JAXA=宇宙航空研究開発機構は、世界初のピンポイント着陸に成功した月面探査機「SLIM」について成果を報告する会見を行い、「火星での活動も少し見えてきた」とプロジェクトの意義を強調しました。
今年1月20日、世界で初めてとなる月面への「ピンポイント着陸」に成功した日本の月面探査機「SLIM」。SLIMは目標地点の100メートル以内に着陸することを目指し、複雑な地形への着陸に成功しました。
これまでに月面着陸を成功させた国は、着陸しやすい平坦な場所を選び、目標地点から数キロから十数キロメートルの範囲で着陸させることがほとんどでした。
また、SLIMは着陸直前、2機の小型ロボットの分離にも成功しましたが、2つのエンジンの片方が破損したため、太陽電池が横を向いた姿勢で着陸。一旦、電源がオフになりましたが、太陽方向の変化に伴って運用を再開しました。
月の表面は14日間の昼と14日間の夜を繰り返し、大きな温度変化も伴うため、SLIMが夜を越えて活動する想定はしていませんでしたが、予想に反して3回の夜を越え、動作を確認できたということです。
その後は通信を確立できず、8月23日に運用を終えました。
JAXA宇宙科学研究所 国中均 所長
「この技術や知見や経験をさらにステップアップしていけば、月での縦横無尽な活動も実現できると思いますし、火星での活動もいよいよ、本当に少しですが見えてきたと思っています。だから、その意味ではSLIMが我々の先駆けになりました」
国中所長らはこのように述べ、世界初のピンポイント着陸が従来の「降りられるところに降りる探査」から「降りたいところへ降りる探査」へのパラダイムシフトを実現し、今後の月惑星探査の可能性を広げたなどプロジェクトの意義を強調しました。
JAXAはSLIMで得られた技術や知見を月着陸を行う国内の民間事業者に提供する方向で調整するとしています。