東京・東村山市にある「国立ハンセン病資料館」で、ハンセン病患者や回復者の1世紀にわたる絵画活動を振り返る企画展が開かれています。
「絵ごころでつながる-多磨全生園絵画の100年」と題した企画展は、国立ハンセン病資料館に隣接する療養施設「多磨全生園」の入所者が、1923年からおよそ100年の間に描いた油絵や版画などおよそ110点が展示されています。
目をひくのは、巻物に地蔵などの絵が描かれ、優しいタッチでメッセージが綴られた作品です。
「病むものがいたわりあって 生きる絆を大切にしようね」
この作品は、多磨全生園の入所者で2020年に84歳で亡くなった鈴村洋子さんのものです。和紙や巻物の障子紙などに、地蔵やカッパの絵とともに、生まれ故郷の北海道や日々の思いを手書きで綴った独特な作品をいくつも残しました。
幼少期に発病した鈴村さんは、18歳で生まれ育った北海道を離れて青森県内の保養園に入所し、多磨全生園に転園した後の1997年から作品作りを始めたといいます。
なかには、強制的な隔離生活で古里に帰れない悲痛な思いを綴った作品もあります。
「ふるさとの川へ向かって走れ 私も故郷を出て五十三年 帰りたいよとさけんでも この声どこまで響くのかな」
鈴村さんの言葉には、社会に根付いたハンセン病患者への差別と偏見が垣間見えます。
多磨全生園の前身の「全生病院」では、1923年10月に入所者が描いた絵画を展示する絵画展が初めて開かれ、その後、絵画活動を通じて入所者と職員が交流したといいます。
資料館の吉国元学芸員は、「ハンセン病患者と回復者に対する隔離政策下という苦難のなかで、多磨全生園の描き手たちは社会とのつながりを求めて絵を描いてきました。まっすぐな想いを受け止めてほしい」と話しています。
企画展は9月1日までで、入場は無料です。