水やお茶と並び、今や普段の生活に欠かせないものとなった炭酸水。舌肥読者の皆さんの中にも、マメに注文してストックを欠かさないようにしているという人は多いのでは。さて、そんな我々の生活に溶け込んだ炭酸水だが、楽天年間ランキングで4年連続1位を獲得している「OZA SODA」を販売する飲料メーカー「ライフドリンク カンパニー」をご存じだろうか。
大阪に本社を構える株式会社ライフドリンク カンパニーは、1950年創業の飲料メーカー。水やお茶、炭酸飲料を主力に販売していた同社が新たな自社ブランド『ZAO SODA(現OZA SODA)』を立ち上げ、インターネット販売に着手したのは2020年のこと。そしてその翌年の2021年には、楽天年間総合ランキング1位を獲得するという快挙を成し遂げた。以降、楽天【水・ソフトドリンクジャンル】で4年連続1位の座を他ブランドに譲らなかった『ZAO SODA(現OZA SODA)』だが、なんとこの11月にファンに親しまれてきたブランド名を変更した。唐突とも思えるこの改名劇には、いったいどのような意図があるのだろうか?同社執行役員SCM本部長 橋本知久さんに話を聞いた。
売上好調が故に決定したブランド名変更
新たなブランド名は『OZA SODA』。“OZA”は“おうざ”と読む。元々のブランド名にあった“ZAO”は山形県蔵王連峰を由来としており、地質100選にも選ばれたその地に湧き出る水を原料に蔵王の工場で生産していることからこの名が付けられたのだった。高品質な水を使いながらも、一本あたり約49~65円と低価格で販売される『ZAO SODA』は瞬く間に人気を集め、販売本数はうなぎのぼりに。だが、ここで思わぬ状況が発生した。
「販売本数が増えるにつれて、全国に生産拠点を分散しなければご注文をまかなうのが難しくなってきました。その結果、蔵王の水を使って蔵王の工場で生産という軸がぶれてしまうことになりましたので、思い切ってブランド名を変更することにしたのです」(橋本さん)
つまり、蔵王(=ZAO)と名乗っているのに蔵王の水を使っていない商品も存在するというのはいかがなものか、ということで改名に踏み切ったわけだ。産地擬装が問題になっている昨今で、なんとも潔く、清々しい話ではないか。ちなみに『OZA SODA』は現在、店頭販売は一切しておらず、完全にインターネットでの販売という形がとられている。同社の商品がすべてネット販売というわけではなく、別ブランドの商品はさまざまな小売店に納品されているが、『OZA SODA』に関しては、楽天市場、Amazon、Qoo10、au PAY マーケット、Yahooショッピング、dショッピングなどのECモールや、同社が運営するライフドリンクオンラインストアなどのネット販売のみなのだそうだ。
ライフドリンクオンラインストア:https://www.lifedrink.jp/c/category/soda
楽天市場以外のストアでも、au PAYマーケットでは2023年から2年連続【水・ミネラルウォーターカテゴリ】で2位を獲得、Qoo10では「LIFEDRINKオンラインストア Qoo10店」がQoo10 AWARDS 2024「最優秀賞」を受賞し2024年も好調に売れているそうだ。
ペットボトルの製造から納品まで自社で行うことで低価格を実現
『OZA SODA』が爆発的な人気を得た理由の大きな要因は、やはりなんといってもその価格だろう。一本あたり約49〜65円で高品質な強炭酸水が手に入るとなれば、人気が出るのも当たり前だが、この低価格のカラクリはどのようになっているのだろうか?
