イラストレーター・美樹本晴彦の世界が最新テクノロジー活用で新たなアートに! 「美樹本晴彦画集『MACROSS』展〜重唱〜」

2025-07-28 14:30

株式会社GAAATは2025年7月22日(火)から27日(日)にかけて、イラストレーター・美樹本晴彦氏の企画展「美樹本晴彦画集『MACROSS』展〜重唱〜」を横浜のサブウェイギャラリーMで開催しました。

今年4月に東京・原宿で開催された「叙唱」に続く第2弾の本企画展では、3月31日に発売された『美樹本晴彦画集「MACROSS」』に収録された350点以上の作品の中から、美樹本氏自身が厳選した作品群を展示。GAAAT独自の最新テクノロジー「Metal Canvas Art(MCA)」によって制作された新たなアート作品として展示・販売されました。

会場にはMetal Canvas Artによって制作された美樹本さんの作品が多数展示・販売されました。


Metal Canvas Artとは
アルミニウムの板をキャンバスとして使用するGAAAT独自のアート技法で、専門の職人がUV塗料を何層にも重ね塗りすることで、金属ならではの光沢感や、表面に凹凸のある立体的な表現を生み出し、従来の印刷物とは異なる質感と没入感を鑑賞者に提供します。また、湿度や経年劣化に強く、耐久性・耐水性・耐光性に優れているため、作品の美しさを長期間保つことが可能です。

会期後半の7月25日(金)には、美樹本晴彦氏本人が登壇して画集の制作秘話などを語るスペシャルトークイベントが開催され、多くのファンが会場に詰めかけました。


美樹本晴彦(みきもと はるひこ)
1959年8月28日、東京都出身。アニメーター、キャラクターデザイナー、イラストレーター、漫画家として幅広く活躍。慶應義塾大学在学中に「スタジオぬえ」の企画に参加し、『超時空要塞マクロス』でキャラクターデザインを担当。これまでのアニメとは一線を画す斬新で洗練されたキャラクターは、多くのファンから圧倒的な支持を受けた。その後も『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』『トップをねらえ!』『甲鉄城のカバネリ』など、数々のアニメ史に残る人気作・話題作のキャラクターデザインを手掛ける。漫画家としても『超時空要塞マクロス THE FIRST』などを執筆。

美樹本晴彦トークイベント

トークイベントに登壇した美樹本晴彦氏は、足掛け8年にも及んだ画集の制作経緯について語りました。

当初は120〜130ページ程度の一般的な画集になる予定でしたが、編集担当者の入院や連絡が取れなくなるなどのトラブルが重なり、作業が大幅に遅延。マクロスの35周年に向けて始まった企画は、最終的に40周年も過ぎてしまったといいます。しかし、その結果、角川書店の担当者から「入れられるだけ入れて構わない」という言葉をもらい、予定を大幅に超えるボリュームの「総決算的なもの」として制作されることになりました。

制作過程では、美樹本氏の強いこだわりが随所にありました。見開きのイラストをきれいに見せるため、完全にページが開く特殊な製本方法を提案しましたが、画集には不向きという理由で断念。また、表紙が分厚い「上製本」にして、特定のページだけ紙の種類を変えるというアイデアも、予算の都合で実現しなかったそうです。

一番の困難は、古い原稿が手元にほとんど残っていなかったことでした。紛失してしまった原稿も多く、やむなく印刷物からデータを作成する必要があったといいます。その際、印刷物特有の「網点」がスキャン時にモアレ(干渉縞)を発生させる問題がありましたが、AIを活用した最新アプリを印刷所に導入してもらうことで、古い画稿も遜色ない美しい状態で収録できたと、技術の進歩に助けられたことを明かしました。

さらに、原稿の出所が自身のデータ、原画、印刷物からのスキャンのほか、ビクターや徳間書店など多岐にわたったため、編集者はその整理に大変苦労しただろうと振り返り、「五月雨式に加筆修正を送っていたので、相当混乱されたはず」と語りつつも、8年間付き合ってくれた担当者や、穏やかに対応してくれた編集者、そして印刷所やデザイナーなど、多くの関係者への感謝していました。

