九州に接近中の非常に強い台風10号を、気象庁は、数十年に一度の「過去最強クラス」の台風と位置付け、今後、鹿児島県に「台風を要因とする特別警報」を発表する可能性を示しています。「大雨特別警報」とは異なる「台風を要因とする特別警報」とは、どのような情報なのでしょうか。
非常に強い台風10号は、あす(29日)にかけて九州への上陸が予想されます。
これに先立ち、気象庁はけさ(28日午前)、今後、昼頃を目途に、鹿児島県に「台風を要因とする特別警報」を発表する可能性を明らかにしています。
また、鹿児島県と宮崎県では記録的な大雨となり、「大雨特別警報」を発表する可能性もあるとしています。
実は、同じ「特別警報」でも、「台風を要因とする特別警報」と「大雨特別警報」とでは、情報の“性格”がかなり異なります。
「大雨特別警報」が、観測された雨量が基準を満たした場合に発表されるのに対し、「台風を要因とする特別警報」は、これまでに経験したことのないような暴風・高波・高潮が予想され、最大級の警戒が必要な場合に発表されます。
「大雨特別警報」が実際に観測された雨量をもとに発表されるのに対し、「台風を要因とする特別警報」は、雨以外の風や波、潮位の予想をもとに発表される点が大きな違いです。
いわば「予告」的に発表されるのが特徴といえます。
「台風を要因とする特別警報」が発表されるのは、数十年に一度の強さの台風や温帯低気圧によって暴風・高潮・波浪・暴風雪が予想される場合で、具体的には、▼中心気圧が930ヘクトパスカル以下、または▼最大風速50メートル以上が基準となっています。
これらの基準を満たす台風は数十年に一度の強さとされ、気象庁によりますと、今回の台風10号では、あすにかけて鹿児島県で最大風速50メートルが予想されるため、特別警報を発表する可能性があるということです。
気象庁大気海洋部の杉本悟史・予報課長は、けさの記者会見で、台風10号について「これまでで最強に近いクラス」と説明しました。
もし、台風10号について「台風を要因とする特別警報」が発表されれば、特別警報の運用を2013年に開始して以来、4回目となります。
ここで、「台風を要因とする特別警報」を「予告」的に発表する意味についてもう少し詳しく説明します。
一般的に、台風が接近すると、まず、風が強くなります。
続いて風の影響で、波が高くなったり、潮位が上昇したりもします。
暴風や強風、高波、高潮が先に発生していれば、たとえまだ大雨が降っていなくても、避難行動をとること、特に自宅などの外に避難する「立ち退き避難」が難しくなる可能性があります。
そのため、「予告」的に発表することで、避難にかかる猶予時間を確保するのが「台風を要因とする特別警報」の大きな狙いの一つなのです。
「台風を要因とする特別警報」の発表の流れですが、気象庁は、
(1)台風上陸のおよそ24時間前に特別警報を発表する可能性があることを緊急記者会見で知らせる。
(2)台風上陸のおよそ6時間から12時間前に特別警報を発表する。
(3)特別警報発表のおよそ1時間後に、発表の内容について緊急記者会見で説明する。
以上を大まかなイメージとして思い描いています。
台風の進路や「いつ上陸するか」だけに着目すると、台風の九州上陸はあすにかけてと予想され、まだ時間があるように思うかもしれませんが、一部の地域では、すでに風や雨が十分強くなっています。
いざ避難しようと思ったときには既に暴風が吹き荒れていて、立ち退き避難は難しく、かえって危険な状況になっているかもしれません。
風速40メートル以上は、一部の住宅が倒壊してしまうような猛烈な風です。
「台風を要因とする特別警報」が実際に発表されるかどうか、いつ発表されるかはまだわかりませんが、気象庁と国土交通省は、暴風が吹く前までに避難を完了するよう呼びかけています。
▼暴風が吹き始める前に頑丈な建物の中に移動するとともに、屋内では窓から離れてください。
▼自宅や自分がいる場所周辺のハザードマップを確認して、高潮や洪水の浸水想定区域や土砂災害警戒区域などにいる場合、暴風が吹き始める前に避難することが重要です。
▼地元市町村が発表する「避難指示」や「高齢者等避難」などの避難情報に従って行動してください。
台風10号は、たとえ特別警報が発表されなくても、記録的な大雨、暴風、高波、高潮となるおそれがある台風です。
早めに身の安全を確保することを心がけてください。