JNNのカメラが捉えた、43歳の男を確保の様子。北九州市のファストフード店で中学生が殺傷された事件で、19日、現場の近くに住む男が逮捕されました。容疑者の自宅周辺では、容疑者が大声を出す姿がたびたび目撃されていました。
急転直下で犯人逮捕 防犯カメラが決め手
中学生2人が刺された事件は発生から5日、急展開を迎えました。
JNNが独自に捉えた、警察が容疑者を確保する様子からは、捜査員に連れられ、短髪の男が自宅から出て来るのがわかります。
殺人未遂の疑いで逮捕された無職の平原政徳容疑者(43)です。
福岡県警が行った記者会見では…
福岡県警小倉南署 持丸宗徳署長
「先ほど被疑者を殺人未遂の疑いで逮捕しました。殺意を持って店内に居合わせたAさん(男子生徒)当時15歳の腰部を所携の刃物で突き刺したが、殺害の目的を遂げなかったものであります」
事件をめぐっては、14日夜、北九州市のファストフード店で、中学3年の中島咲彩さん(15)が腹部を刺されて亡くなり、一緒にいた男子生徒も腰を刺されて、深い傷を負いました。
平原容疑者は、この男子生徒に対する殺人未遂の疑いで逮捕されました。
福岡県警捜査1課 橋本浩輔課長
「(容疑を)認めています。具体的な文言としては『確かにその行為をしました』と。決め手は防犯カメラ、県民・市民から提供いただいたドライブレコーダー(合わせて)百数十。この5日間で精査したので、犯人に結び付いた主たる捜査は防犯カメラ」
警察の地道な捜査で、事件の詳細がわかってきました。
塾帰りの中島さんと男子生徒は、午後8時10分ごろ、勉強するため店に入り、入り口近くの国道沿いの席に座りました。
同じ頃、平原容疑者は運転していた黒のワンボックスカーを店の駐車場に止め、車内で待機。
この15分後、平原容疑者は入店し、4人の列の最後尾に並んでいた中島さんと男子生徒を次々と無言で刺して逃げました。
入店から出るまでは十数秒。店の従業員は当時6人いましたが、犯行に気づかなかったといいます。
記者
「犯行のあと、平原容疑者は駐車場に止めていた車に再び乗り込み、南の方向へと逃走したということです」
自宅は現場から南西方向に約900メートル、車で5分ほどの距離にある一軒家です。
強制捜査に踏み切った19日朝は、防護服を着た複数の捜査員が…
警察によりますと、防刃ベストを着た捜査員約20人が自宅の窓ガラスを割って突入しましたが、身柄を確保する際、平原容疑者は抵抗せず、椅子に座っていたといいます。
「ずっと怒鳴り声が聞こえる」平原容疑者の“異様”な姿
平原容疑者はどういう人物なのか。
中学校の卒業アルバムには、「夢を持って未来の扉を開け」という言葉が綴られていました。
学生時代を知る人は…
容疑者の学生時代を知る人
「バスケ部、静かだった印象しかない。静かすぎて逆に印象に残っている」
「静かだった」という平原容疑者ですが、最近は…
記者
「平原容疑者は自宅で大声を上げるなどしていて、近隣住民はこれまで何度も警察に通報していたということです」
記者
「近所に住んでいてどんな人物だった?」
近隣住民
「怖い人だなと。大声で怒鳴っていると。誰に対して怒鳴っているか分からないけれど、独り言なんですよ。カラオケを今年になって買って、大音量で歌っていた」
近隣住民
「お風呂に入っていてずっと怒鳴り声が聞こえる。誰かに怒鳴りつけて怒っているような「コラ、コラ」とか。頻繁に怒鳴り声とかを聞きました。今年に入ってからだと思う。町内の中でも話が出ていたので、通報する人も多かったみたい」
他にも、近隣住民は“異様”な姿を度々目撃していました。
近隣住民
「最近は家の中も青く光っていて、変な光がついていて怖かった」
これは17日夜に撮影された平原容疑者の自宅。部屋からは青い光が漏れています。逮捕前日のきのうは、緑に変わっていました。
警察によりますと、平原容疑者は一人暮らしだったといいます。
記者
「結婚はしていた?」
近隣住民
「奥さんも子どももいた。いつの頃からかいなくなった」
記者
「いつごろ?」
近隣住民
「3か月くらい前からいなくなった」
「すごくうわーって怒鳴り散らしてた」
「軍隊の曲みたいなのを流していた。それも大きな音でね」
「2階、いつもレースのカーテンがずっと出たまんまで閉まらないからやっぱり変だなって」
「怖いでしょ、目合わせるの。この人ちょっと異様だなって」
警察によりますと、平原容疑者と被害者2人に面識はなく、犯行の動機については「まだ詳細な供述は得ていない」としています。
福岡県警捜査1課 橋本浩輔課長