続いて、Metal Canvas Artによって新たなアート作品として生まれ変わった作品について、美樹本さん自身が解説してくれました。

雑誌「アニメージュ」に掲載されたイラストが元になった作品で、タイトルは「未沙・プライベートコール」。画集に収録された際には背景がありませんでしたが、今回のアート作品では美樹本氏が新たに背景を描き加えています。画集制作時には、当時の状態を尊重する意見と、2025年版として現在の基準で手直しすべきだという意見の間で議論があったそうですが、画集では元の雰囲気を壊さない範囲での修正に留められました。しかし今回のアート作品では、画集とは異なるバージョンとして、さらに積極的に手を加えることが試みられています。司会者からは、この作品の「休日の未沙」というテーマや、「未沙・プライベートコール」というタイトルも美樹本氏と共に考案されたことが紹介され、画集とはまた違った雰囲気を持つ作品として楽しめると述べられました。

この「横顔」という鉛筆画の作品をいつ描いたか美樹本氏は正確には覚えていませんが、挿絵を鉛筆で描いていた時期のものだろうと推測しています。現在ではあまり描かない画風ですが、イベントでライブドローイングを行う際の元絵として同様の鉛筆画を描くことはあるそうです。美樹本氏自身はこの作品を気に入っているものの、画集の制作時には編集者から当初あまり評価されず、収録を希望したところ最初は小さく扱われたという経緯があったとか。しかし、最終的には1ページ大で掲載され、人によって評価が分かれる作品の代表例だと語りました。

「ツイン・ボーカル」と題された『マクロス7』のイラストです。テレビシリーズ放送当時、アニメーターによる優れたキャラクターデザインに影響され、自分の絵柄とのバランスが取れず、キャラクター、特に熱気バサラを自身のスタイルで描くことに美樹本氏は非常に苦労したそうですが、やがて時間が経ち、オリジナルの作品を描くように気楽な気持ちで描けるようになったと語りました。2014年に発売されたブルーレイボックスのジャケット用に2枚で1つの絵として描かれたこのイラストでは、手描きのような質感を出すために、凹凸のある画用紙に鉛筆で描いたテクスチャをスキャンし、デジタルで重ねるというCGの一般的なツールに頼らないアナログ的な手法が用いられているそうです。

コミック版『超時空要塞マクロス』の扉絵として2012年に描かれたものが元になった作品で、タイトルは『看板娘!』。美樹本氏によると、制作当時、テレビシリーズのキャラクターをそのまま描くのではなく、現代風にアレンジし、可愛らしいポーズが取りやすい絵柄を意識したそうです。ちなみに、この作品は横浜会場限定の展示・販売となっており、横浜の中華街がテーマになっています。背景のチェス盤のような模様は、版画化にあたり新たに追加されたもので、特にピンク色については、より明るく可愛らしい印象になるよう、入念な調整が重ねられたことが明かされました。

質疑応答では多くのファンから質問攻めに

今回のイベントでは多くのファンの皆さんとコミュニケーションを多くとりたいという美樹本さんの要望があり、なんと合計90分のイベントの3分の2の60分が質疑応答にあてられました。リアルタイムでマクロスを観ていたという往年のファンから、美大進学を目指している学生まで、多くのファンの皆さんからたくさんの質問が投げかけられ、その一つひとつに美樹本さんは真剣に回答していました。

マクロスシリーズの最初の作品『超時空要塞マクロス』の放映がスタートしたのは、記者が中学1年生の秋のこと。あれから43年の月日が経つというのに、リン・ミンメイというキャラクターのことは鮮明に覚えています。でも実は、それってすごいこと。それほどまでに人の脳裏に焼き付くほどのキャラクターを生み出した美樹本さんは偉大です。今回のトークイベントで、初めてその姿をお見かけしましたが、想像していたよりダンディで、物静かだったことに驚きました。きっと集まったファンの皆さんも同じように感じたのでは。そして、自分の生み出したキャラクターに真摯に向きあう姿勢に感動したことでしょう。東京、横浜と続いた美樹本さんの企画展の次なる開催地は大阪。西日本の美樹本ファンはお楽しみに。


美樹本晴彦画集『MACROSS』展 〜合唱〜
会場:大阪(なんばマルイ2F / 3F 特設会場)
会期:2025年8月13日(水)〜9月9日(火)
開催時間:11:00〜20:00

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