齊藤工×竹林亮 劇場公開のみの映画「大きな家」 「普通」が重なり合って、自分の物語になっていく感覚を感じてほしい

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2024-12-19 21:02
齊藤工×竹林亮 劇場公開のみの映画「大きな家」 「普通」が重なり合って、自分の物語になっていく感覚を感じてほしい

ある児童養護施設で暮らす子どもたちの日常を描いたドキュメンタリー映画『大きな家』が、12月20日(金)から全国で順次公開されます。同作は、施設で暮らす小学生から高校生までの10人の子どもたちの「日常」を長い期間をかけて丁寧に記録した作品です。

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企画・プロデュースを手がけた齊藤工さん(俳優・斎藤工さん)と「14歳の栞」の監督としても知られる竹林亮監督が「ひるおび」のインタビューに応じ、作品に込めた思いなどを語りました。

――「大きな家」を企画したきっかけを教えてください

齊藤 僕がたまたま1日限りのイベントで児童養護施設を訪れた時に、帰りがけに ある男の子から、「ピアノを今度聞かせてあげるよ」って言われたんですけど、「今度…」って思ってしまって、そういう表情をしてしまったんですよ… そしたら、その子が何とも言えない寂しげというか、すごく「乾いた感じ」に一瞬でなった気がして、それが気になって、そこから行けるときは施設を訪れるようになったんです。

齊藤 なんか、彼らもやっぱり「また来た」「また来た」っていう度に、話してくれる物語があったりして、そんな最中、竹林監督の「14歳の栞」という、劇場だけで上映する、被写体を守りながら上映していくドキュメンタリーを見て、点と点が繋がって、監督に ご相談したというのが始まりです。

――最初に、齊藤工さんからオファーがきた時は どんな気持ちでしたか

竹林 
そうですね、「14歳の栞」の公開直後に齊藤さんに声をかけて頂いたので、やはりドキュメンタリーって結構、本当に1年2年と時間がすごくかかるものなので、「これはすごいことになるな」と責任の重さを感じつつ、自分も、齊藤さんのことを以前からの付き合いで、すごく尊敬していたので、ご縁もあるので、ぜひ児童養護施設に お話を聞きに行きたいな…と思って、実際に行って、そこで職員の方々が本当に子どもたちの人生に向き合って働かれていて、子どもたちも、結構 声をかけてくれたりとかして、その様子を見て、ぜひカメラで日常を撮らせてもらいたいなと… その時に思ったという感じでした。

――ドキュメンタリーを撮る上で大切にしていることは

竹林 僕が今、すごく大事だなって思うドキュメンタリーの作り方っていうのは やっぱり被写体の方のことをすごく好きになって、本当に応援したいなという気持ちで撮って、映像を観た人が「その人」を好きになってくれるようなものを作りたいなと個人的には思いながらやっています。

――「被写体ファースト」という点が、監督の作品らしいなと思ったんですが、齊藤さんは そういった所も含めて、竹林監督にお願いしたい という事だったのでしょうか

齊藤 そうですね、僕もかつて監督の「被写体」だったこともありまして、マダガスカルとかパラグアイとか、カンボジアを一緒に巡った仲なんですけど、竹林監督は、その時もですが、今回も、カメラを回していない時に意味を持つ監督さんで、何度も何度も施設にカメラを持たずに訪れて、自分たちも自分のことを話す、というような…

齊藤 下手したら、カメラって凶器にもなりうるもので、(竹林監督は)そういうスタンスではなく、被写体を第一にして、丁寧に撮影を進めていく方です。子どもたちって すごくビビッドなので、大人の思惑とかにすごく敏感なんですよね。だけど、監督のご覧のような心根というか、優しさ、寄り添い方というものに、子どもたちが だんだん自分の言葉で、自分の物語を、自ら話してくれるようになった。施設との出会いから数えると、3年…足かけ4年ぐらいの制作期間ではありました。

齊藤 かかるべくしてかかった時間ではあるんですけど、竹林さんのチームじゃなかったら、多分撮れなかった心が、たくさん詰まっている作品になったな、と思っています。

――カメラで撮影を始めたのは、どのくらい経ってからですか

竹林 そうですね…齊藤さんが施設の方々と元々お付き合いがあって、行かれていて、齊藤さんに誘っていただいてから1年ぐらいは一緒に… ハロウィンのタイミングとかに ちょっと行ったりとかしながら、お話を聞く… そして、みんなに「いつか、みんなが主人公の映画を撮りたいんだよね」みたいな話をして、顔を覚えてもらって…

竹林 それで1年ぐらい経ってから、ゆっくり徐々に1ヶ月に2、3日撮影に行く… っていうのを半年ぐらい続けて、その後、月の半分ぐらいは行かせてもらう… というのを半年ぐらい続けて… という感じで、撮影の濃度もグラデーションがありました。

齊藤 機材とか、幼い子もいたので、みんな興味を持って、録音機材やカメラを、子どもたちがいじって撮影したり、壊れる直前ぐらいまで(笑)興味を持っていました。やっぱりカメラが入ることで、日常生活に違和感は、当然みなさん感じていらっしゃって… 職員の方たちも そうなんですが、それが徐々に馴染んできた頃に、いろんな対話を監督が始めてくださったのかなと… そんなグラデーションでした。

――カメラはどのくらいの大きさだった

竹林 カメラは結構大きくて、映画用のカメラを使っていて、すごく綺麗に撮れてデータもめちゃくちゃ重いんですけど、マイクも、大きいマイクを持っていたので、子どもたちからすると、相当、違和感があったと思います。

竹林 撮影が進むにつれて、だんだん機材の操作なども覚えて、録画のレックボタンを(ふざけて)消してきたりとか、知らない間に自分たちで撮影して、素材を撮ってくれたりとか、みんなすごい機材を使えるようになっていたのが面白かったです。

