噂にまつわることわざ、それが「噂をすれば影が差す」です。
しかし、この言葉はどのような状況を意味するのでしょうか。
この記事では「噂をすれば影が差す」がどのような言葉なのかを解説します。
「噂をすれば影が差す」とは
ここでは「噂をすれば影が差す」の意味を解説します。
「噂をすれば影が差す」の意味
「噂をすれば影が差す」は、ある人の噂をしていると不思議とその当人がそこへ来るものだということを例えた言葉です。
ある職場で「〇〇部長って事務員の〇〇さんとできてるらしいよ」などと噂していると、不思議とその部長本人もしくは事務員本人がそこへ来るものです。
本人が直接来なくとも噂はいずれ本人の耳に入ってしまうことでしょう。
そういった背景から「噂をすれば影が差す」には「他人の噂には注意しよう」という戒めの意味も込められています。
「噂をすれば影が差す」の用い方・例文
「噂をすれば影が差す」はある人の噂をしていたら当人が登場した状況で使用する慣用句となります。
・例文1:上司の噂話をしていたところまさか当の本人がやってきた。これが「噂をすれば影が差す」というやつか。
・例文2:内緒話であっても「噂をすれば影が差す」というように、いつどこから当人に知られるかわからないものである。
・例文3:「噂をすれば影が差す」というように内緒話も本人の耳に入ることがあるから他人の噂話はほどほどにしておかねばならない。
このように噂をしていたら本人がやってくる場面で使用します。
ただし、内緒話でも当人の耳に入ることがあるから気を付けねばならないという戒めの意味で使用されることもあります。
「噂をすれば」「噂をすれば影」と略されることもある
「噂をすれば影が差す」は「噂をすれば」「噂をすれば影」と略して使用されることもあります。
現代の会話では噂している本人たちが当人の登場を前にして「噂をすれば何とらやら……」というように使用します。
むしろ、会話においては「噂をすれば」と略されることがほとんどで「噂をすれば影」まで口にすることは稀です。
「噂をすれば影が差す」の由来
ここからは「噂をすれば影が差す」の由来を解説します。
「噂をすれば影が差す」の成り立ち
「噂をすれば影が差す」は江戸時代後期の戯作者である十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』などで使用されている言葉から来ているそうです。
十返舎一九は江戸時代後期に活躍した戯作者で、偽作は書籍など文学を中心とした読み物のことを意味します。
彼は大の歌舞伎好きで社会のことを面白おかしく書くのが好きだったとか。
その作品の中で生まれたのが「噂をすれば影が差す」という言葉とのことです。
ちなみに、ここでいう「影」とは「人影」のことを意味しています。
人の噂をしているとその人が現れる……だからこそ噂話もほどほどにという意味が込められています。
「噂をすれば影が差す」の類義語
ここからは「噂をすれば影が差す」の類義語を紹介します。
噂をすれば曹操
「噂をすれば影が差す」の類義語は「噂をすれば曹操」です。
これはいうなれば中国版の「噂をすれば影が差す」となります。
三国時代、曹操の話をするとちょうど都合良く曹操が現れたため、人々は「噂をすれば曹操」と表現したとされています。
それくらい曹操は人々の噂に敏感な人物だったのだとか。
「曹操」とはこんな人物
曹操は後漢末期の武将・政治家で三国時代「魏」の事実上の建国者です。
『三国志演義』に代表される三国志の言い伝えなどにおいて「冷酷な悪役」として語り継がれてきた人物でもあります。
当時の曹操は情報収集力に優れていたとされ、ひとたび悪口を噂すればたちまち曹操が現れて粛清されると恐れられていました。
転じて「噂をすれば曹操(が現れるから噂話はほどほどに)」という表現が広まったとされています。
現代風に言うならば「曹操=怖い上司」と置き換えるとわかりやすいのではないでしょうか。
まとめ
「噂をすれば影が差す」はある人の噂をしているとその本人が現れるものだということを例えたことわざです。
実際に噂話をしていると張本人が現れることも度々あります。
そうでなくとも噂というのは人々に広まり、いつしか本人の耳に入ってしまうものです。
だからこそ「噂をすれば影が差す」には「噂もほどほどに」という意味が込められています。
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