米利下げ 日銀利上げ見送り、揺れるマーケット 専門家の見解は?【Bizスクエア】

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2024-12-25 06:00
米利下げ 日銀利上げ見送り、揺れるマーケット 専門家の見解は?【Bizスクエア】

今週は日米で金融政策を決める会合が開催され、アメリカは利下げ、日本は利上げ見送りという結果になり、市場が荒れた。

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アメリカ 0.25%利下げ「新たな局面に入った」

FRB パウエル議長:
既に1%の利下げをしたので、利下げの余地はかなり小さくなっている。ここから先は新たな局面に入ったのでさらなる利下げは慎重に判断する。景気後退を回避したのは明らかで2024年の経済成長は堅調だ。

アメリカの中央銀行にあたる、FRB(連邦準備制度理事会)は現在、4.75%を上限としている政策金利を0.25%引き下げ、4.5%を上限とすることを決め、3会合連続の利下げとなった。

アメリカ 利下げ年2回に? 高まるインフレ懸念

また、FRBは、2025年は1年間で2回、利下げを行うという見通しを公表した。9月に示した前回の見通しでは、1年間に4回の利下げを見込んでいたが、根強いインフレが続いている状況を踏まえて利下げを急がない姿勢に転換した。

FRB パウエル議長:
インフレのリスクと不透明性により、2025年もインフレが高くなると予想している。先行きが不確実なら、少しペースを落とすのは常識的な考え方だ。

この決定にアメリカの市場関係者は…

米資産運用会社 マイケル・ランズバーグ氏:
2025年の利下げは、必ずしも必要ではなく「ゼロ回」と予想する。インフレは2025年も上昇するだろう。9%とはいかなくてもFRBの望みとは逆方向に進んでいる。その環境では利下げはできないだろう。

アメリカ 利下げベース鈍化か 株価大幅下落 円安進む

利下げペースが鈍化するとの見通しを受け、12月18日のニューヨーク株式市場では、ダウ平均株価が急落し、下げ幅は1100ドルを超えた。この日、ダウ平均株価の下落は、50年ぶりに10営業日連続となった。

また、アメリカの長期金利は約7か月ぶりの高い水準まで上昇。外国為替市場では、日本とアメリカの金利差の拡大が意識されて円安が進んだ。

日銀 利上げ見送り 利上げ判断「もう一段落」

そしてさらに円安を加速させたのが日銀の利上げ見送りだ。日銀は12月19日、2024年最後の金融政策決定会合で、追加利上げを見送った。

日本銀行 植田和男総裁:
データがオントラック(想定通り)でここ数か月きているので、それを前提にすると私どもの見通しが実現していく確度は、多少なりとも上がっている。次の利上げの判断に至るには、不正確な言い方ではあるが、もう1ノッチ(段階)ほしい。その1ノッチの中に賃金上昇の持続性ということも入ってくるかと思う。

植田総裁は利上げを判断するには、2025年の「春闘」での賃上げ状況や、アメリカのトランプ新政権の影響について「もうすこし情報が欲しい」と述べ、利上げを急がない姿勢を示した。

会見後、為替は一時157円台まで進行し、5か月ぶりの円安水準となった。加藤財務大臣は翌12月20日、市場の動きを牽制した。

加藤勝信 財務大臣:
為替の動向を憂慮しており、行き過ぎた動きに対しては適切な対応を取っていきたい。

円安の進行が懸念され、2025年1月の日銀の会合での利上げの判断が注目されるが、植田総裁は「1月会合であれば支店長会議の結果も参考にするということになるが、そこは総合判断にならざるを得ない」とした。

日銀 なぜ利上げ見送り? 円安進行 いつ利上げ?

植田総裁は会見で「データはここ数か月オントラック(想定通り)で来ている。もう1ノッチ(段階)欲しい」とし、他にも「春闘など今後の賃金の動向についてもう少し情報が必要」。また「海外経済の先行きが引き続き不透明だ」などと発言した。

――1ノッチ、一体何が欲しいのか。

東短リサーチ 加藤出氏:
春闘のその先行きをもう少し確認したい、それからトランプ政権の経済政策を確認したいということのようだ。

――日銀はなぜ利上げしなかったのか。

東短リサーチ 加藤出氏:
上げるべきいい流れではあった。あまりに金利が低すぎて経済を歪めているという話は日銀もしてきた。ただ8月5日の株価の急落以降、非常に慎重になっている感じはある。

――自分たちの政策変更のせいで、また市場が崩れたと言われたくないからか。

東短リサーチ 加藤出氏:
利上げ局面で中央銀行に必ず批判は来るが、経済全体のバランスをとるには、利上げしなければいけない。極力、批判を避けたいと思っているとこういう(市場が荒れる)ことになってしまう。過剰な慎重さに思える。

――政治への慮りもあるのか。

東短リサーチ 加藤出氏:
ある。特に7月の時は、岸田首相(当時)も、茂木自民党幹事長(当時)も円安が進んでいたので利上げを促していたが、今回はまだそういう話が政府・政治サイドから来ていない。また2025年度予算もまだ流動的ということもあって、遠慮している感じはある。

――政府が日銀に「利上げしてくれ」と言うことは、何十年に1回ではないか。

東短リサーチ 加藤出氏:
7月のケースも極めてレアケース。

実は、消費者物価指数は上がっている。12月20日に発表された「11月の消費者物価指数」は、変動の大きい生鮮食品を除いた総合が、前年同月比で2.7%上昇した。政府の電気ガスの補助金が縮小したことに加え、食料の値上がりが加速した影響が出ている。

