年収を上げるために子どものうちにやっておくべきこと3選「スポーツ・リーダー・非認知能力」

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-03-23 10:00
年収を上げるために子どものうちにやっておくべきこと3選「スポーツ・リーダー・非認知能力」

子どもの将来の年収を左右する要因として、従来は学力や偏差値が重視されてきた。
しかし、最新の経済学研究ではそれ以外の要因が影響を与えていることが明らかになっている。

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慶應義塾大学の中室牧子教授は、子どものうちにやっておくべきことについて次の3点を挙げる。
1. スポーツ経験を積む
2. リーダーシップ経験を得る
3. 非認知能力を高める

これらの要因が将来の収入にどう結びつくのか、具体的な研究結果で見ていく。

スポーツ経験が将来の収入を押し上げる

「スポーツ経験がある人は、平均的に見ると将来の収入が高いということを示すエビデンスというのが、複数発表されています」

具体的な研究例として、パデュー大学のジョン・バロン教授らの研究がある。
アメリカの高校の課外活動でスポーツをしていた男子学生と、していなかった同級生を比較したところ、卒業から11年から13年後の収入に大きな差が見られた。

「4.2%から14.8%も高いという研究結果が出てきています」

では、なぜスポーツ経験が収入増加につながるのだろうか。中室教授は、企業の採用傾向に着目する。

「実は採用の時に、企業がスポーツをやっていた人たちを積極的に採用しているのではないかという研究もあるんです」

企業がスポーツ経験者を好む理由として、コミュニケーション能力の高さや勤勉性、体力があると思われていることなどなどが挙げられる。
これらの特性は、職場での活躍につながりやすいと考えられているのだ。
ただし、中室教授は注意点も指摘する。

「パデュー大学の研究に関しては、比較的古い時代の研究です。なので、この研究も男子生徒に限定した研究でしたが、女子生徒はどうなのでしょうって話ですよね」

今後、管理職や採用権限を持つ人々の多様性が増すにつれ、この傾向が変化する可能性もある。

リーダーシップ経験が収入を大幅アップ

次に注目すべきは、リーダーシップ経験だ。
中室教授は、カリフォルニア大学の研究を引用しながら、リーダーシップの重要性を強調する。

「高校時代になんらかの活動でリーダーになった経験がある人というのは、卒業から11年後の収入が4%から33%も高いという研究がある」

この研究は、40万人の高校生を対象に、高校生活の過ごし方を約400問の質問で調査し、その後の人生を追跡したものだ。特に興味深いのは、リーダーシップ経験の効果が現れるタイミングだった。

「大体卒業してから10年後以降に大きく収入に影響を与えるということがわかっています。これはちょうど管理職になるような年齢です」

つまり、高校卒業から10年後、中間管理職に就く頃に、高校時代のリーダー経験が花開いて収入に良い影響を与えはじめるのだ。
これは、早い段階でのリーダーシップ経験が、将来の職場でのリーダーシップ発揮につながることを示唆している。

ただし、ここで言うリーダーシップは必ずしも大規模なものである必要はないという。

「この研究からわかるように、リーダーシップというのは、生まれつき“ある人”と“ない人”というふうに分かれているのではありません。リーダー経験を積んで身につけていけるものです」

したがって、小さな機会からでもリーダーシップを発揮する経験を積むことが重要だ。
クラス委員や部活の部長といった役割はもちろん、遠足の班長や兄弟の面倒を見るなども、リーダーシップスキルを磨く良い機会となる。

非認知能力の重要性

最後に、中室教授が強調するのが非認知能力の重要性だ。
非認知能力とは、学力テストでは測れない能力のことを指す。

「例えば勤勉性があるとか、あるいは責任感が強いとか、魅力が高いとか、思いやりがあって優しいとかが非認知能力というものの総称ということなんです」

近年の経済学研究では、この非認知能力が将来の収入に大きな影響を与えることが明らかになっている。
年収につながる非認知能力は具体的に、忍耐力、自制心、やり抜く力が挙げられる。

中室教授は、カナダのモントリオールで行われた研究を紹介する。

「問題行動が顕著な7歳から9歳の男児に対して、非認知能力を伸ばすというトレーニングを行ったわけです」

この研究の結果、問題行動が減少し、非認知能力が向上しただけでなく、大人になってからの年収が上昇したことが分かった。

非認知能力を伸ばす方法として、中室教授は音楽や美術活動を挙げる。

「音楽を弾く、音楽を奏でる、絵を描くということは意思決定の連続なのです」

また、好奇心を伸ばすことも非認知能力の向上につながる。
中室教授はトルコで行われた教育プログラムの例を挙げ、子どもの興味を引き出す工夫の重要性を説明する。

「宇宙に関する短いショートビデオを見せて、子どもたちがあっと驚くような動画にして、子どもたちに何を疑問に思ったのか、どんなところが驚いたのかを話させる」

このような探究的な活動を通じて子どもたちの好奇心を刺激し、自ら学ぶ力を育むことができる。

多様な経験が将来を左右する

ここまで子どものうちにやっておくべき3つのことを見てきた。
スポーツ経験、リーダーシップ経験、非認知能力の向上は、いずれも将来の収入に大きな影響を与える可能性がある。

中室教授は、これらの要素が重要視される背景について、次のように説明する。

「偏差値とか学力が、子どもたちの将来を予測する精度が低いことを経済学者は最近学ぶようになった」

つまり、従来重視されてきた学力や偏差値以外の要素が、実は子どもの将来に影響する可能性がある。

親や教育者は、子どもたちにこれらの経験を積ませることの重要性を認識し、バランスの取れた成長を促すことが求められる。
ただし、すべての活動を詰め込むのではなく、子どもの興味や適性に合わせて選択することが大切だ。

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