殺人に誘拐…凶悪犯罪 “世界最恐”ギャング刑務所の実態 「世界一治安が悪い国」エルサルバドルが“ギャング撲滅作戦”で激変も…えん罪訴える人続出【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-09-12 12:08

新たな視点と独自取材でお伝えする「eyes23」。全員丸刈りで、体や顔にタトゥーが入った受刑者が所狭しと並ぶ場所。ここは"元ギャング"が収容される中米・エルサルバドルの巨大刑務所です。"世界で最も恐ろしい"といわれる刑務所の内部に日本メディアとして初めてカメラが入りました。

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日本のメディア初 “世界最恐”ギャング刑務所を取材

大橋純記者
「見えてきました、巨大な建物。入り口には銃を持った兵士たちがたくさん立っています」

壁の高さは9メートル…
絶対に逃げ出すことはできないといいます。

中米・エルサルバドルに建設された定員4万人の巨大刑務所、「テロリスト監禁センター」。

大橋記者
「いきなりありました。そして… いま声をかけられました。一斉にこちらを見ています」

受刑者たち
「…」

誰も何も言いません。じっと、こちらを見ています。

大橋記者
「顔や手にたくさん入れ墨をしているのがわかります。こちらをにらみつけてくるような受刑者もいます。すごい迫力」

収監されているのは殺人や誘拐など、複数の凶悪犯罪にかかわったギャングの元メンバーとされています。

「社会復帰させない」ことが前提 外部との接触は一切認められず

大橋記者
「エルサルバドルには2つのギャング集団がいます 。『MS13』と『Mara18』、2つは激しく争ってきましたけど、この刑務所では同じ独房に入れられるということです」

政府は、ギャングを「テロリスト」と定義し、丸刈りにされた受刑者たちは原則として24時間365日、この建物の中で過ごします。

「社会復帰させない」ことが前提で、家族はもちろん、外部との接触は一切認められません。

大橋記者
「このエリアを見下ろすように監視員が立っていて、銃を持っています。万が一何かがあった場合、あそこから銃撃することもできるようになっています」

職員と警備員は、顔を隠します。

刑務所の外でギャングから危害を加えられる可能性があるからです。

食事は手づかみ、枕や毛布も使えず・・・プライバシーほぼ無し 犯罪500件の男「誰もこの場所に収容されてほしくない」

受刑者の生活は当然、過酷です。

フォークやナイフなどは凶器として使われる可能性があるため食事は「手づかみ」と決められています。

プライバシーは無いに等しく、就寝時間も照明に照らされ、枕や毛布も使えません。

殺人や強盗など500以上の犯罪にかかわったという受刑者。

本人の意思を確認した上で、特別な許可を得て話を聞きました。

ギャンググループの元リーダー
「ここは厳格な規律と厳しい服従を求められる刑務所だ。5つ星のホテルではない」

ギャングに加わったのは13歳のころ。

刑務所に入り、これまでの人生を後悔していると言います。

ギャンググループの元リーダー
「子どもたちには『ギャングに参加しない方がいい』と伝えたい。子どもや若者はもちろん、かつての敵であった人たちも、誰もこの場所に収容されてほしくない」

世界で最も治安が悪い国 エルサルバドルの"日常" 80ドル払えずギャングから銃撃

エルサルバドルは30年近くにわたって、ギャングが縄張り争いを繰り広げ「世界で最も治安が悪い国」とも呼ばれました。

最悪だったのは、2015年で10万人あたりの殺人事件は106.3件。

単純比較はできませんが、直近の日本(0.7件)の約150倍。
エルサルバドルの治安は崩壊状態でした。

当時、人々を苦しめたものの1つが、ギャングの「みかじめ料」でした。

露天商として生計を立ててきたホセ・アントニオさん。

7年前にギャングに銃で撃たれました。

商売をするために要求された80ドルのみかじめ料を払えなかったからです。

露店を営む ホセ・アントニオさん
「私には2人の娘がいます。もう一度生きるチャンス・仕事をするチャンスをくださいとギャングに言いました」

命乞いをしたアントニオさんでしたが、ギャングは「もういい」と言って発砲。

アントニオさんは病院に運ばれ一命をとりとめましたが、これがエルサルバドルの「日常」でした。

政府“ギャング撲滅作戦” 殺人事件の発生率は劇的に改善

こうした状況を一変させたのが、2019年に発足した現政権による"ギャング撲滅作戦"です。

大橋記者
「日が暮れたところですが、軍による治安維持のオペレーションが始まりました。一軒一軒家をまわって、不審者がいないかどうか確認するということです」

政府は、治安対策を最優先課題に軍隊や武装した警察官をギャングの取り締まりに投入。

特に成果を挙げているのが、例外的な位置づけで導入された「超法規的措置」です。

ギャングと関係するタトゥーが体に見つかったり、第三者からの通報があったりすれば、司法手続きを経なくても逮捕が可能となっています。

強権的な措置は功を奏したのか、世界最悪だった殺人事件の発生率は劇的に改善。

わずか数年のうちに「中南米でもっとも安全な国」と言われるまでになりました。

なりふり構わぬ治安対策 “負の側面”も

いま街からギャングの姿は消え、平穏を取り戻しました。

市民
「現政権はこの国を正しく導いてくれています」
「誰もがエルサルバドルのことを話題にしています。なぜならすべてが変わったから」

国民の多くは政府を支持していますが、なりふり構わぬ治安対策の「負の側面」も表面化しています。

ドゥラン・ロドリゲスさん。
ギャングとの関係を疑われた22歳の息子が2023年、刑務所で死亡しました。

息子を刑務所で亡くした ドゥラン・ロドリゲスさん
「息子はギャングのメンバーではありませんでした。息子に会いたいです。でも、もうそれはできません」

ロドリゲスさんによると、ある晩、匿名の通報を受けた警察が突然、家にやってきて息子を逮捕したといいます。

「拳銃を持っているはずだ」と捜索を受けましたが、結局、銃は見つかりませんでした。

しかし、息子はそのまま刑務所で亡くなり、当局からも詳しい説明などはないということです。

ドゥラン・ロドリゲスさん
「ギャングを捕まえるのは素晴らしいことですが、もう止めてもらいたい。多くの母親たちが私と同じように苦しんでいます」

こうした“冤罪”を訴える人がエルサルバドル全土で続出していて、国際社会からも非難の声があがっています。

例外的な「超法規的措置」はいつまで続くのか?政府の責任者は…

地元の専門家は、政府がギャング対策の名のもとに人権侵害を正当化していると指摘します。

セントロアメリカ大学 ガブリエラ・サントス教授
「安全の確保のため人権を犠牲にするのは、本来あってはいけないことです。 『超法規的措置』は一時的なものだったはずですが、もはや恒久的な政策です」

国民の安全を守るためには、一定の人権侵害はやむを得ないのか。
例外的な「超法規的措置」はいつまで続くのか?

私たちは政府の責任者を訪ねました。

ビジャトロ司法公共治安大臣
「私たちエルサルバドル政府は、国内でギャングのメンバーの最後の1人とすべての連続殺人犯を捕まえるまでは現在の”緊急態勢”を維持し続けるつもりだと公言してきました。これ以外の方法はあり得ません」

政府は「法律は順守していく」とする一方、国民からの支持を背景に“ギャング撲滅作戦に変更はない”という方針で、巨大刑務所の受刑者は当分増え続ける見通しです。

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