追い詰められていた元兵庫県議の竹内英明さん 「でっち上げ」と発言した立花孝志氏は【報道特集】

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2025-01-25 21:11
追い詰められていた元兵庫県議の竹内英明さん 「でっち上げ」と発言した立花孝志氏は【報道特集】

兵庫県知事の疑惑を追及していた元県議の竹内英明さんが亡くなりました。自殺とみられています。SNS上に拡散された竹内元県議への誹謗中傷。その真偽を検証します。

【写真で見る】取材に応じた、立花孝志氏

「社会にも、もう希望が持てない」竹内元県議を追い込んだものは…

兵庫県議を務めていた竹内英明さん(50)。兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを調べる百条委員会の委員として、斎藤知事を追及してきた。

兵庫県 竹内英明県議(2024年8月・当時)
「ご自身は今でもパワハラをお認めにならないんですか」

竹内さんはほぼ毎日ブログを更新していた。

2023年2月9日のブログ
「信号機が設置されました!お子さんが自転車で衝突事故にあうという衝撃的な出来事があり、要望を続けてきました」

2024年3月18日のブログ
「姫路駅前、定例の朝の街頭演説。初心にかえる、いい機会」

竹内さんは、なぜ追い込まれていったのか。

同じ会派の上野英一県議は竹内さんに異変がみられたと証言する。

兵庫県 上野英一県議
「県知事選挙中に立花発言があったり、その時分からではないか。ほとんど家にいて、暗くなってからしか出ることができないと」

斎藤知事をサポートするため知事選に出馬したNHKから国民を守る党の立花孝志党首。選挙戦の中で、亡くなった元県民局長の告発文書の作成に竹内さんが関与していたと主張していた。

立花孝志氏(2024年11月1日)
「自殺した人が1人で作ったと思っている人いません?違うんですよ。違う人物も関与していた。確実に言っていい人、1人だけいます。竹内さん、竹内県議、あっ言っちゃった」

その後、百条委員会の奥谷委員長の事務所前で…

立花孝志氏(2024年11月3日)
「出て来い奥谷。一応チャイムだけ鳴らしておこ。あまり脅して奥谷さんが自死されても困る。竹内さんのところにも行きますよ。どうやって会おうかなと思ってた」

ほかにも立花氏は竹内さんを「斎藤を貶めた主犯格」と決めつけた動画を引用し投稿。249万回閲覧されている。

知事選の翌日、竹内さんは「家族を守らないといけない」として議員辞職したが、匿名の誹謗中傷は止まらなかった。

実際の投稿
「竹内英明、フザケルな。消えてまえ」
「辞職すれば済む話じゃない。犯罪者じゃないか」

同僚の迎山志保県議は竹内さんの辞職後も連絡を取り続けていた。

立花氏による「竹内さんのところに行く」との動画が投稿された後には…

竹内さんからのLINE(2024年11月5日)
「妻が警察に連絡してほしいと昨日言ったので、電話した。立花の事務所襲来エックスなどを見てしまっていて怖いと言ってます」

そして、竹内さん自身も鬱状態に陥っていく。

竹内さんからのLINE
「(気持ち、少しは落ち着かれましたか)逆に酷くなってる。病院行ったけど診断も厳しい」(2024年11月23日)
「またうちに攻撃とかあったら耐えられません」(2024年12月1日)
「薬の助け借りてなんとか眠ってる。心配かけてごめん」(2024年12月7日)

兵庫県 迎山志保県議
「信頼関係があると思っている身近なリアルの方からも、嘘の情報を前提にしたような心配をされたりとか、『自分は本当に真摯に政治や県民に向き合ってきたつもりだったが、これまでの自分の人生も何だったんだろうかなと思うし、こういうことがまかり通っていく社会にも、本当にもう希望が持たれへんな』って」

1月18日、竹内さんは亡くなった。自殺とみられている。竹内さんが使っていた議会の机には、花が手向けられていた。

兵庫県 迎山志保県議
「竹内さん、すごく勉強家ですべての資料を置いてて。正義感に溢れている、正しいことは正しい、間違っていることは間違っていると、臆面もなく言い切れるような青臭い人だったなって」

竹内元県議の“逮捕の予定” 県警トップが完全否定し立花氏は…

竹内さんの死が報じられると、立花氏は「竹内元県議が亡くなった理由」とする動画を投稿し、持論を展開した。

立花孝志氏(1月19日公開・現在は削除)
「竹内元県会議員、明日逮捕される予定だったそうです。メディアは相変わらず誹謗中傷が原因とか。誹謗中傷で何で死ぬねんって話じゃないですか」

