8月に入っても厳しい暑さが続く中、子どもたちの夏休みに貧困や格差の問題が暗い影を落としています。
【写真を見る】子どもの格差…給食がない子どもたちの夏休み 体験や教育格差を解消するには?【風をよむ】サンデーモーニング
楽しい夏休み その一方で…
迎えた夏本番。行楽地では…
子ども
「いろんな形の花火があって楽しかった」
夏休みの思い出を作る、子どもたちの声で賑わっています。
その一方で…
食事の支援を求める家庭に、無償で食料品を提供するフードバンクの倉庫。夏休みのこの時期、大忙しです。
フードバンク狛江 山形美樹 理事
「給食がないって、すごく大きな事件。長い休みなので、お子さんが1人でも家にいて食事できるようなものを準備してあげたい。(申込者が)減少する雰囲気があまりない」
現在、フードバンク狛江では市内の約200世帯を支援していますが、小学校入学前の子どもがいる世帯は、支援の対象になっておらず、困窮する世帯はさらに多いとみられます。
支援を受ける家庭では…
そんな支援を受けるお宅を訪ねました。
50代女性
「なるべく食費がかからないようにしています」
都内で暮らす女性は、シングルマザーとして、長女(小6)と長男(小2)を育てる一方、入院中の80代の母親の面倒を見ています。
病院職員として、手取り収入は20万円ほど。4人の生活を支えるのは容易ではありません。
50代女性
「この子たちの先の人生を良くしてあげたいから頑張ってるんですけど…」
子どもたちが家にいる夏休み。物価高が進む中、食費や光熱費はかさみ、到底、旅行に出かける余裕はないといいます。
広がる“体験格差”…
そうした旅行など、子どもの体験の大切さを物語るデータがあります。
文科省が2万人以上の子どもを追跡調査した結果、小学校時代のキャンプやスポーツ観戦、音楽鑑賞などの体験が、自尊心の向上や、精神的な回復力に影響を及ぼすことが分かっています。
そのため、親の経済力によって、子どもたちの体験が左右される、いわゆる「体験格差」が今、問題となっているのです。
50代女性
「ひとり親だと、いろんな体験をさせてあげられないところもあるんですが、私が仕事をしている現場を見せてあげるとか、社会に役立つための体験を沢山させてはいるつもりです」
長女
「いろいろと迷惑かけてきちゃったから、その分の恩返しできるように…」
9人に1人の子どもが貧困という現実
年間所得が中央値の半分より少ない所得で暮らす子どもの割合、いわゆる「子どもの貧困率」は11.5%。9人に1人の子どもが、いま貧困状態にあるのです。
さらに、貧困は子どもたちの不登校やいじめ、虐待事件の増加にもつながっているとされます。
こうした状況を受け、6月、国会では子どもの貧困解消を謳った法律が成立しましたが、専門家は…
日本大学 教育行政学 末冨芳 教授
「とにかく子どもの貧困の改善・解消には財源が必要で、現金給付も足りてない、貧困状態の親子をサポートするような行政の職員も全く足りてない。今の行政は『民間の共助の仕組み』に依存しすぎています。
貧困の連鎖を産んで、子ども・若者が貧困から抜け出せない絶望のまま、ずっと大人としても生きていかなければいけない」
貧困の連鎖を解消するには―?
この状況を少しでも変えようとする若者たちがいました。
家庭の経済状況から、塾に通えない中高生らを対象に、3年前、無料の塾を開いた大学生の吉沢春陽さん(23)。
中央大学4年 吉沢春陽さん
「家庭の環境で、いろいろ左右されて欲しくないとすごく思っていて、この無料塾の意義としては、まず『教育格差』をなくすことで、見える世界が変わるというか、選べる選択肢が変わってくると私は感じてます」
吉沢さんの呼びかけに大学の垣根を越えて集まったボランティア講師の数は現在、56人。子どもたち30人ほどが学んでいます。
経済的な理由などから、大学受験を諦めかけていたという受講生も…
無料塾の受講生(高3)
「塾に入ってから、どんどん夢が開いて、学校の先生になりたいなという気持ちが出てきました」
無料塾の受講生(高1)
「先生たちが私を助けてくれたように、私も人を助けたいなと考え始めて。看護師とか人を助けるような仕事に就きたい」
子どもたちの“格差”を埋める社会全体としての取り組みが、改めて求められています。
(「サンデーモーニング」2024年8月4日放送より)