神奈川県藤沢市のユニバーサル農園

今回は「ユニバーサル農園」の取材報告です。
「ユニバーサル農園」とは、障害の有無や性別、世代を超えて、さまざまな人が農業体験を通じて社会に参画できる農園のことです。
障害の有無や性別、世代を超えて、さまざまな人が農業体験を通じて社会に参画できる農園
先日取材したのは、神奈川県藤沢市にある都市型ユニバーサル農園「かわうその郷」です。
ここでは「仲間をつくり、植物と接して、幸せになろう」を合言葉に、参加者が野菜作りなど農作業を楽しみながら、豊かな地域を創り出していくことを目指しています。
収穫体験イベントをしていたこの日、加藤ディレクターもまずほうれん草の収穫に挑戦しました。
土の中の根をハサミで切るのが難しく、そのコツをかわうその郷で普段から農作業をしている、19歳のスズキさんが丁寧に教えてくれました。
(収穫の様子より)
じゃあ始めていただいて、分からない所は利用者の方、職員の方いますのでその方に聞いてください。
(鈴木さん、ハサミの入れ方もう一回見せてもらっていいですか?)
はい。えっと、斜めで思いっきりぶすっと。必ず開いてグスっ。そう、開いて。そんな感じでやれば大丈夫です。音がカチって鳴るんですよ。
(あ!音がした)
完璧です。合格です。
(ありがとうございます)
地中にほうれん草の根が伸びているので、ハサミの刃先を開いたうえでしっかりと土に突き刺さないと根を切れません。
ですが、スズキさんが何度も教えてくれたので、スーパーで売られているほうれん草二束分くらいの収穫ができました。
(持ち帰って美味しく食べました!)
取材した加藤ディレクター
「広い空の下でスズキさんに教わりながらほうれん草を獲るのは気持ちがよくて、私は普段土を触る機会が無いのでとても楽しかったです。収穫の喜びも一緒に共有できました。初対面の私にも楽しくお喋りをしてくれたスズキさんが、とても生き生きしていたので普段の「かわうその郷」での、農作業の楽しいことを聞いてみました」
スズキさん
「(ここは何年くらい来てるんですか?)2年目です。(ここ楽しいですか?)めっちゃくちゃ楽しくて、幸せだなって。幸せな場所だなって。(何してる時が幸せですか?)草むしりですね。小さい頃からずっとやってて。女の子だったら土は遊ばないでしょってお母さんに言われたんですけれど、大人になってみると土遊びが楽しいなって」
野菜の収穫、そしてブドウの苗を植える体験
「かわうその郷」でのユニバーサル農園の取り組みは、神奈川県と社会福祉法人光友会・神奈川ワークショップとの連携で去年から行われています。
この日は、県のホームページなどから申し込んだ一般の参加者およそ10人と、光友会の皆さんと一緒に、障害の有無や世代を超えてほうれん草やネギの収穫体験のほか、ワイン用のブドウの苗を植える作業も体験しました。
スズキさんのほかにも、私に作業を教えながらお話ししてくれた22歳のナガシマさんとも交流することができました。
ナガシマさん
「(普段は何を育てていますか?)ブドウとか野菜を獲ったりすることが好きです。例えば茄子とか獲るのが。自分で獲って持って帰ったりも美味しいし、納品で皆が買ってくれるのが嬉しいかなと思います。(食べた人からはどんな風に言ってもらえますか?)やっぱ家族で美味しいとか、新鮮だから美味しいとか。一番大変だったのは虫取りですね」
ナガシマさんは「虫取りが大変」と言っていましたが、このユニバーサル農園は無農薬で野菜を育てています。
さらに普段光友会ではこの野菜の販売も行っています。
野菜獲りの体験だけではなく、農業経験の豊かなボランティアによるサポートも受けながら手間暇かけて行う農作業で、ナガシマさん達の活躍の場も広がっています。
このユニバーサル農園「かわうその郷」を運営する社会福祉法人光友会・神奈川ワークショップの中野さんに、取り組みの反響について聞きました。
社会福祉法人光友会・神奈川ワークショップの中野さん
「やっぱり、なかなかユニバーサルっていう言葉が浸透してない中だと思うのでもう少しわかりやすい言葉であると皆来やすいのかなって思います。あちこちから、行っていいの?って声たくさん聞いているので、もう是非これを聞いてくれた人も含めていつでも来ていただければ。夏になれば田んぼもあるし、秋になれば稲刈りあるんで、お米も安く売ってますんで。是非こういうところに皆さん来て、ちょっと土いじりとかやると心が和むので、是非いらっしゃってください」
近隣住民も気軽に参加
昨年度は、この「かわうその郷」のユニバーサル農園に、近隣の住民なども参加したということです。
今年度も新たに参加者を募集する予定で、直近では4月24日木曜日の午後からスイートコーンやオクラ、エダマメの種まきをする体験イベントもあるそうです。7月にはこのエダマメの収穫もできるようです。
イベント参加の申込みなど詳しい情報は、社会福祉法人光友会や神奈川県のホームページをご覧ください。
こうした、農業と福祉の連携の取り組みで、社会参加に課題のある人たちにとっても安心していられる居心地の良い居場所が地域に増えていくことを願います。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当・TBSラジオキャスター 加藤奈央)