髪型をいじるのが大好き、お客さんのヘアスタイルを理想に近づけたい、という熱い思いでサロンに立つ美容師のみなさん。だが、そんな美容師の中でもとくに女性は産休や育休の取得が難しいようだ。そこで今回、メンズウィッグを手掛ける株式会社MAKE A CULTURE(https://www.makeaculture.com/)は、現役女性美容師、そして子どもがいる現役女性美容師または過去、美容師経験がある女性を対象に「美容師×在宅ワーク」に関する調査を実施した。
女性美容師は産休・育休をとりにくい傾向にある
はじめに、子どもがいる現役女性美容師または過去、美容師経験がある女性に「産休や育休は取得できましたか?」と質問したところ、『産休も育休も取得できた(54.2%)』『産休だけ取得できた(32.1%)』『どちらも取得できなかった(13.7%)』という結果となった。日本全体での女性の育休取得率は約8割(出典:「令和4年度雇用均等基本調査」厚生労働省)であることから、美容師の就労現場では産休・育休をとりにくい傾向があることがわかった。さらに、具体的な職場復帰後の悩みに関して聞いたみた。
■職場復帰後に悩んだこととは?
・職場の同僚に負担をかけてしまっている(30代/愛知県)
・ブランクがあると難しい(40代/長崎県)
・子どものことで休みを多くとりたくても、なかなかとりにくいこと(40代/大阪府)
・お客様の来店が遅い時間になるとなかなか子どものお迎えに行けなかった(50代/長崎県)
子どものことでの休みのとりづらさや、それによって同僚に負担をかけてしまうことなど、子育てとの両立に悩んでいるという声が寄せられた。
およそ2人に1人が職場復帰後1年半未満に退職。その理由とは?
引き続き、子どもがいる現役女性美容師または過去、美容師経験がある女性に「職場復帰してから美容師をやめるまでの期間について教えてください」と質問したところ、『1年~1年半未満(28.0%)』と回答した人が最も多く、次いで『6か月~1年未満(24.4%)』『やめていない(現在も現役)(12.8%)』『1年半~2年未満(12.3%)』となり、8割以上が職場復帰した後に美容師の仕事をやめていることが明らかになった。
前述の質問でやめるまでの期間を回答した人に「美容師をやめた理由を教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『希望するワークスタイルと合わなかったため(34.2%)』と回答した人が最も多く、次いで『顧客が離れてしまったことで、稼げなくなったため(30.0%)』『復帰後の新しい環境に慣れることができなかったため(26.8%)』となった。子どもが生まれたため希望するワークスタイルで働けないことをあげた人が3割以上と、子育てとの両立の難しさがうかがえる。
一方で、前述の質問で「やめていない(現在も現役)」と回答した人に、美容師を続けられている理由について聞いてみた。
■職場復帰をした後も美容師を続けられている理由は?
・私の場合は、近くに両親が住んでいることで、比較的子どもが体調不良でもみてもらえることです。オーナーも比較的カバーしてくれるので働きやすい方だと思っています(30代/香川県)
・職場の上司や同僚の理解のおかげである(30代/愛知県)
・人間関係がよいことと、あとは働かなくては生活が苦しいため(40代/大阪府)
・家族の支えがあったから(50代/和歌山県)
家族の協力があることや、職場の理解があることで、子育てと仕事を両立できる環境であるため続けられているという声が寄せられた。
続いて、前述の質問で「やめていない(現在も現役)」と回答した人に、「今後の美容師のキャリアを描くうえで、懸念していることはありますか?(複数回答可)」と質問したところ、『体力が持つかどうか(44.9%)』『仕事と子育てを両立できるか(44.9%)』と回答した人が最も多く、『顧客を維持できるかどうか(35.9%)』と続き、体力面の不安や、子育てと仕事の両立についての不安を抱える人が多い傾向が示された。
子育て中の女性美容師の8割以上が、カットスキルを活かせる在宅ワークに魅力を感じている
次に、現役女性美容師と子どもがいる現役女性美容師または過去、美容師経験がある女性に「美容師としての働き方に関して、どのようなことを求めますか?(複数回答可)」と質問したところ、『実力に合った給与(37.5%)』と回答した人が最も多く、次いで『産休や育休について理解がある(34.0%)』『福利厚生が充実している(32.6%)』『子どもの都合で休まざるを得ないことへの理解(32.6%)』と言う結果になった。約4割が給与面に課題があると感じており、その他に今後の妊娠・出産や働きやすさについても懸念があることがうかがえる。
そこで、「カットスキルを活かし、子育てしながらでもできる在宅ワーク事業があったらいいと思いますか?」と質問したところ、『とてもいいと思う(37.9%)』『ややいいと思う(44.3%)』『あまりいいと思わない(14.6%)』『まったくいいと思わない(3.2%)』という結果になった。「とてもいいと思う」と「ややいいと思う」を合わせると、8割以上がカットスキルを活かし、子育てしながらでもできる在宅ワークに魅力を感じているようだ。そこで、その具体的な理由を聞いてみた。
■子育てしながらでもできる在宅ワーク事業をどのように思っている?
・在宅ワークなら周りに迷惑をかけずに仕事ができる(20代/愛知県)
・子どもとの時間がつくれる(40代/千葉県)
・状況が変わっても好きな仕事ができる(40代/京都府)
在宅ワークなら、周りに迷惑をかけず、より子どもに時間をつかうことができ、好きな仕事を続けられるため、仕事と子育てを両立できるという声が寄せられた。また、今までの経験を活かしながら、生活と仕事の両方を充実させることができる在宅ワークへの関心が高いことも明らかになった。
【調査概要】「美容師×在宅ワーク」に関する調査
調査期間/2024年6月25日(火)~2024年7月2日(火)
調査方法/リンクアンドパートナーズが提供するPRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
調査人数/826人
調査対象/調査回答時に①現役女性美容師/②子どもがいる現役女性美容師または過去、美容師経験がある女性と回答したモニター
調査元/株式会社MAKE A CULTURE(https://www.makeaculture.com/)
モニター提供元/PRIZMAリサーチ
今回の調査結果で、女性美容師は子育てと仕事の両立は難しいことが明らかになった。実は記者の家内は元美容師。もう30年以上も前のことだが、妊娠がわかった時点で早々に辞めてしまい、その後復帰することはなかった。たしか彼女がその時「子どもができたら、雇われ美容師として勤務するなんて無理」と言っていた。時代が違うと言われればそれまでだが、当時の美容師を取り巻く環境は過酷で、朝早くから夜まで立ちっぱなしで、帰ってから育児する体力なんてないというのが理由だったと記憶している。お客様ファーストの職場なので、復帰すれば子育てがどうだの言えない環境だったのだ。
執筆にあたり、在宅ワークでウィッグ製作の仕事が当時あったらやっていたかを家内に聞いてみたところ、「なんで当時、そんな仕事がなかったのかね。あったら喜んでやってたのに」と返された。流通しているウィッグの多くはウィッグ専門会社のスタッフが製作しているが、株式会社MAKE A CULTUREではArtWigデザイナーと呼ばれる美容師が自宅や自身で運営しているサロンなど、好きな時間に好きな場所でウィッグを製作しているという。妊娠・出産によって働きたくても働けず、磨いてきた技術と経験を活かせなくなっている女性美容師は、ぜひ検討してみてはいかがだろうか。