能楽のスーパースター・世阿弥の子孫がCMナレーションを担当!「佐渡島、忘るべからず。」観光誘致キャンペーンキックオフイベント
佐渡汽船、JR東日本、日本航空(JAL)の交通三社と佐渡市、新潟県が官民連携でこの春から展開する観光誘致キャンペーン「佐渡島、忘るべからず。」。そのキックオフイベントが3月24日に東京・銀座の観世能楽堂で開催されました。佐渡市の渡辺竜五市長も来場した会場では、同キャンペーンのテレビCMでナレーターを務める能楽師の観世三郎太さんが舞囃子を披露。さらに佐渡島出身で前文化庁長官の宮田亮平さんを交えたトークショーも行われ、新たなキャンペーンの始まりにふさわしい、佐渡の魅力がたっぷり伝わるイベントになりました。
東京から最短3時間25分!世阿弥ゆかりの地・佐渡島が新キャンペーン
新潟港からフェリーで片道2時間半、高速船なら1時間少々で行くことができる佐渡島。豊かな自然の中で独特の文化が築かれてきた島は、室町時代に能楽を大成させた世阿弥が晩年に配流された地でもあり、そのゆかりから今も島内には国内全体の3分の1にあたる36件の能楽堂が点在しています。本キャンペーンのタイトル「佐渡島、忘るべからず。」も世阿弥の著作『花鏡』に残された言葉「初心忘るべからず」を由来とし、テレビCMやYouTube広告などで一度訪れたら忘れることのできない佐渡島の魅力を訴求します。

銀座の観世能楽堂を会場に行われたキックオフイベントでは、まず始めに主催者を代表して佐渡汽船の松本順会長が挨拶。

「昨年『佐渡島の金山』がユネスコの世界文化遺産に登録された効果で観光のお客様が増えてきているのは確かですが、それでもまだ一度も佐渡にお越しになったことのないという方がとても多いことに変わりはありません。それはなぜかというと、ほとんどの方がまだ佐渡島の本当の魅力をご存知ないからだと思っています」と最初に述べた松本会長は、その上で「今回のテレビCMは、そうした方々に向けて知られざる佐渡島の魅力をお伝えすることを主な目的としています」と本キャンペーンの狙いを強調。「この官民一体の取り組みを通じて、佐渡島が長い期間に渡って多くの方々に訪れてもらえる島になってほしいと思っています」と話しました。
佐渡島ゆかりの人・世阿弥の子孫、観世三郎太が能の舞を披露
続いて3月20日から首都圏を中心に放送中のテレビCMが上映された後、本CMでナレーションを担当している観世流シテ方能楽師の観世三郎太さんが登場し、舞囃子『野守』を上演。

世阿弥の直系子孫であり、その芸道と精神を受け継ぐ存在として今回のナレーターに起用された観世さん。佐渡に流された晩年は「鬼の芸」を追求したという世阿弥の“鬼能”を代表する演目を演じる姿からは、CMの声から伝わる柔和な雰囲気とは異なる鬼気迫った空気が伝わってきました。

演技の後には、世阿弥の言葉を子孫の自分が語るという“約600年越しの祖孫共演”について「『初心忘るべからず』というのはもとは芸道の教えであり、世阿弥の実体験に基づいた言葉なので、その言葉をただ読むのではなく、一言一言を自分にあてはめながら大切に読ませていただきました」と思いを語ってくれた観世さん。テレビCMの映像は本記事の最後に掲載しているURLからも見られるので、ぜひチェックしてみてください。
前文化庁長官と佐渡市長の“佐渡愛”が爆発
後半は、佐渡島出身で文化庁長官や東京芸術大学学長を務めた宮田亮平さんと佐渡市の渡辺竜五市長を交え、観世さんとの三名によるトークショーを実施。脚の負傷により車椅子姿で登場した宮田先生のユーモアあふれるトークを中心に、宮田先生と渡辺市長それぞれが推す佐渡の「文化・歴史」「自然継承地」「グルメ」が紹介されました。

