先生は児童が選ぶ、科目名は「物語と絵本」…トラウデン直美さんと高校生×AIが考えた“世界一通いたい”未来の小学校

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-08-21 19:00
先生は児童が選ぶ、科目名は「物語と絵本」…トラウデン直美さんと高校生×AIが考えた“世界一通いたい”未来の小学校

2024年8月、全国の高校生たちが東京・赤坂のTBSに集まり、“SDGs QUEST みらい甲子園 Future Session”というイベントが開催されました。会場では、未来の学びの場がどのように進化するのか、「世界一通いたくなる小学校」をAIを使いながら描き出すというセッションが行われました。自らの経験や希望を元に高校生たちが描き出した“未来の小学校”とはどのようなものだったのでしょうか。

【写真を見る】先生は児童が選ぶ、科目名は「物語と絵本」…トラウデン直美さんと高校生×AIが考えた“世界一通いたい”未来の小学校

“理想の小学校“をめぐって飛び交う意外なキーワード

TBSのイノベーションスペース「Tech Design X」に集ったのは、各地で社会課題解決に取り組み、そのアイディアが評価された8校24人の高校生でした。SDGs目標4番「質の高い教育をみんなに」も念頭に、小学校がどうあって欲しいかを話し合います。

全員が小学校を卒業してまだ数年。記憶も体験もまだフレッシュなメンバーからこんな意見が出されます。

『創造力と想像力が広がる学校施設が欲しい』『素敵な校庭が大事』『国際交流を図りたい』
『先生は生徒が選ぶことができるように!』『ゲームみたいに楽しめて、学びになる行事は?』

彼らの“要望”は、裏を返してみれば自分たちは小学校で得られなかった体験や環境ということでもあります。これらを整理して理想の小学校を組み立てるには…。

『5つの要素』に分けて考えてみる

学校の大切な要素を5つに分け、それぞれを各校の高校生の混成5チームで考えていきます。

「学校施設」 (黄色グループ)
「授業カリキュラム」 (緑グループ)
「課外活動」 (青グループ)
「先生」 (ピンクグループ)
「学校行事」 (赤グループ)

時間は45分間、それぞれの要素ごとにチーム内でディスカッションします。TBSの藤森祥平アナウンサーやスペシャルゲスト、トラウデン直美さん(「news23」水曜日コメンテーター)、ゲスト講師の新渡戸文化中学校・高等学校 情報科教諭の勝田浩次先生と、新渡戸文化学園平岩国泰理事長、Think the Earth上田壮一理事といったスペシャリストが議論をサポートします。

全国1700の高校生チームが参加する「みらい甲子園」とは?

今、ディスカッションを行っている高校生24人は、地球の持続可能な未来のためにSDGsを探究し、社会課題解決に向けたアイデアを考え、発表する全国大会「SDGs QUEST みらい甲子園」に参加し、選抜されたメンバーです。

「みらい甲子園」は2019年にスタートし、今回の2023年度大会は、全国319校、約1700チーム、総勢7255名の生徒が参加しています。オンラインの全国交流会で全国の高校生審査員や関係者により選ばれた8チームの24人が今、東京・赤坂で「小学校の未来」を考えているのです。

参加したのは以下の8チーム。

・ 岩手県立葛巻高等学校         「蟲喰(むしばみ)」
・ 茨城県立水戸農業高等学校       「農業研究部」
・ 雲雀丘学園高等学校(兵庫県)     「さくらんぼ」
・ 広島女学院高等学校          「AYAME」
・ 福岡県立鞍手高等学校         「Wall Street Wizards」
・ 大分県立久住高原農業高等学校     「AAA栽培チーム サフラン班」
・ 鹿児島県立曽於高等学校        「元祖トレロ魂」
・ 北谷高等学校&具志川高等学校(沖縄県)「Teamサラバンジー!」

全国から集まった「高校生サステナブルリーダー達」が5色の混成チームに分かれて、「世界一通いたくなる小学校」を議論し発表していきます。

<① 『学校施設』の黄色グループ>

世界はこれからも色々な問題が起こってくる、それを解決するためには想像力を養うことが大切だと生徒たちは考えました。キーワードとして『小学生の想像と創造』=2つの“そうぞう”。それを鍛えるための場所をAIに作ってもらいました。

