柿がおいしいシーズンも終盤。
栄養満点の柿をおいしく味わう食べ方も多く紹介されていますが、SNSではとある注意喚起が広まり、驚きの声が上がったことも。美味しすぎても、食べすぎには要注意です。
柿で石?!大好きだからといって食べ過ぎるのは注意!
柿を食べ過ぎると死に至る場合も…そんな驚きの投稿がSNSで話題に。柿を食べ過ぎると、胃に石…?激しい腹痛、嘔吐…?!実際にこの『柿胃石症』の患者さんを診たことがあるという、あい太田クリニックの芳賀紀裕医師に一体どういうことなのか聞きました。
──「柿」の食べ過ぎで胃に石ができるということですが…本当なのでしょうか?
あい太田クリニック 芳賀紀裕医師
本当です。実は、私自身も若い頃びっくりした経験があります。たまたま急患でお腹が痛いという患者さんがいて、胃に石ができて、それが小腸の方に落ち、腸閉塞になって緊急手術になった例があったのです。過去の事例を調べたら、同じようなことが病院内に3例あって、それで柿胃石症について知りました。
──なぜ、柿で石ができるのですか?
柿のタンニン酸っていう“渋み”ですよね。「シブオール」という成分が、胃酸の影響を受け、溶けづらくなり、それに食物残渣と混じって、石になっていくと言われています。
──「柿胃石症」になるとどうなるのでしょうか?
柿胃石が出来ただけでは、症状は出ないことが多いですが、潰瘍ができたり、胃の出口をふさいだりすると胃部不快感、腹痛、膨満感、吐き気、嘔吐などの症状がでることがあります。さらに、胃の中で出来た石が腸に流れて、詰まってしまうと、腸閉塞という状態になります。その場合は激しい嘔吐のため脱水を引き起こしたりするなどして、全身の状態が悪化する場合もあり、石を取り除くために私が経験した患者さんのように緊急手術が必要になることもあります。
──どのくらいの量を食べると柿胃石症になるのでしょうか?
渋さによってタンニン酸の量が変わるので、いくつ以上食べたら胃石になるというのは、はっきりはわかりません。また、柿胃石はタンニン酸の量だけでなく、胃の酸の多さ、胃の動き(糖尿病などで悪くなる)によっても変わるので、一概には言えないと思います。柿はビタミンなど豊富に含み健康に良い面もあるので、好物であっても栄養学的に適正とされている、1日1個200g程度にしておいたほうが良いのではないでしょうか。
──柿胃石は、長年食べ続けているとできてしまうのか、急に食べ過ぎる(1日に何個も食べる)と、胃石ができるものなのでしょうか?
柿胃石そのものは柿を多く摂取することで割と短期間で形成されるという報告が多いようで、蓄積されて何年もかかってできるものではないようです。しかし詳細ははっきりしていません。
──渋みの「タンニン酸」が原因なら、渋くない干し柿なら安心ですか?
干し柿になってもタンニン酸そのものは可溶性から不溶性へと変化するのみで減らないので、やはり食べすぎには注意したほうが良いと思います。
意外な治療法…柿胃石を柔らかくするのはコーラ!?
柿の渋みがそんなことをするなんて…柿好きには、なかなか辛い現実です。SNSには「知らなかった。気を付けつつ美味しく食べよう」「うちのじいちゃん一日3個くらい食べていた気がする」「なんの冗談かと思ったらガチなのかよ…」など柿胃石症について驚く投稿がみられます。
そんな中、目を疑いたくなるような治療に関する投稿も。その名も“コーラ療法”。「コーラ」を使って柿胃石を溶かすというのです。柿とコーラという、食べ合わせの面ではそんなに相性が良いともいえなさそうなコラボレーション。本当なのでしょうか?改めて、芳賀医師に聞いてみました。
──柿胃石症にコーラが効くというのは本当ですか?
芳賀医師
正確なメカ二ズムはわかっていないようですが、コーラが柿胃石を溶かす作用をもつらしいというのは本当です。コーラを鼻から管を入れて胃に注入する方法や、毎日500ml~1000mlを飲むことで、柿胃石を溶かす方法があるようです。ただ、それで完全に溶かすということを期待するのではなく、石を軟らかくして割りやすい状態にして内視鏡的に治療をしているのが現実ではないでしょうか。
──え!!では、柿を食べるときにコーラを一緒に飲むと予防になりますか?
そこまでして柿を食べなくていいと思いますが…。いずれにしても美味しいものはほどほどにしないといけないかなと思います。
最後は先生にたしなめられてしまいました…。
柿胃石症の確かな予防がない中、柿は極端に食べ過ぎると石ができる可能性があることを念頭に、節度をもって旬の味を楽しみましょう。
論文:Obstruction due to Persimmon Bezoars:Computed Tomography Detection(2001)
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<プロフィール>
芳賀 紀裕 (はが のりひろ)
医療法人あい友会 あい太田クリニック 医師
【主な略歴】
2008年 群馬県立がんセンター外来部長・通院治療センター長
2009年 埼玉医科大学総合医療センター消化管・一般外科 准教授
2013年 独立行政法人国立病院機構宇都宮病院 臨床研究部長・がん診療部長