9月27日に石破茂氏が自民党新総裁に選出された。石破氏が示唆する「解散総選挙」。株価への影響はあるのか。
――きょうのテーマは「選挙の前に株価上昇?『選挙は買い』は本当か」。「選挙は買い」こんな言葉があるのか?
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ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
選挙のたびに言われている。石破氏は新しい総裁に選ばれて「早い時期に国民の審判を仰ぐ」要は「解散総選挙をやる必要がある」みたいなことを示唆している。この「選挙買い」という言葉だが、データで見ていくと、1969年以降、衆議院選挙は17回あったが、解散する前日と、投票の前営業日(投票が大体日曜日なのでその前の金曜日)。解散から投票まで17回中17回上昇している。ほとんど上がらなかったような年もあるが、特に上がったのが2009年。政権交代の年で、アベノミクスが始まった時。いずれにしても、解散となると株価が上がっている。全勝だ。
――石破氏は早期に解散を示唆しているので、週明けはかなり下がって始まるかなと。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
10月1日に石破新政権発足なので、低いところからスタートするという作戦だったら怖い。
なぜ選挙のとき上がるかというと各党とも大型の経済対策とか社会保障制度の充実や明るい未来をとか耳障りのいいことを言う。高速道路を無料にするとか高校授業料無償にするとかいろいろ言う。そういうのがあって上がると思うが、実は理屈ではきちんと説明できるものでもない。そういうものを「経験則・アノマリー」という。この「選挙は買い」というのもアノマリーの一つ。過去17回あって、17回上昇している確度が高いアノマリーの一つだ。
「選挙は買い」は本当か!? 「アノマリー」を検証!
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
投票後の株価も調べてみた。直近8回の総選挙、投票直前の株価を100として、1週間後から12週間後まで日経平均株価の騰落を表した。直近8回のうち、株価が上昇したのが5回、下落は3回と100%ではないが、上昇しやすい。
ただ2009年とか2021年みたいに最初はよかったが、その後結局下がった。2021年は「岸田ショック」とか言われていた。岸田首相が金融所得課税などと言って、マーケットから叩きのめされて引っ込めたということがあった。
――となると今後の石破氏の組閣や発言などが関係するのか。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
結局石破氏がどういう政権運営をするかによって、衆議院選挙で、自民党の議席数が影響される。傾向としては、与党第1党が議席を大きく減らしたときほど株価も下がっている。2009年は典型。傾向としては与党第一党の議席が増えたときほど株価が上がる。
――つまり石破氏で選挙に勝てるかどうか、議席を増やせるかどうかというのも、その先の株価に大きく影響する。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
与党の力が強くなる、議席数が増えるということは政権運営が安定する、政策を前に進めやすくなる。これは投資家にとっては安心材料。当然海外の投資家も日本の政治はしばらく安定すると見る。一時期みたいに、毎年のように総理大臣が交代してるようでは、投資家は日本を見向きもしてくれないが、政治の安定というのが多分背景にあるのだろう。
いつ売るか、買うか!? そのほか注目の「アノマリー」とは!?
――他にもアノマリー=経験則はあるか?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
有名なところで言うと「セル・イン・メイ」。5月に売れという意味の格言と言ってもいい。それから「4月効果」。4月は株価が上がりやすい。次に「1月効果」。年明けは株価が上がる。今年もそうだった。1月、2月猛烈に株価が上がった。こんないくつかのアノマリーがある。
――「セル・イン・メイ」は、なぜ5月に売れなのか?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
明確な根拠とか理由があるわけではないが、夏場にかけて株価は軟調になりやすい。今年も結局6月7月ぐらいが1回ピークつけて、8月に乱高下して夏枯れもある。夏場は夏休みもあり欧米の人もバカンスに行ったりするので、取引をする人が減ると買い手も売り手も減るので夏場は軟調になりやすい。
次に「4月効果」。日本でよく見られる話だが、4月は株価が上がりやすい。理由として言われているのが、新年度に入るので、機関投資家が買いやすくなる3月で決算が終わって、一旦肩の荷が下りる。すると新年度に入るとリスクを取りやすくなる。仮に失敗してもまた、年の後半で取り戻せばいいという考え方ができるので、それで4月は上がりやすいと言われている。
それから「1月効果」。これは日本でもあるが、アメリカでよく言われている。アメリカの人たちは12月で税金の関係が1回区切れる。税金面で新年度入りするので、買いやすいとか損切りした分、節税した分、税金の還付などが入ってくるのでまた株を買う人が増えるとか、いろんなことが言われている。
――3月に一段落する、12月に一段落する。スタートダッシュを切りやすいというのが4月だったり1月だったりで、株価が上がりやすいと。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
そう言われる経験則がある。必ずというわけではない。そんな中、今の時期「ハロウィン効果」というのもアノマリーの一つにある。
ハロウィンのある10月末頃に株を買うと半年後の4月ぐらいに株価が上がっていることが多い。1年のうちいつ買うのがよいかというと、月ごとに毎月月末に買った場合、例えば1月末に買って、それから半年後、1月末から7月末まで、2月末から8月末まで…という計算をするとどれぐらい平均で上昇しているかということを2000年以降の過去23年分の平均でみると、10月末に買うと過去平均的には一番上昇したことがわかった。
――これは何か理由があるのか?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
さきほどの「1月効果」と「4月効果」が(この半年間に)両方入るので、上がりやすいというのもあるあるかもしれない。またそれと全く別で日照時間と関係してるのではないかと言われている。
日本の場合は、冬至が12月にある。冬至を過ぎると日照時間が長くなるので、何となく投資家がポジティブになりやすいという。人間も動物なので。日照時間が長いと浮かれると言われている。
先ほどの「セル・イン・メイ」はその逆で、6月に夏至を迎えてその後日照時間が短くなっていくと何となく人間は沈みがちだなんていうことを言われたりもするが、これもどこまで本当かわからない。あくまで経験則だ。
――いろいろなアノマリーがあると。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
単純に過去23年間の平均の上昇率。回数過去23年間のうち10月末から翌年4月末まで6ヶ月間の騰落が、23回のうち「17勝6敗」と勝率も結構高い。必ずというわけではないが、割と当たりやすいアノマリーだ。ぴったり10月末に買うのがいいとかそういう話ではないが、そのぐらいの時期に株価が下がっていたらちょっと買ってみるのもありかもしれない。
2024年10月末は「Wアノマリー」!?
――17勝6敗でもすごいと思うが、そう思うと先ほどの解散総選挙前後での17回、17勝というのはかなりすごいデータになる。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
「10月に解散して11月に総選挙か?」と言われているが、もしその通りになれば今のハロウィン効果と選挙効果が重なる。そうなったら面白いかもしれない。
――「Wアノマリー」で期待値も高まる。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
それも全てが石破新総理大臣の差配次第。
――――最後に投資のプロから相場の格言。「砂(いさご)長じて巌(いわお)となる。」
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
「一つ一つは小さい砂粒でも、長い年月かけて集まってくるとそれが結果、最終的には大きな岩になる」という意味。積立投資がまさにそうだ。毎月は1万円かもしれないし、決して大金ではないが、長いこと続けることによって、将来大きなお金になる。日本人の気質にも合っていると思う。
例えば、今回みたいに新政権ができたりすると、我々市場関係者やメディアは「目玉政策は何ですか?」とすぐ訊く。今の成熟した日本社会で目玉政策なんてゴロゴロあるはずはなくて、それよりも小石を積み上げるように、着実なものを1個1個やっていく。これが日本人の気質にも合うと思うので、ぜひそういう政権運営をしてほしい。