AIが描き出した「学校施設」は広大なホールのような場所に、デスクやモニターなどIT設備が機能的に配置され、芝生のスペースやアートの展示もされています。壁や天井にも広い窓が開いていて、外部との境目を意識しない環境の中を人が行き交っています。屋内ですが屋外のよう、公園であり図書館であり、一切の閉塞感が取り払われた学校です。

生徒はAIに対し「秘密基地があるイメージで」「テクノロジーと自然が融合したフレキシブルな空間を」などと次々に指示を出して、アイディアを磨いていきます。

<② 『授業カリキュラム』の緑グループ>

キャッチコピーは『小さな教室から広がる大きな世界』です。目的は異文化を理解・尊重し、国際的な視野を広げるためのコミュニケーションスキルを向上させること。オンラインで交流したり、現地に行って学習したりしたいです。カリキュラム名は、「物語と絵本」「音楽や歌」「クラフトとアート」「植生や農業」など。キャッチコピーもAIに「10個考えて」と指示してその中から選びました。

AIは、万国旗の下でモニターに映る異国・異文化の人とリモートで交流する生徒たちの姿を描きます。教室にはギターや観葉植物などが配置されて、「授業」のイメージを超えた、交流→理解→尊重を身につけてゆく様子が見てとれます。生徒たちはAIに「他言語に触れるためのアイディアを」「互いの文化や伝統工芸、食生活を共有し楽しめるように」と細かく指示していました。

<③ 『課外活動』の青グループ>

生徒たちは「課外活動って何だろう?」と生成AIに聞くところから始めました。スポーツ、ボランティア、絵を描く、などがAIから挙がり、生徒たちからはゴミ拾いや、高齢者と一緒に散歩、などのアイディアが挙がり、「どこでもだれでも自由に画を描ける学校」というコンセプトが固まりました。

AIは、グリーンの球技コートのような場所にデスクや滑り台、バスケットボールのゴールが配置された場所が広い壁で囲まれていて、その壁に小学生や大人もまじって、自由に画を描く様子を描き出します。

<④ 『先生』のピンクグループ>

学校を考えるときに非常に重要な存在である『先生』。生徒たちから飛び出したアイディアは、大人たちには思いつかないようなものばかり。

『生徒が先生を選ぶ』『半期ごとに交代』『生徒の希望に積極的に動いてくれる先生がいい』、先生と一緒に過ごす場所は『野外』の方がいいという希望も出て、AIは教壇という一段高いところからでなく、野外のスペースで生徒と語り合う先生の姿を描きました。背景にはまるで選挙のポスターのように「先生選挙」のための顔写真が…。

生徒が重要視したのは「怒らない」「自身の体験談を話してくれる」「そこに現実にあるかのようなリアルな授業をしてくれる」などでした。

<⑤ 『学校行事』の赤グループ>

テーマは『歴史を追体験する遠足』。遠足にVRの要素も加え、目の前で歴史の出来事が起きているかのように見ることが出来れば、間違った歴史を繰り返さないよう、今に繋がる学びになると生徒たちは考えました。

AIには「存在しない未来の小学校行事を20個考えてみて」と指示。「AIガイドの自然探検ツアー」や「仮想都市デザインコンテスト」等が挙がりましたが、「時間旅行フェスティバル」が選択されました。

生徒たちは訪問した先で、そこで営まれていた古代の生活や、合戦のようすなどをVR機器なども使いながら追体験する…。AIが描いたのはそんな遠足でした。

AIを使うこと自体初めてという生徒も多く、自分たちが考えた事とAIが描く画にギャップが生じる場面が多く見られました。それを「意外な発見」とするのか、自分たちなりに修正していくのか、この選択も新鮮な体験だったようです。

そして、これらの5要素をAIのエキスパートであるゲストの勝田浩次先生が統合しました。

広大なスペースに開放的な建物。窓や天井の開口部は大きく室内にも木が植えられています。内と外と境界はほとんどなく、教室ごとの仕切りや壁が一切無いのも特徴的です。生徒が向かっているのは一人ずつのデスクではなく、共有のテーブル。座って学んでいる人もいれば、ゆったりと歩いている人もいます。そしてその場には外国の人、大人の姿も。AIは生徒たちの言葉をすくい上げ、既成の小学校のイメージを取り払って「ホール」や「ガーデン」といった空間を生み出しました。

AIの力も借りて「理想の小学校」をどう描き出すか…。

慣れない作業に戸惑う場面もありましたが、社会課題解決に向き合う高校生たちは、自分たちの後輩=未来の子どもたちの学びの環境を生み出す議論を楽しんだようでした。                                          

×