これに対し、兵庫県警のトップが異例の発言をした。

兵庫県警 村井紀之本部長
「任意の調べをしたこともありませんし、ましてや逮捕するという話は全くございません」

すると立花氏は「逮捕が怖くて命を断った」という主張は間違いだったと訂正し謝罪。しかし、誹謗中傷はしていないと反論した。

立花孝志氏(1月20日公開)
「竹内さんに対して、僕自身は批判や誹謗中傷した記憶はない。これぐらいのことで自ら命を絶つような人が政治家しちゃいかん」

だが、この2日後にも…

立花孝志氏のXより
「故人が悪事を働いていた事は、明らかですが、、、その悪事が警察が把握してなかっただけ!あるいは警察が裁けない悪事だっただけでしょう!」

批判や擁護…SNS投稿の変化に専門家「メディアの役割」指摘

竹内さんに関する、Xの投稿はどのように変化したのか。東京大学の鳥海不二夫教授の分析をもとに検証した。

竹内さんを批判する投稿は、県議を辞職した11月18日に増加。

そして、1月19日昼ごろに竹内さんが自殺したとみられることが報道されると、その動機を「逮捕を恐れて死んだ」などとする投稿が一気に拡散された。

しかし、19日夕方、新聞3紙が県警関係者への取材をもとに「そうした事実はない」と報道すると、竹内さんを擁護する投稿が批判の4倍拡散された。

鳥海教授はメディアが誹謗中傷に歯止めをかけるため果たす役割は大きいと話す。

東京大学 工学系研究科 鳥海不二夫教授
「大手メディアを含め、きちんとしたところが間違った情報には『間違っている』、『正しい情報はこうですよ』、信頼を置ける形で情報を発信することは一つの大きなポイント」

立花氏が指摘するメールの“でっちあげ” 担当職員が否定

立花氏は、謝罪動画を出した後もなお、「竹内県議がでっちあげをしていた」との主張は変えていない。

立花孝志氏(1月20日公開)
「とにかく竹内議員が、かなりでっちあげをしていた。特に、彼自身が元県民局長の奥様に代わって、百条委員会あてに送ったメール」

でっちあげの事例として挙げた一つが、告発者である元県民局長の妻が県議会の議事課に送ったメールだ。

元県民局長の妻が送ったメール
「主人が最後の言葉を残していました。そこには一死をもって抗議をするという旨のメッセージ。そして、百条委員会は最後までやり通してほしいことが記されていました」

メールは7月12日に届いた。生前のメッセージが残っていることは、7月11日の早朝5時に新聞で報じられた。その2時間後、竹内さんがブログで記事をそのまま引用した。

立花氏はメールが届く前に竹内県議がブログを書けたのは、彼自身がメールを偽造したからだと主張している。

立花孝志氏(1月20日公開)
「元県民局長の妻のメールを、なにか偽造したのではないか」

メールの送付先である議事課が、報道特集の取材に応じた。

議事課の職員
「奥様からいきなりメールが送られてきたわけではありません。元局長が亡くなられた後、奥様からこういうメールを送りたいというお話があり、ご本人と3回やりとりした上で送信されてきたので、奥様の意思で送られたものに間違いありません」

斎藤知事の“要望”は事実か?「マスコミがちゃんと取材し報道していたら…」

さらに立花氏は、竹内さんが「ゆかたまつり」について、事実無根の追及をしてきたと主張する。

立花孝志党首(1月20日公開)
「事実無根のゆかたまつりなんかの、事実ではない根拠をもとに(知事を)責めてた」

2023年に姫路市で行われた「ゆかたまつり」。夏の風物詩に、姫路市長らと並び斎藤知事も出席。

その際知事は他の来賓と同じように、地元の公民館でボランティアによる着付けを受けることになっていた。しかし、竹内さんはブログでこう指摘した。

「知事は着付けを当日直前にキャンセル。他の来賓とは別に自分だけ着付けができる専門店に行って着付けした。公費で払うことになり、秘書課が負担することになった」

その後、百条委員会の県職員アンケートで「知事が激高し、翌年度から出禁」になったという回答内容が公開されると、それがあたかも竹内さんの発信としてネットに拡散され、立花氏も「竹内県議がデマをまき散らした」と投稿した。

現場で何が起こっていたのか。姫路ゆかたまつりの当日、知事をアテンドしていた芳賀一也氏が取材に応じた。

ゆかたまつり奉賛会 芳賀一也氏
「(Q.知事はボランティアスタッフの着付けで着る予定だった?)それは間違いない。婦人会にお願いして、着付け経験のある方お願いしますっていう」

他の来賓が公民館で着付けを受けるなか、知事は呉服屋で衣装を借りたいと言い出したと証言する。

ゆかたまつり奉賛会 芳賀一也氏
「わがまま言ったとか僕は全く知らんけど、当日午後2時くらいに電話があったのは間違いない。(Q.その電話の内容は?)要するに、衣装借りたいって知事が言っているから、(呉服屋を)紹介してくれと」

直前のキャンセルと呉服屋での着付け。竹内さんの発信に誤りはなかった。しかし、真偽不明の情報はネットで広がり続けている。

ゆかたまつり奉賛会 芳賀一也氏
「僕ら現場の人間からすると(知事は)めっちゃ機嫌良かった。ボランティアに罵声かけたん?そもそも公民館行ってへんから。あの時にマスコミがちゃんと取材して、何が正しくて何が間違ってるのかをちゃんと報道してたら、SNSに振り回される必要なかった」

