再選後はじめて定例会見に臨んだ兵庫県の斎藤元彦知事。公職選挙法違反の疑惑などに対し、改めて「違反するようなことなはない」と答えました。
斎藤知事 法的に問題は? 知事「違反していない」
井上貴博キャスター:
兵庫県知事選でPR会社が斎藤元彦知事の広報全般を担ったとするインターネット記事を公開し、公職選挙法違反の指摘が出ている問題で、斎藤知事の代理人弁護士が27日に記者会見を行い「事実ではない部分の記載があった」と述べました。
法的に問題はないのでしょうか。 越 直美弁護士に聞きました。
【公職選挙法のルール】
<報酬あり>
・事務員
・“ウグイス嬢”(車上運動員)
・手話通訳者
※SNSの運用は認められていない
<公費負担>
・ポスター・ビラ制作
「選挙運動の企画立案など業者が主体的に行うものに報酬を支払うと買収罪の可能性がある」ということです。
この件についてPR会社、斎藤知事双方で食い違いが生じています。
【双方の主張 食い違い】
<PR会社社長のコラム>
・依頼内容:「広報全般を任された」
・SNS:私が監修者として少数精鋭のチームで運用
・選挙期間中:「広報というお仕事」
<斎藤知事側>
・依頼内容:ポスター制作など依頼
・SNS:斎藤事務所が主体で運用
・選挙期間中:ボランティア
斎藤知事は27日午後3時半すぎの定例会見で「公職選挙法に違反はしていない認識。(PR会社社長のコラムは)事前に一切知らされていなかった。発信されたあとに知った」と述べました。
ホラン千秋キャスター:
PR会社からの詳細な説明がまだ明らかになっていないため、難しい部分があると思いますが、どのようなご見解をお持ちですか?
元大津市長 越 直美 弁護士:
私自身は買収には当たらないと思います。斎藤知事の主張では「ポスター制作を依頼した」ということですが、こちらは法的に認められています。また選挙期間中の応援もボランティア、いわゆる無償なので買収にはあたりません。
もう一つ、客観的な状況として斎藤知事側がPR会社に支払ったお金が71万円であること。この金額はポスター制作以外にビラ制作なども頼んでいるので、通常で考えると相当な範囲の額です。例えばSNSの運用も含めればもっと高くなるはずなので、客観的に見ても斎藤知事の主張は正しいのではないかと思います。
ホランキャスター:
斎藤知事の代理人弁護士が「事実ではない部分の記載があった」と話しています。協力してくれた方たちの発信を投稿する前に確認したいなという気持ちはあると思うのですがいかがでしょうか。
元大津市長 越 直美 弁護士:
斎藤知事の主張が事実であれば、PR会社は『事実通り発信していれば、おそらく問題がなかったこと』であるのに、なぜ買収に見えてしまうような発信をしてしまったのか。契約関係があるので、通常はその中で契約の依頼者に確認することがあると思うのですが…。
斎藤知事が訴える可能性は?
オンライン直売所「食べチョク」秋元里奈 代表:
守秘義務があるはずなのに、PR会社のコラムは驚く内容でした。斎藤知事の主張が正しいと仮定すると、事実ではないことを発信されたということで兵庫県ないしは斎藤知事側で訴えることも可能性としてあるのではないでしょうか。
元大津市長 越 直美 弁護士:
法律的に斎藤知事が訴えることはできると思いますが、まずは契約当事者間でどういう見解だったのか、お互いに話し合うことになるでしょう。
オンライン直売所「食べチョク」秋元里奈 代表:
斎藤知事側に強い姿勢が見受けられない。もう少し強く出てもいいと感じます。そもそもなぜ食い違っているのか疑問ですね。
井上キャスター:
一般論ですが、お互い身を守るために契約書があってしかるべきだと思うのですが、それを口頭での契約にしたのはあまりにもリスク管理が甘いと思いました。
元大津市長 越 直美 弁護士:
おっしゃる通りです。公職選挙法は複雑な法律です。お金の使い方を間違えると法律違反になることもあるので、きちんとした契約書を結ぶべきです。
ホランキャスター:
ポスター制作など、依頼する企業を選定する上で一番気にする部分はどこにありますか?
元大津市長 越 直美 弁護士:
やはりきちんと行ってくれる会社ですね。あとはもう一つ、今回のように非常に大きな選挙の場合、選挙対策本部などが選ぶことがありますので、候補者は(どの会社にするか)あまり知らないということもあります。
公職選挙法はとても複雑な法律 知識がなかった?PR会社
井上キャスター:
選挙コンサルタント小野五月さんによりますと「PR会社の代表は広報の専門家だが、“選挙のプロ”ではない可能性がある。公職選挙法の知識が少なく、両者間で認識のズレが生じてしまったのでは」といいます。
元大津市長 越 直美 弁護士:
公職選挙法はとても複雑な法律です。少しでも言い方を間違えると、今回のように買収じゃないかと言われますので、選挙をやる上では必ず『公職選挙法』はおさえなければなりません。
オンライン直売所「食べチョク」秋元里奈 代表:
PR会社の社員が選挙活動で動いていた場合はいかがでしょうか。実際に社員が選挙活動に行っている写真が残っています。悪気なく社員に「(選挙活動に)来てくれる?」と言うのは問題ありますか?
元大津市長 越 直美 弁護士:
すごく複雑な「寄付」という問題があるのですが、寄付といっても『公職選挙法上の特別な利害がある人の寄付』と、『政治資金規正法上の法人が寄付してはいけない』というのがあります。この前提があった上で、まずは社員の人に「選挙活動に行ってね」ということで、社員が休みのとき、または有休を取得して行くのは「ボランティア」なので問題はありません。
一方で、社員が給料を支払ってもらい「仕事」として行く場合、公職選挙法上は『単なる契約ではなく、特別の利益を伴う契約』でないといけません。しかもそれは現在締結している契約でないといけません。今回は現在締結している契約がおそらくないのではないか。
過去の契約がもしあったとしても、例えば委員に選任されても、それは1回1万円と安い。そうすると公職選挙法上の寄付にはあたりません。さらに政治資金規正法上の寄付も、社員がボランティアである限りはあたりません。
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<プロフィール>
越直美 さん
弁護士 元大津市長
女性役員を紹介するOnBoard株式会社CEO
秋元里奈 さん
オンライン直売所「食べチョク」代表、33歳、神奈川の農家に生まれる。