10月27日に投開票日を迎えた衆議院選挙。栃木県は前回の衆院選で5つの小選挙区のうち、4つの選挙区で自民党が勝利した“保守王国”だ。ところが今回は、2区の立憲・福田昭夫氏に加えて、4区でも立憲の若手・藤岡隆雄氏が自民党の佐藤勉氏を制した。佐藤氏に5度挑んでつかんだ当選。「この厳しい戦い、小選挙区で押し上げていただきたい! 」小選挙区での当選にこだわった藤岡氏が勝利をつかむまでの、短いながらに白熱した選挙戦を追った。
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栃木4区 選挙戦の構図は?
栃木4区に立候補したのは、自民党・佐藤勉氏、立憲民主党・藤岡隆雄氏、共産党・川上均氏の3人だ。
自民・佐藤氏はこれまで、栃木4区で9回当選。党総務会長や総務大臣などを歴任してきた。一時は不出馬も報じられたが、「後継が見つからなかった」として再挑戦を表明した。
一方、立憲・藤岡氏は、金融庁元職員の47歳。佐藤氏に挑むのは今回で5回目だ。前回の衆院選では、佐藤氏との一騎打ちで5000票弱及ばず、比例復活で初当選。それゆえ、今回は小選挙区当選への思いは強い。藤岡氏を支援する県議は「比例復活で当選した人と、小選挙区で勝った人だとやっぱり見る目が違う。小選挙区で頑張りたい」と語った。
当初は二人の一騎打ちかと思われたが、共産・川上氏が出馬を表明。野党が分裂する形になり、藤岡陣営は「厳しい戦いになる」と険しい顔をみせた。
47歳の藤岡氏「若い力が必要」 72歳の佐藤氏「私が中心となって政治改革を」
藤岡氏は街頭での演説を重視し、各地へ転戦。ある日の下野市での演説では「政権交代こそ、最大の政治改革。若い力が必要だ」と強く訴え、有権者と目を合わせ握手をして回った。そのうちの一人は「世代交代しないと。若い世代の考え方にならないとダメ 」と話した。
一方の佐藤氏は、小山市で行われた演説の中で「私が中心となって政治改革をしたい。疑念をもたれるようなことのない政治資金のあり方を作っていく」と訴えた。演説を聞いていた人は「小山は栃木の第二の都市だからね。自民党じゃないと」と力説する。
強固な地盤がある佐藤氏への「挑戦者」としての立場を崩さない藤岡氏であったが、連日報じられる各社の情勢調査では「藤岡氏がややリード」「佐藤氏が猛追」といった記述が目立った。
ところが、藤岡陣営に話を聞くと意外にも笑顔は少ない。というのも「前回の衆院選でも『藤岡リード』と書かれていたが、結局佐藤さんに負けてしまった」という苦い記憶があるからだという。前回の“ぬか喜び”が刷り込まれているため、「最後まで油断しない」と陣営関係者は口をそろえた。
一方、佐藤氏の後援会幹部は「後援会に入っている人たちが高齢化で抜けて、若い人が入ってこない」と選挙活動がなかなかスムーズに進まない現状を吐露。「“比例で復活してもらうのが最後の願い”と言う人が徐々に増えている」と声を曇らせた。
藤岡陣営「2000万円問題が追い風に」
開票の結果、藤岡氏は佐藤氏に2万票以上の差をつけ当選した。大票田の小山市で佐藤氏に大差をつけたうえ、真岡市でも約4ポイントの差をつけた。共産党候補の出馬で、野党票が割れることが懸念されたが、得票率は53.4%と、前回の48.9%と比較しても支持を伸ばしたことがわかる。
【開票結果】
立憲・藤岡氏 9万6573票
自民・佐藤氏 7万5260票
共産・川上氏 8985票
藤岡陣営の幹部は「本人の頑張りと“風”じゃないですか。2000万円問題が追い風になった」と勝因を分析した。
JNNが行った投票当日の出口調査によると、藤岡氏は立憲民主党支持層を固めたうえ、無党派層、そして自民党支持層の一部からも票を得ている。政治とカネ問題で、自民党への批判票の受け皿となった面もあるようだ。
藤岡陣営の幹部は「本人はすごく謙虚。万歳三唱の掛け声で、みんなに頭を下げていた。あんな男はいないです」と期待を語る。ただ、野党への追い風がいつも吹くわけではない。強い保守層のある地元にどこまで根付くことが出来るか、国会などでの今後の活動が問われる。