――物価はオントラックというより、上振れしているのではないか。

東短リサーチ 加藤出氏:
ガソリン、電気ガスへの補助金がなければ全体にもっと上。目標の2%よりも実際はかなり上振れした状態が約3年続いている。決して放置していい状況ではないが、現実にガソリン補助金が減るというだけでガソリンスタンドに大行列ができるほど、物価上昇に困っている国民が多い。ただ日銀は「急ぐ必要はない」と、国民の方を向いていない。

背景にあるのが為替相場。円安が進んでいる。一時期、円高に戻ったが、ズルズル下がって、今回の「利上げ見送り」の報道が出た後に一気に7円ぐらい円安になった。

東短リサーチ 加藤出氏:
先週の植田総裁の会見で、次の利上げにとても慎重という姿勢を示した。その発言をすれば円安が進むのは明白なので、事実上確信犯的に出たともいえる。狙っているわけではないにしても、円安になっても仕方ないというつもりで話している。

――植田総裁が「モメンタム」(勢い・動向)を見たいと言った賃上げの動向。こちらもすでに連合が要求を出していて、それぞれの産業別も要求額が出てきていて、2024年並みということは見えてきている。さらに1月になったらもっと詳しくわかるのだろうか。

東短リサーチ 加藤出氏:
賀詞交換会以降の企業経営者のコメントや1月の日銀の支店長会議で地方から入ってくる情報などで、今よりはもう少し情報があるだろうが、決定的なものは1月にはまだないだろう。ただぼかすために春闘の結果を待ちたいのではなく、モメンタムを確認したいという曖昧さは残している。

――会合前には金融関係者の間では12月に利上げがないということは、1月で決まりだという観測が強かった。

東短リサーチ 加藤出氏:
12月になければ1月だと思う。ただトランプ新政権の政策の不確実性もあるので、今回の会見では曖昧さを残すと思っていたが、あんなに1月会合の確率を押し下げるような発言を植田総裁がすることに驚いた。

市場では、利上げが12月にあるだろうと思っていた人が、11月あたりで高かったが、日銀からの情報発信を受けてみるみる下がっていった。それでも1月にあるだろうと思っていた人は会見直前まで、変わらず高かったが、植田総裁の会見後にがくんと落ちた。

東短リサーチ 加藤出氏:
今、5割を割ってきた。しかしそこは植田総裁の会見の狙いではあったのではないか。五分五分か、それより低いぐらいにマーケットの期待を下げたいということだったのではないか。

――1月20日にトランプ氏の大統領就任式があり、その数日後に日銀金融政策決定会合がある。トランプ新大統領が何を発言するかわからないので、むしろ不確実性は増しているのではないか。

東短リサーチ 加藤出氏:
そういう意味でも12月に決めた方が良かった面はある。ただこういう非常に慎重で弱気な発言を日銀が発していくと結果的に円安が進みやすくなる。これで年明け以降、アメリカから少し強い経済指標でも出てきたりすると、為替が160円近辺まで行く可能性が出てくる。今は1月利上げの意気込みを示していないが、結果的に1月利上げに追い込まれる可能性もある。日銀は誰かに背中を押して欲しい感じだ。

アメリカ 利下げ2025年は、2回に? 高まるインフレ懸念

アメリカの方は予定通りの利下げではあった。今後についてパウエル議長が非常に慎重な姿勢を示している。パウエル議長は「新たな局面に入ったので、更なる利下げは慎重に判断する」「利下げの余地はかなり小さくなっている」「景気後退を回避したのは明らかだ」「インフレに関する不透明性が高くなっている」といった発言をした。

――今回のアメリカの利下げは、パウエル議長の発言から、利下げの説明をしているよりも、「もう利下げ止めます」という説明をしているように聞こえた。

東短リサーチ 加藤出氏:
思ったほどインフレの下げが進まない。実際、消費が強いという現実に直面している。消費が強いことは、悪いことではないが9月から0.5%の大幅利下げで始まった今回の局面を一旦様子見しないとまずいということにはなっている。

同時に出た、今後のアメリカの政策金利見通しの「ドットチャート」。前回9月の時点では利下げは2025年に4回あるだろうと見ている人が一番多かったが、9月から3か月しか経っていないのに、今回の12月の調査では、利下げの見通しが2回も減ったので、市場が驚いた。さらに「1回しか利下げできない」という人も、メンバーの中に3人いて、「もう利下げはない」と言っている人も1人いるということがわかった。かなりインフレ警戒的になっている。

東短リサーチ 加藤出氏:
9月の時は、(利下げが)「4回」というせめぎ合いがあるが、「ない」という人もいる。今回も「2回」と「3回」のせめぎ合いかと思ったら、「2回」に集中しているので相当見通しを変えてきている。ただ12月20日の金曜日時点でアメリカの先物市場から見ると、2025年の利下げは「1回もない」という確率が16%、「1回だけ」が35%。「2回」が31%ぐらいに、ばらける感じだ。

――アメリカはなかなか利下げできない、場合によっては利上げもあるかもしれないとすると円安が進むのではないか。

東短リサーチ 加藤出氏:
アメリカの方で「利下げがもう終わる」という議論が本格化してくると、マーケットの関心が「利上げはいつだろう」となる。一方、日本は非常に慎重で、日銀がなかなか金利を上げないという話になり、また円安局面が激しくなっていく。

――金融政策の責任は重い。

(BS-TBS『Bizスクエア』12月21日放送より)

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