世間の噂や評判に関する表現の1つ、それが「人の口に戸は立てられぬ」です。
しかし、この言葉の意味を知らない人もいるかもしれません。
そこでこの記事では「人の口に戸は立てられぬ」の意味はもちろん、成り立ちなどについても解説します。
「人の口に戸は立てられぬ」とは
ここでは「人の口に戸は立てられぬ」の意味を解説します。
「人の口に戸は立てられぬ」の意味
「人の口に戸は立てられぬ」は、世間の噂や評判は止めることができないことを意味する慣用句です。
一度世間に広まった噂や評判は防ぎきることができません。
むしろ、加速度的に話は広まっていずれは誰もがあることないこと知ってしまうでしょう。
そうした人の噂や評判を止めることはできないことを表現したのが「人の口に戸は立てられぬ」です。
つまり、世間の噂や評判を完全にコントロールすることは不可能であることを意味する言葉となります。
現に噂や評判はいつどこで誰が広めるかわかりません。
そして、それを赤の他人が信じるかどうかも自分ではどうしようもありません。
そういった噂・評判が制御不可能であることを意味する言葉、それが「人の口に戸は立てられぬ」となります。
「人の口に戸は立てられぬ」の用い方・例文
「人の口に戸は立てられぬ」は噂や評判など、情報が瞬く間に広まってしまうような場面で使用します。
・例文1:人の口に戸は立てられぬ、ちょっと世間話しただけなのに近所中に知られてしまうのは時間の問題である。
・例文2:人の口に戸は立てられぬ、職場恋愛をひた隠しにしたところで気が付けばみんなに知られていることだろう。
・例文3:人の口に戸は立てられぬ、あの芸能人の不祥事は事務所の意図とは裏腹に瞬く間に広まってしまった。
このように人の噂や評判は自分ではどうにもできないことを指して使用します。
もしくは意図せぬ場面で情報が出回ってしまうような場面でも使用されます。
「人の口に戸は立てられぬ」は「人の噂や評判を防ぐ術などない」という意図を込めて使用するのが特徴です。
だからこそ「口には気を付けるべき」「噂や評判を気にしても仕方がない」という戒めの意図もあると覚えておかねばなりません。
「人の口に戸は立てられぬ」の成り立ち
ここからは「人の口に戸は立てられぬ」の成り立ちを解説します。
由来は「戸」の構造から
「人の口に戸は立てられぬ」は「戸」の構造から来ています。
ここでの「戸を立てる」は障子や襖を閉めることを意味します。
昔は地面に対して垂直に立てるものを「戸」と呼んでいました。
そのため「戸」を立てればある程度の会話は遮断できたとされます。
その後、引き戸が普及してからも言葉だけは残り「戸を立てる=障子や襖を閉める」という意味で浸透・定着したとされています。
転じて、人の口を塞ぐことができないことを「戸」に見立てて「人の口に戸は立てられぬ」と表現するようになったのだとか。
「人の口に戸は立てられぬ」の類義語
ここからは「人の口に戸は立てられぬ」の類義語を紹介します。
好事門を出でず悪事千里を行く
「好事門を出でず悪事千里を行く」は良い噂・評判はなかなか世間に広まるものではないが、悪い噂・評判はあっという間に広まることを意味する言葉です。
実際に良い行いは世間にはなかなか広まりません。
努力したところで認められる人はほとんどいません。
しかし、悪い行いは世間に瞬く間に広まってしまいます。
それどころかやってもいないことまで広まってしまいます。
その点が「人の口に戸は立てられぬ」と似ているのではないでしょうか。
ちなみに、この言葉は古代中国の宋の時代、孫光憲が書いた『北夢瑣言』から来ているとされています。
世の取り沙汰は人に言わせよ
「世の取り沙汰は人に言わせよ」は世間の人は信じるに値しない話ほど好むからこそ、言いたい者には言わせておけばいいという意味の言葉です。
仮に世間の噂や評判を止めようとしても止めることはできません。
むしろ、変な情報ほど自分の知らないところで広まっているものです。
その点が「人の口に戸は立てられぬ」と通ずるものがあるでしょう。
なお、この言葉は『毛吹草』などでの出典が見られます。
まとめ
「人の口に戸は立てられぬ」は人の噂や評判というのは制御することなどできないという意味のことわざです。
慣用句としては人の噂や評判を気にしても仕方ないという意味合いで使用されることもあります。
どちらにせよ、人が勝手に流布する噂や評判というのはコントロールなどできません。
だからこそ、他人にどう思われるかなど気にせず行動することが求められているのかもしれません。
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