立花氏に問うと…「”でっちあげ”というか僕は”疑惑”と言ったつもり」

立花氏は一体何を根拠に、竹内元県議の主張を「でっちあげ」、「事実無根」としたのか。直接、立花氏を問いただした。

日下部正樹キャスター
「『ゆかたまつり』は問題ですか?」

立花孝志氏
「『ゆかたまつり』が問題かどうかについては、私自身は実際ツイートした人からも姫路で名刺をいただいて、ただ正直こんなものを、そもそもあの(元県民局長の告発の)7つの文書に入っていない。だから全く取材していません。どうでもいいです」

元県民局長の妻が県に送ったメールについては…

立花孝志氏
「県民局長の奥様の遺書というか陳述書についても、公になる前に竹内さんは自らのフェイスブックで出しておられた。これが本当に県民局長の奥様が作られたものなのか疑惑がかかっているということです」

竹内さんがブログに掲載していたのは遺書や陳述書ではなく、それを報じた産経新聞の記事だった。「でっちあげ」と発言したことを問いただすと…

立花氏「でっちあげというか僕は疑惑と言ったつもり。(竹内氏は)疑惑に対してちゃんと弁明されたらよかった」

日下部キャスター「『でっちあげ』と絶対どこかで見た」

立花氏「疑惑とでっちあげとなると、ちょっと印象が違いますよね。僕でっちあげなんて言ってませんよね。疑惑ですよね」

立花孝志氏のYouTube(1月20日)
「とにかく竹内議員がかなりでっちあげをしていたことは、多くの人はわかっていらっしゃると思うので」

「デッチあげ」とホワイトボードに書き、発言していたにも関わらず、動画を公開したわずか4日後の24日「疑惑と言ったつもり」と発言が変わった。

立花氏「僕はそういう疑惑があるということを言っているだけ。そんなことに対して僕は別に興味がないから言ってないもん」

日下部キャスター「急に興味がなくなっちゃった」

立花氏「いやいや、そんなに強く興味がないから。疑惑であって、興味がないと言っているのは、間違えないで欲しいのは、その疑惑の真相を追究するほどの興味がないって意味です」

竹内元県議めぐる投稿「50%は13個のアカウントから」 “情報”どう見るべきか?

竹内さんを批判する投稿は減ったが、2か月にわたって残り続けていた。東京大学の鳥海教授は…

山本恵里伽キャスター
「なぜ批判は持続性を持ってしまったのでしょうか」

東京大学 工学系研究科 鳥海不二夫教授
「一般的な炎上は3日あると収まるといわれています。今回のケースだと立花氏とかがいろいろ動画で話していた。ずっと情報を出し続けている人たちが一定数いたということで、その影響がかなりあったのではないか」

批判的な投稿が1年間で11万回以上拡散された一方で、発信した人の数は…

東京大学 工学系研究科 鳥海不二夫教授
「今回の場合は、それほど多くのアカウントから発信されたというわけではなかった。拡散された全ポスト数に対して、50%ぐらいは13個のアカウントから発信。2番目に拡散が多かったアカウントは立花氏のアカウントだった」

立花氏以外のフォロワー数の多い人が拡散に関わっていたことも投稿数が増えた要因だと分析した。

東京大学 工学系研究科 鳥海不二夫教授
「今の情報空間はこういうものなんだときちんと理解したうえで、情報を摂取していくことを考えないと、同じようなことがまた起きるのではないか」

東国原氏がXに投稿した理由

タレントで元宮崎県知事の東国原英夫氏(67)は、竹内英明元県議が亡くなったというニュースをネットで知った直後、「警察から事情聴取もされていたと聞く」とXに投稿した。こうした発信がデマを拡散したという認識はあるのだろうか。

元宮崎県知事 東国原英夫氏
「そういう話も“聞く”がという表現にしたが、真偽不確かであるということで反省して、反省の文と削除をさせていただいた」

投稿の根拠として、竹内さんが県警から話を聞きたいと言われていたという情報をみたという。

山本キャスター
「竹内元県議が『事情を知りたいと警察からいわれている』という話はどこで見聞きしたのですか」

元宮崎県知事 東国原英夫氏
「ネットです」

山本キャスター
「ネットの情報ということですね?」

元宮崎県知事 東国原英夫氏
「そうです。信憑性にかける、真偽不明というならそうかもしれませんが、そういう状況証拠を全体として自分なりに判断して。(県関係者の知人から)『どうも事情聴取を受けたということは事実らしいよ』と聞いたので、私はネットに書き込みました」

山本キャスター
「事実ではなかったことを投稿したということですよね」

元宮崎県知事 東国原英夫氏
「そういうことになるんですかね。疑惑があるというのは、僕の解釈です、疑惑があるというのは事実」

東国原氏は、不確かな情報であっても自分なりに精査すれば“疑惑”として発信することは問題ないという認識を示した。これは立花氏の主張と共通する。

元宮崎県知事 東国原英夫氏
「疑惑があったことが事実なら『疑惑がありましたよね』と書く。疑惑が本当かどうかまでは追及できません」

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