トランプ新大統領就任「黄金時代が始まる」、大統領令を“連発”一体なぜ?【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-01-21 21:56

アメリカのトランプ新大統領が就任しました。「就任初日だけは独裁者になる」と公言していたトランプ氏ですが、その言葉通り、早速、大統領令に次々と署名し、前政権からの方針転換を実行しています。

【画像で見る】激しい言葉で批判されたバイデン前大統領はこの表情

トランプ大統領「アメリカ第一」を宣言 演説で主張したのは

南波雅俊キャスター:
トランプ大統領は、就任式の演説で一体何を語ったのか、そして様々な大統領令についてお伝えしていきます。

21日に行われた就任式の演説で、トランプ新大統領は「みなさんが目撃しているのは、アメリカの黄金時代の幕開けだ。我々は、そんな時代を取り戻す」と、アメリカ第一主義を唱えました。

そして、30分間の演説の中で、「南部国境に非常事態宣言」「電気自動車の普及策の撤回」「性別は男性と女性の2つ」「メキシコ湾をアメリカ湾に名称変更」などを表明しました。

それから、大統領の就任式が行われた連邦議会議事堂で、昼食会後に5本の大統領令の署名。スポーツ施設でもあるキャピタル・ワン・アリーナに移動し、支持者の前でも9本の署名をしました。

さらには、ホワイトハウスに移動してから数多くの署名を行い、当初は100とも言われていましたが、現状まだ正確な情報は入ってきていません。

トランプ大統領が署名した大統領令の数々を見ていきます。

トランプ氏が署名した 大統領令の数々(ニューヨーク・タイムズより)
「パリ協定からの脱退」
「WHO(世界保健機関)からの脱退」など…

南波キャスター:
まさに大転換の大統領令の署名を行っています。

ホラン千秋キャスター:
これまでのリベラル的な考えから、ある意味逆行するような正反対の方向に進めようとしているのかなと感じられますが、これから世界はどっちに向かうのか、心配を抱えてる方も多いでしょうね。

早稲田大学教授 中林美恵子さん:
でも、ある意味トランプ氏というのはわかりやすいです。かなりこの就任式で具体的なところまで述べていますし、それ以前の選挙戦でもいろんな情報を発信していますよね。

普通の大統領は、就任式はもっと理念的なことを言ったり、アメリカの民主主義の理想を唱えたりしますが、トランプ氏はこんなに細かいことを発言しています。さらには、本当に行動に移すところを見せようとしています。なのでトランプ氏を支えた人たちは、トランプ氏のそういうところを評価したとの見方もできます。

ただ、この内容が本当にできるのか、どこまで本気で、どこまでが打ち上げ花火なのかといったものも含まれているので、周りは右往左往させられることが続いていく可能性は十分あります。

ホランキャスター:
特にこれは難しいんじゃないかなと思われるものはありますか?

中林美恵子さん:
例えば、カナダ・メキシコ・中国に関税を25%への検討の話がありましたが、それがどうも今回に限っては具体的には出てきていません。アメリカの経済がダメージを受けるようなことは慎重に考えようとしているのでしょうか。
また、ウクライナ侵攻は24時間以内に停戦と言ってましたが、プーチン氏のコメントの様子だと、そうそう簡単にはいかないかもしれないという現実を見始めてきている側面もあります。

井上貴博キャスター: 
確かに公約の実行性は極めて高い。トランプ氏は、とにかくバイデン氏がやってきたことをオセロゲームのように全てひっくり返しますと。

でも、4年後に政権が変わると揺り戻しが起きることを考えると、海外でお付き合いしていく国として、国の骨格がこれだけ揺れてしまうと、付き合いづらい国になってしまわないでしょうか。

元競泳日本代表 松田丈志さん:
関税1つとっても、アメリカ国内で日本企業がモノを作った方がいいのであれば工場を作って投資するっていう考え方もできると思います。一方で、4年後にまた元に戻るのであれば、その投資すらできないわけですよね。本当にトランプさんの出方次第で日本企業・国としても付き合い方を見極めていかなきゃいけないなというふうに思います。

大統領令を“連発” トランプ大統領の狙いは?

南波キャスター:
様々な大統領令に署名をしたわけですが、こんな壁もあると中林教授は話しています。

例えば、▼裁判所の判断で、当事者に訴訟を起こされて裁判所の判断で差し止めの可能性もある。あとは、▼議会の立法では不法移民対策への捜査員増員など、予算に関わるものは実行が難しい可能性もあると見ています。

ホランキャスター:
結局、実際に実務として進めていく上で本当に可能なのかどうかというのは、「ビジネスパーソン」としてのトランプ氏、「大統領」としてのトランプ氏という部分を自身の中で考えながらこれから進めていくという感じになりそうですか?

中林美恵子さん:
現実のすり合わせというのは必ず行わなければならないと思いますが、ただ、不法移民については、トランプ大統領が選挙戦の間にずっと主張していたので、言ってみれば「1丁目1番地」になります。

前回はイスラム系の人たちを入れないということになって、各地で訴訟が起こり、すぐには進められなかったっていう過去もあります。

また、不法移民対策で捜査員などを増員しようと思えば予算がかかりますよね。予算は議会が決めなければいけませんから、そういったところも大統領個人の決定だけですぐに実行できるというものばかりではないということなんです。

井上キャスター:
それは、1期目のときに自分がやりたいことができなかったから、今回「イエスマン」を配置して、議会も取りました。そうすると、もうストップをかけられるところがないという危うさはありますよね。

中林美恵子さん:
危うさはありますが、上院では53議席しか取っていません。「フィリバスター」という、100議席のうち60議席の賛成がないとダメというものがありますから、そこが少しは歯止めになるかもしれません。

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〈プロフィール〉
中林美恵子さん
早稲田大学教授
元アメリカ議会上院補佐官(共和党)

松田丈志さん
元競泳日本代表 五輪4大会に出場 3児の父
JOCアスリート委員長

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