オーストラリア政府は、猫が希少な野生動物を殺すのを防ぐため、きびしい規制を導入する予定です。飼い猫についても自治体が夜間外出禁止や飼育数の制限などを設けられるようにし、生物多様性の保護をめざします。
野良猫が野生動物を殺す
オーストラリア政府は、野良猫によって野生動物が殺されるのを防ぐため、猫の「夜間外出禁止」や「飼育数の制限」の導入を検討しています。
Tanya Plibersek環境水資源大臣はこのたび、野生動物保護のための55の施策に税金6000万ドル(約57億円)を充てることを発表しました。
オーストラリア内には560万匹の野良猫がいますが、毎年約15億匹の野生哺乳類や鳥類、爬虫類、11億匹の無脊椎動物を殺していることがわかっています。これまで国内で絶滅した野生の哺乳類の3分の2は、猫によって殺されているのです。
政府予算は、ドローンに搭載したサーマル・カメラによる野良猫の調査や、DNAを駆使した追跡技術の開発にも使われる予定です。
飼い猫も希少動物の脅威に
野良猫だけではありません。「年間平均で186匹の野生動物を殺す」といわれる飼い猫についても、規制が行われます。まもなく議会に提出される計画案では、飼える上限数の設定や夜間外出禁止などの規制も検討されているのです。
「政府は貴重な在来種の保護に真剣に取り組んでいます。野良猫は危険で残忍な捕食動物であり、これまで多くの貴重な野生動物を絶滅の危機に追い込んできました。生物の多様性を守るため、AIの活用やコミュニティの強力な支援を受けながら野良猫と戦い続けます。こうした施策は土地の管理者や農家にとっても有用です。自分の土地や家畜を野良猫から守り、在来の野生動物を保護することができるのですから」(同大臣)
環境水資源省の計画案は2023年11月に全豪の各州および準州から原則的に承認されていますが、各州に条例制定を強制することはできません。
一部の地方自治体はすでに飼い猫に対する規制や夜間外出禁止を導入していますが、実際に守られているかどうかを監視する人的・資金的資源がないのが実情なのです。
飼い主に求められる責任
夜間外出禁止規制は「猫が活発に活動する夕暮れから夜明けまでの間、飼い主は屋内に留める義務がある」とするもので、猫が歩き回って狩りをするのを制限することが目的です。
ほかにも世帯あたりの飼育数制限や、猫の飼育を全面的に禁じる地区の設定、去勢手術と登録の義務化も提案されています。各自治体は、政府の規制案をもとに「地域の状況に合うように条例を制定する」こととされています。
すでにビクトリア州議会は、メルボルン東部のノックス全域で猫が出歩くことを1日中禁止しているほか、その他の地区でも特定の時間帯に外出禁止命令を出せるようになりました。
同時にオーストラリア首都特別区(ACT)では「2022年7月以降に生まれた猫はすべて飼い主の自宅敷地内だけで飼わなければならない」とされています。野生動物の生育地域に近い17の郊外地区では、飼い猫を出歩かせることもできません。
西オーストラリア州とニュー サウスウェールズ州でも、猫の飼育に関する規制条例を検討中です。おパース市議会では、24時間の猫外出禁止令の導入が有力になっています。
猫の飼い主には、愛猫の健康と幸せだけでなく、野生動物の保護も視野に入れた責任ある飼育を行うことが求められているようです。
出典:Major change coming to owning a cat in Australia - and why your pet could have a curfew
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