「文化・歴史」では、宮田先生が「長谷寺」「薪能」「古民家の宿」、渡辺市長が「鬼太鼓」「妙宣寺の五重塔」「北沢浮遊選鉱場跡」を紹介。
このうち「長谷寺」を紹介した宮田先生は、「長谷寺」「清水寺」という京都、奈良の古刹と同じ名前の寺が佐渡島にあることに着目し、「数々の方が佐渡島に流された際、京を想って同じ名前の場所を作らせたんです」とその理由を説明。“流刑地”というと過酷な境遇という印象がありますが、実際には位の高い人々が家来ごと流され、その影響から雅な文化が花開いたという、それだけではない側面を解説しました。

一方で、新潟県唯一の五重塔である「妙宣寺の五重塔」をおすすめにあげた渡辺市長は、「ここは夜に行くと星空の景色と相まった最高の景色が見られるんです。また、境内には2メートルくらいの赤松の柱が立つ本堂があるので、併せて見ていただくと島の文化を分かっていただけると思います」と思いを熱弁。

次に「自然継承地」のテーマでは、宮田先生が「二ツ亀」「金北山」「佐渡島近海のコブダイ」、渡辺市長が「岩首昇龍棚田」「宿根木」をそれぞれ推薦。
その中で「二ツ亀」をおすすめにあげた宮田先生は、「ここはトビシマカンゾウが丘一面に咲く景色が本当に素晴らしいんですよ」と話し、「昔は今のような道がなかったから学生の頃にがんばって見に行った時は本当に感動したな〜」と青春時代を回顧。それに同調した渡辺市長も「昔は船で行ったんですよね」と当時を懐かしみ、二人揃ってノスタルジーに浸る姿が見られました。

また、国の重要伝統的建造物群保存地区である「宿根木」をあげた渡辺市長は、「ここは船大工たちが生活していた集落で、北前船で佐渡に来た船乗りたちが休む場所にもなっていました。船の板を張っている家など、いろんなところに船大工の技術が見られますよ」と語り、さらに「北前船が見られる場所は日本じゅう探しても珍しいです」と、同地区の博物館で見られる千石船の復元展示もしっかり宣伝。
観世さんも「忘るべからず」な佐渡の魅力に納得
そして「グルメ」では、宮田先生が「La Plageのフレンチ」「御宿 花の木の手料理」「佐渡の日本酒」、渡辺市長が「佐渡芋汁鯛御膳」「佐渡バターを使ったスイーツ」をイチオシ。
ここで「佐渡の日本酒」をあげた宮田先生は「佐渡島には5つの酒蔵があるんですよ」と話しながら、自身がパッケージデザインに携わった北雪酒造の商品をこっそりPR。「ほかにも真野鶴、真稜、金鶴、天領盃と皆さんそれぞれのこだわりを持っているので、ぜひいろいろ試してみてください」と、お酒にも詳しい佐渡通ぶりを見せつけました。

一方で「佐渡芋汁鯛御膳」をあげた渡辺市長は、庶民の味として親しまれた芋汁と奉行の食事として供された鯛料理というを合わせ、二百数十年ぶりに復活させた江戸時代の佐渡島名物をリコメンド。さらに「佐渡島に来たら“プラチナに輝く”お米を楽しんでください」と、独特の表現を交えながら佐渡島のお米のおいしさもアピールしました。

トークの終わりには「佐渡島には子どもの頃に一度訪れたのみ」という観世さんが、二人の話を聞いてまた佐渡島に行ってみたいと思った気持ちをパーセンテージで採点。「世阿弥が見た景色にも興味がありますし、魚もスイーツもお酒も大好きなので、いろんなところを巡ってご先祖様への思いに耽ってみたいです」というコメントを添えて「200%」という満点以上の点数が飛び出すと、佐渡島の魅力をしっかり伝えられた二人の顔にご満悦の表情が浮かんでいました。
【「佐渡島、忘るべからず。」CMムービー】
https://sadotimes.sadokisen.co.jp/tvcm/