上海博物館で猫と一緒に展示を楽しむイベント「ミャオジアム・ナイト」が開催され、各回200匹ほどの猫とその飼い主を集め、盛況な催しになりました。猫グッズを中心とする売り上げも拡大し、企画は大成功だったようです。
土曜の夜は「猫と一緒に博物館」
2024年の夏から秋にかけて、中国の上海博物館で土曜日の夜に「ミャオジアム・ナイト」が合計10回開催されました。
これは開催中の「古代エジプト文明」の展示にあわせて、飼い猫を連れて夜間に2時間観覧できる特別の機会でした。毎回200匹ほどの猫が飼い主らと参加しています。
同館のChu Xiaoboディレクターは「イベントの初日は、どの猫よりもわたしが緊張しましたね」と話しています。
「博物館はすべての人々のためのもの。こうしたイベントを常に開催するのは難しいですが、今回の取り組みは多くの人に来てもらうためのよいきっかけになりました。猫好きの人は、上海博物館によい印象をもってくれたと思います」
「古代エジプト」と「猫」は相性がいい?
「上海の人口は2400万です。飼い猫は130万匹もいます。でも猫のための宿泊施設はあまりないのが現状です。人々の猫に対する考え方は大きく変わってきており、ペットをどう受け入れて一緒に楽しく生活していくかは大きな課題です。ペットフレンドリーなホテル、レストラン、公園も増えてきました。でも博物館に猫が入場できるのは、これが世界でも初めてだと思います」というChuさんです。
「古代エジプトと中国の現代社会がうまくマッチしたイベントでした。というのも、展示には猫の女神を祀るバステト神殿が含まれているからです。ほかの展示物も、大半は猫に関するもの。古代エジプトには1700以上の神々がいましたが、そのなかでも猫は中心的な存在なのです」
展示を共同主催したエジプト古代遺跡・観光省も、このイベントに熱心でした。
猫が展示物を壊すのを防ぐため、館内では猫をベビーカーか専用バッグに入れることが義務づけられました。ただし猫の石棺のそばにある記念撮影用の区域は例外です。展示物はガラスの奥にあり、安全が確保されていました。
翌日に一般の入館者が猫アレルギーの症状に悩まないよう、毎回イベントのあとは展示室が徹底的に清掃されたといいます。
周到な準備をして開催
上海市内では、今回の企画をまねて「小型犬をつれて観覧できる」私立博物館も出現しています。同様の取り組みが今後も広がっていきそうです。
「企画段階では、多くの人に『頭がおかしい』『無理だ』といわれました。たくさんの動物愛好家からも連絡をいただき、いろいろ提案してもらいました。猫の安全を心配する人が多かったですね。猫は人前に出るのがきらいだし、猫同士でけんかもするからです」と話すChuさん。
そこで博物館では獣医などに待機してもらい、救急車を用意して来場者には保険までかけました。専用の受付を設けて、参加する猫にはワクチン接種済みの書類提示を求め、飼い主には猫の性格を考慮するよう注意を促しました。あわせて特別な猫用の観覧コースを設定し、特製ベビーカーを用意したといいます。
「イベントのたびに動物愛護団体のメンバーが80人以上やってきて、わたしたちに改善のための意見をくれました」
同時に、上海小動物保護局(Shanghai Small Animal Protection Base)の職員が網と厚手の手袋を持って待機し、逃げ出した猫を捕まえられるようにしました。このおかげで、各イベントで毎回5、6匹が逃げ出したものの、すぐに捕まえることができたそうです。
愛猫家に大人気
「とてもよいアイデアですが、会場に人が多すぎますね」というのは、8 月に愛猫Papi(メインクーン、2歳)をつれてこのイベントに参加した女性です。ベビーカーに乗るのをいやがるため、ハーネスをつけて彼女の肩に乗せました。Papiは熱心に観覧していたといいます。
「うちの子は好奇心旺盛で、全然こわがっていません。こうした企画があったら、またつれてきたいですね」と話してくれました。
多くの話題を集めたこのイベントは、収支も上々でした。1000点以上の企画商品が制作され、売上もよかったといいます。7月以降の売り上げは1億人民元 (約20億円) を超え、新記録を達成しました。
奇抜と思われるアイデアが、周到な準備と熱心な取り組みで大成功に終わりました。これをきっかけに「猫フレンドリー」な博物館が増えていくと、愛猫家もうれしいですね。
なお、古代エジプト文明展は2025年8月半ばまで開催されますが、この「ミャオジアム・ナイト」を追加開催する予定はないそうです。
出典:Shanghai’s ‘Meowseum Nights’ a sell-out hit with cat owners (and cats)
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