「連続殺傷事件ですから、中島咲彩さんの件も再逮捕を視野に入れて、今から強力に捜査を進めて参りたい。間違いなく関与しているとみています」
警察は、男子生徒への殺人未遂事件のほか、中島さんに対する殺人容疑での立件も視野に、捜査を進める方針です。
現場から見える事件当時の状況
小川彩佳キャスター:
犯人は車を使ってそちらから逃走したということです。後ろにあるのがお店ですね。
喜入友浩キャスター:
お店の前に広がっているのが駐車場です。平原容疑者は犯行の後、まさにここで車に再び乗り込んで逃走しました。
この駐車場には、奥に全体を俯瞰するような位置に防犯カメラが設置されています。ただ、駐車場を出ると、奥の住宅街は真っ暗で、防犯カメラはほとんどありません。
そして、南の方向に逃走したということですが、こちらから平原容疑者の自宅の方向に4分ほど車で走ってもすれ違った車は10台ほどと、犯行の時間帯の交通量は非常に少ないです。手がかりが少なかったことが推察されます。
ただ、この近くに住む方で、事件当日に現場の近くを車で走ったわけではないが、警察から連絡があって、ドライブレコーダーの提出を求められたという方もいました。非常に地道な捜査があったことが推察されます。
小川キャスター:
暗い中だと、そこで例えば誰かとすれ違ったとしても、覚えていて記憶に留めるのはなかなか難しいほどの暗さですね。
喜入キャスター:
男性か女性かもわからないほどの暗さです。
小川キャスター:
住民の皆さんは本当にほっとされたと思いますが、佐々木さんは容疑者逮捕のポイントはどこにあったと思われますか。
元埼玉県警捜査一課 佐々木成三さん:
記者会見もありましたが、住民からの提供されたドライブレコーダーは、かなり早期の逮捕に繋がったと思います。事件においては、付近住民の関心がとても高く、いろんな方の協力や犯人を許さないという気持ちがドライブレコーダーの提供に繋がったと思う。
暗い道でしたが、車のドライブレコーダーは一度撮ると、その先を走る車のナンバーもわかります。そこから数珠繋ぎに協力依頼をして、ドライブレコーダーの提供はできますので、本当に地道な捜査だったと思いますね。
藤森祥平キャスター:
逆に言えば、相当現場情報が限られていたということがわかります。事件発生は先週の土曜日の事件ですが、周辺の住民の皆さんの不安を考えると、相当なものだと思います。住民の皆さんの声を聞いていると、容疑者は以前にも警察に通報があったということですが、目星はついていたのでしょうか。
佐々木成三さん:
私は、目星は当初は付いていなかったと思います。現にいろんなタバコの押収をするなど、様々な視野を考えながら捜査をしていたので、本当にこの2日間の間に急転直下があったと思います。それが、僕は黄色いサンダルの公表だと思います。いろんな情報が集まった中で、これをきっかけに急転直下で容疑者が浮上したのではないでしょうか。
藤森キャスター:
逮捕時の特徴についてはどのように思われますか。
佐々木成三さん:
これは異例です。1人の容疑者を逮捕する中で特殊班が出動していますが、警察も危険人物だという認識のもと、かなりの体制を整えて逮捕に至っていると思います。これだけの人数はなかなかないと思います。
小川キャスター:
喜入さんは容疑者の自宅周辺を取材していましたが、容疑者について何かわかっていることはありますか。
喜入キャスター:
容疑者が普段から発していた大きな声に、不安を感じている周辺の方が多くいらっしゃいました。中には警察に実際に通報したという方もいました。今朝の逮捕を受けて、あまり驚かなかったという方もいました。
そして実際に通報した方の中には、仮に警察が地域にこうした人物がいることを把握していたのであれば、事件を未然に防ぐことはできなかったのかといった声もありました。
小川キャスター:
今後は動機の解明が待たれます。
佐々木成三さん:
数多くの押収された証拠品、そしてやはり容疑者の口から動機の解明をしていかなければなりません。被害者、そしてご遺族の方にも、実態解明というのは、警察としては使命だと感じています。
小川キャスター:
まずはどういった事件だったのかという点ですね。再発防止の糸口が見えるかもしれません。そして容疑者が逮捕されたとしても、中島さんが亡くなってしまったという事実、そして男子中学生の傷は消えることはありません。
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<プロフィール>
佐々木成三さん
埼玉県警本部捜査第一課に10年間在籍
現役時代はサイバー捜査の導入に着手