「科学的根拠が乏しく確度低い」南海トラフ地震臨時情報に地震学の権威が学会で痛烈な“ダメ出し” 制度設計の不備を「大震法の“亡霊”」と指摘

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-10-24 09:13
「科学的根拠が乏しく確度低い」南海トラフ地震臨時情報に地震学の権威が学会で痛烈な“ダメ出し” 制度設計の不備を「大震法の“亡霊”」と指摘

今年8月に初めて発表された「南海トラフ地震臨時情報」を地震学の権威が学会で痛烈に批判。科学的根拠と制度設計にいずれも問題があるとして、根本的に見直す必要があると指摘しました。

石橋克彦 神戸大学名誉教授
「あえて批判的な考えを述べさせていただきます。まず、今回の(南海トラフ地震)臨時情報は科学的根拠が乏しく、確度が低いと思います」

発表の冒頭、「南海トラフ地震臨時情報」をこうバッサリ切り捨てたのは、地震学の権威、神戸大学名誉教授の石橋克彦氏です。

石橋氏は今月22日、新潟市で開かれた日本地震学会の秋季大会で、今年8月8日に初めて発表された臨時情報について、4つの観点から問題を指摘しました。

1つ目は、臨時情報が発表されるきっかけとなった日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震は南海トラフ地震の想定震源域の中で最も南西の縁に当たる部分で発生したが、そもそも想定震源域が南西方向に広すぎる可能性がある。

2つ目は、日向灘で起きる地震はマグニチュード7クラスの地震がおよそ30年間隔で繰り返し発生していて、地震の起きるパターンが南海トラフ地震とは異なるのではないか。

3つ目は、巨大地震発生の可能性が平常時と比較して高まったとする根拠に、南海トラフ地震の特性を考慮せず、世界で発生した地震の統計データをそのまま機械的に当てはめている。

4つ目は、日向灘で発生した地震が、想定震源域にどのような影響を与える可能性があるのかが説明されていない。

石橋氏は、臨時情報は科学的根拠が乏しいだけでなく、制度設計にも不備があると指摘しました。

石橋克彦 神戸大学名誉教授
「どうも大震法=大規模地震対策特別措置法の発想を引きずっている感があります」

「大震法」は、東海地震を念頭に、地震の予知が可能との前提で防災対策を定めたり、内閣総理大臣が警戒宣言を発令した場合には、特別な防災対応を求めたりする法律です。

国は2017年に、防災対応の前提を『地震の予知は可能』から『地震の予知は不可能』に転換し、警戒宣言は事実上廃止されましたが、石橋氏は、今も予知を前提とする大震法の「“亡霊”がある」と言います。

石橋克彦 神戸大学名誉教授
「臨時情報体制は、ある種の短期的な地震発生予測みたいなものが可能だという前提でですね、何かのトリガーというかスイッチが入ると防災対応が始まるという、その大きな図式は(大震法を)踏襲しているわけです」

大震法の発想が残っているとする現状について、石橋氏は、南海トラフ巨大地震は「不意打ちで起きる可能性が高い」と強調し、「発生の予測が可能だ」との誤解が広がるおそれに懸念を示すとともに、地震は突然起きるとの前提で「社会を地震に対して強くすることが根本的に大事だ」と訴えました。

石橋克彦 神戸大学名誉教授
「(臨時情報の)科学的根拠と制度設計、これは車の両輪で非常に大事なものだけれども、今回、残念ながら両方ともに問題があったということです」

地震学の権威が“ダメ出し”した初めての「南海トラフ地震臨時情報」の発表。その課題と教訓を次回以降にどう生かすかが問われています。

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