える人はほとんどいない。ところが8年前、トランプが1期目当選したときはまだ中国金ピカ時代。GDPでいったら2030年頃にもアメリカを追い抜かすのではないかとか言われていた時代。それが今やどうか。そういう大きな変化、インド経済の発展など、そういった大きな変化に合わせて投資先を少し変えていくっていうのは大事なことだが、暗に株価が上がった、下がったで、売ったり、買ったりは、一般の人にはおすすめしていない。

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