「容器となるペットボトルから自社で製造してコストを抑えたことで低価格を実現しました」(橋本さん)
聞いた瞬間、「えっ?!」と耳を疑うような回答だが、同社では本当にペットボトルを自社で製造しているという。
「ペットボトルは中身が入っていない状態ですと、空気を運んでいるようにすごく軽いのですが、容積自体は変わらずに大きなトラックで、かつ菌が入らないようにラッピングしてペットボトル工場から炭酸水工場まで運ばなければなりません。しかし自社工場で原料のレジンを膨らませてペットボトルを製造すればそういった輸送費も一切かからないので、そこはかなり競争力になるかと我々は認識しています。また、出荷作業・配送こそ外部業者に委託していますが、それ以外のモール運営やお客さま対応は、自社で行っています」(橋本さん)
なるほど、『自社工場でペットボトルを製造→炭酸水注入→自社運営サイトで販売→顧客へ配送』という流れを作り上げたことで、途中に中間業者を入れず、コストダウンを実現したのだ。そして、その高品質低価格な商品が爆発的に売れ始めたことで、それに対応すべく全国に拠点となる工場を用意。その結果、ZAO(蔵王)ではない商品も出来上がるため、『OZA SODA』へとブランド名を変更したという最初の話へ戻るわけだ。
新ブランド名はInstagramで公募 ユーザーを巻き込んだ改名劇
前述したように、工場の全国展開がブランド名変更の大きな要因だったわけだが、新しいブランド名を決定する過程も大手飲料メーカーとは異なる方法が取られた。それが「Instagramでの公募」だ。これに熱心なファンは反応し、ユーザーからは1,500件を超える案が寄せられたという。
「SNSの企画として新ブランド名をユーザーさんから募集しまして、たくさんの案を送っていただけました。その中から決定した『OZA SODA』には、次のふたつの想いが込められています」(橋本さん)
「OZA SODA」の由来
①「王座=No1 の炭酸水」を目指す
『今まで以上に人々にとって欠かせない「ライフドリンク」としての地位を確立し、生活で一番必要とされる炭酸水を目指したい』という想い。
②「ZAO」のアナグラムとなる「OZA」を採用
『既存のお客様に引き続き親しみを持ってもらいたい』『これまでと同様にいつまでも飽きずに美味しく飲み続けられる炭酸水でありたい』という想い。
ライフドリンクカンパニーが取り組む “脱付加価値戦略” とは?
このように、『OZA SODA』で王座を取ろうと狙うライフドリンク カンパニー社だが、全社を挙げて取り組んでいる戦略があるという。それが “脱付加価値戦略” だ。でも脱付加価値戦略って何?意味がよくわからない記者に橋本さんは次のように説明してくれた。
「我々としては嗜好品である飲料というよりは、人のニーズを満たすようなベーシックな飲料をライフドリンクと呼んでいます。品質や品種、味といったところに関して、突拍子もない味付けをするのではなくて、食事を摂る時に邪魔をしない、味の真ん中と言えるような商品をこれからも提供していきたいと考えています。つまり、ドリンクの本質的な価値にフォーカスして、万人が喉を潤すために飲んでもらえる飲料のことですね。もちろん、世の中のニーズに合わせてジャスミン茶だったり、コーン茶だったりとこれからも模索はしていきますが、あくまでもそのベーシックなところの考え方はブレないようにやっていきたいと思います。これが我々の考える“脱付加価値戦略”です」
なるほど、こんな栄養素を加えましたとか、今までにないテイストなどではなく、まずは喉を潤すという基本に忠実に、誰もが飲めるドリンクを作り続けるのが同社のスタンスなわけだ。
冒頭で橋本さんから「記者さんの家の近所のスーパーでも当社の商品は置いてあるはずですよ」と言われた際に、「いえ、見たことありません」と答えてしまったが、後日確認してみたら、なんと今年の夏、一番購入してガブ飲みしていたのがライフカンパニー社のお茶だった。家の近所にあるスーパーは安いことで有名なチェーン店で、そこに置かれているペットボトルのお茶を片っ端から試した結果、「これ、一番安いのにウマイじゃん」と選んだのがそれだ(ラベルをよくよく見たら『LDC(=ライフドリンクカンパニー)』とちゃんと書いてました)。ひょんなことから同社商品のクオリティの高さを痛感し、橋本さんには取材時に大変失礼なことを言ってしまったと反省しきりである。