齊藤 職業体験的なことも、結果的に振り返るとあって、「映像の世界」に興味を持った子どもたちも何人かいました。実際にその先の進路とかを監督に相談したりする子とか、監督に自分で書いた脚本を読んでもらったりする子とかもいました。

齊藤 今回、映画の撮影部隊といっても4人からMAXでも6人なんですけど、子どもたちにとっては「働く大人たちと接していた期間」でもあって、カメラの前に立つだけじゃなくて、「映像を作る職業」って、どういうものなんだろう?いうことを考えるきっかけになって、彼らの未来に、実は既にすごく影響がある作品なのかな?というふうにも思っています。

――齊藤さんは、一緒に撮影する部隊の中に入られていたんですか

齊藤 施設にはテレビもあるので、ちょっと職業的に(俳優としての)僕は作品にとって「ノイズ」になりかねないという事は当初から思っていたので、僕は主に施設の職員の方たち、大人たちと、どういう作品にしていくか、いつぐらいにどういう形で世に出すか、どういう部分をケアしながら、アウトプットしていくか、というような事を説明に行く、そういう役割でした。

――こういった施設を撮影するのは、ハードルが高い上に、撮影される子どもたちへの向き合い方も難しいと思いますが、どのように撮影を進めたのでしょうか

竹林 子ども自身の意思を第一に、インタビューさせてくれる子どもたちから、話を聞いていきました。最初は、撮影に興味を持っている子どもが、どんどん近づいてきてくれた…という感じです。

竹林 撮影していると、子どもたちも、最終的にどういう映画になるのか、みんな気になっていて、「何とか、みんなにとって良い影響があるように…ということだけを、僕たちも願って作っているよ」という事を伝えながら、「何のために撮っているのか」という事を、必ず共有しながら、それを必ず守りながら、子どもたちとコミュニケーションしていました。

――「出演者のプライバシーを守る」という使命もあると思うが

齊藤 そうですね。そういう意味では僕らとしても、上映後も、ずっと被写体を守っていくという思いです。そのあたり、当初からお互い懸念しているものは一緒だと思います。ただ、僕が今回「大きな家」を企画するきっかけの一つが、施設にいる子どもたちが、何か公のものになるときに、必ず目線が入ったりモザイクが入ったりすることへの違和感なんです。

齊藤 もちろんそれは、彼ら彼女たちを「守るため」でもあるんですが、ある時に職員の方から「同時に、それを見た子どもたちが、みんながみんな、『守ってもらっている』と思うわけではなく、『自分は自分の存在を ぼかされる存在なんだ』と思っている子も、中にはいるんです」と伺ったんです。

齊藤 だから映画になるということに、(プライバシーに対する懸念だけでなく)すごく前向きな意見も多かったですし、実際、劇中の子どもたちもすごく輝いてて、「知ってほしい」、「観てほしい」という子どもたちの思いが、みんながみんな、そうではないですけれど、今回の作品の「光」となってくれていたので、これは必然だったのかもしれないと 今は思っています。

――映画のみの公開で、DVD化等をしない…となると、プロデューサーとしては、興行収入的な問題もあると思うが

齊藤 そうですね、数ある作品の中で こういう作品があってもいいんじゃないかな…と。「14歳の栞」という作品があったからこそ生まれた作品ではあるんですが、なんていうんですかね…作り手の「純度」みたいな…「思いやり」が詰まった作品。

齊藤 「思いやり」って、やっぱりアウトプットの時に 映画だとすごく出るんですよね。ただただ公開して終わり…じゃなくて、「手渡し」のように、時間が経っても、賞味期限を設けずに「手渡し」のように届けていく映画って、実はたくさんあるんですよ。フィクション・ノンフィクション問わず… この作品は、「手渡し」のように届けていく。その分、劇場さんと観客の方に協力してもらって、一緒にシェルターになって、この映画を育てていく守っていく、より参加型の劇場映画。 

齊藤 この配信全盛の時代に「情報のシェルター」になるのが、実は映画館なんだ…。というふうに新たな劇場の意味合いも含めて、この作品がまだ見ぬ作品の、一つの目印になったら良いなと思っています。

齊藤 やっぱり僕自身も最初、児童養護施設という存在に対して、情報で外枠だけを固めて、そういう場所があって、そういう施設で生活している子どもたちがいる。…で次に行っちゃっていたんですよ。一歩踏み込まず…。

齊藤 ただ、一歩踏み込んでみて、こういった形で彼らと接してみて、僕らが思う「普通」と、施設の中で思う「普通」というものの“差”を感じましたし、何かその漠然とした「普通」というものが、この作品を通じて「重なっていく部分がある」ということが、この作品に教えられる一番のことだなと思っています。バイアスや圧力みたいなものが無い純度で作ったものなんですね。

齊藤 だから本当に…塩加減としては非常に味付けが濃いものではないので、映画館で ただただ「自分の普通」と、「観ている人の普通」と、この「大きな家の中の普通」というものが、合わさって、自分の物語になっていってくれたら、彼ら彼女たちが、喜ぶんじゃないかな…と思います。

齊藤 あと、年代別に描かれている形になっているんですけど、ここは1人の人格の成長譚のように思えたんですよね。だから、もちろん個人差はあるけど、年代によって、施設にいた時間によって、その施設への思い… 他人なのか、家族なのか、その間なのか、っていうことが どんどんグラデーションになっていくような感覚を受けたので、そんな(自分の中でいま考えている)「こうだろう」という施設での「当たり前の日常」みたいなものを、ぜひ映画館で体験していただけたら、作った甲斐があるのかなと思っています。

【担当:芸能情報ステーション】

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