大統領の逮捕はあるのでしょうか?「非常戒厳」をめぐり、韓国の法務省は尹大統領を出国禁止としました。あの夜、兵士の銃をつかみ国会進入を阻止した女性議員が取材に応じ、当時の様子を語りました。
【写真を見る】韓国「非常戒厳」当日、国会前でなにが起きていたのか
“弾劾案”を再提出へ 与党への怒りも…9日も韓国・国会前で集会
9日も多くの人が詰めかけた韓国・国会前の集会。「非常戒厳」から1週間近くが経っても、尹錫悦大統領に対する国民の怒りはおさまる気配がありません。
デモの参加者
「これ以上国民が権力によって不安を抱かないよう、早く大統領には権力から遠ざかってほしいです」
デモの参加者
「(与党議員は)選挙では自分たちに投票するよう促しながら、弾劾訴追案の採決には参加しなかった。話になりません」
喜入友浩キャスター
「国会前の集会が終わり、そのまま与党の本部に向かうということで、大行進、大行列となっています」
中には「与党『国民の力』を解体せよ」というプラカードを掲げる人も…
この週末、国会では大統領の弾劾訴追案の採決が行われましたが、与党議員が続々と退席し、結局、弾劾訴追案は廃案となりました。
議長
「(弾劾訴追案は)不成立となりました」
これに対し野党は成立するまで毎週、弾劾訴追案を提出する方針を決めるなど、徹底抗戦の構えです。
「非常戒厳」が宣言された夜の状況も明らかになってきました。
兵士の銃つかみ…非常戒厳の夜に何が 指揮官「隊員は利用された」
9日、news23の取材に応じたのは野党「共に民主党」のアン・グィリョン報道官。
「非常戒厳」の直後、国会前で兵士の銃をつかみ応戦した女性です。
――銃口をつかむシーンがあったが、どんな思いであの行動を?
アン・グィリョン報道官
「兵士が私の腕をつかんだので、とっさに振り切りました。その後、自分が押し出されてはいけないと思って兵士の体と銃口をつかんだんです。国会への侵入を阻止しなければならないという一心でした」
兵士らに押し出されそうになり、とっさに銃口をつかんだと話します。
アン・グィリョン報道官
「とても混沌とした状況で『押すな』『入ってくるな』という声が飛び交っていました」
――兵士が積極的に言葉を発している様子は
アン・グィリョン報道官
「思い出せるのは、次々と兵士が国会内に入ろうとしていたことくらいです」
一方、国会に突入した特殊部隊の指揮官は…
韓国陸軍707特殊任務団 キム・ヒョンテ団長
「(隊員たちは)金龍顕前国防相に利用された被害者です。隊員たちに罪はありません」
国会突入は「非常戒厳」の宣言を尹大統領に進言したとされている、当時の国防相・金龍顕氏の指示で従わざるを得なかったと訴えました。
アン・グィリョン報道官
「しばらく経ってから『兵士らが思ったより消極的だった』という記事を読みました。でも当時は恐怖しかありませんでした。なぜヘリの音が聞こえ、降りてきた軍が国会に侵入を試みようとするのか。日常生活の中では想像もしていませんでした」
アン報道官は「非常戒厳」によって市民の日常を奪おうとした大統領の責任は重いと訴えます。
アン・グィリョン報道官
「軍・警察をここまで混乱させたのは尹大統領です。絶対に弾劾しなければならないと感じています」
逮捕は?尹大統領出国禁止に 内乱罪で捜査
韓国の捜査機関「高位公職者犯罪捜査庁」は、内乱罪などの疑いで尹大統領の捜査を始めていて、9日、法務省は大統領を出国禁止にしたことを明らかにしました。
また金龍顕前国防相は現在、検察の特別捜査本部が身柄を拘束しており、聯合ニュースは、“近く金氏の逮捕令状が請求される”と報じています。
尹大統領の逮捕はあるのでしょうか。専門家は…
神戸大学 木村幹教授
「理屈上、まず前国防相に対する捜査が行われ、その容疑が固まった段階で、次に大統領の方に移るという形になる。これが順番にメディアによって報道されジリジリと圧力になっていくんだろうと。(大統領を)守るのは与党だが、守る手段はそんなにないんだろうと」