自民議員63%が“態度示さず” どうなる?総裁選の前倒し“多数派工作”活発化する見通しも【Nスタ解説】
自民党の総裁選は前倒しされるのでしょうか。
【写真で見る】神田法務政務官の“決意”の表情 総裁選前倒しに「政務官を辞任しても賛成」
JNNが自民党全国会議員に独自アンケートを行ったところ、前倒しへの態度を示していない議員が大半で、石破総理側と退陣を求める勢力の間で今後、“多数派工作”が活発化する見通しです。
自民党総裁選前倒しは 6割以上が態度示さず
高柳光希キャスター:
総裁選の“前倒し”実施には、衆参の国会議員295人と、都道府県連の代表者47人を足した総数342人の過半数172人の賛成が必要となります。
では何をもって「賛成」になるのかというと、▼署名・捺印をした書面が必要となります。さらに、▼原則では議員本人が党本部に提出する必要があるということです。この書面は、議員の氏名を公表した形で提出されます。
この過半数の賛成をもって総裁選の前倒しとなるわけですが、体調不良や海外にいるなどの理由で提出できない方もいると思います。その点はどうなのでしょうか?
TBS報道局 政治部 橋口由侍 記者:
提出するのは本人が原則ですが、代理で持ってくることも可能になっています。
ただ、その場合は選挙管理委員が本人に「この書面は実際のものか」電話をして確認した上で受け取るという、厳格な対応をとることになっています。
高柳キャスター:
JNNでは自民党総裁選を前倒しでおこなうべきか、アンケートをとりました。対象は295人の国会議員で、回答があったのは219人です。
【自民党総裁選の前倒し】
・態度示さず:137人
・おこなうべき:49人
・おこなう必要がない:19人
・その他:14人
回答:自民議員219人
このように、全体の約6割以上が態度を示していません。なぜここまで多くの議員が煮え切らない反応なのでしょうか。
TBS報道局 政治部 橋口由侍 記者:
直近のJNN世論調査でも、石破総理について「辞任すべき」という回答は43%でしたが、「辞任する必要なし」と答えている方は47%に上っています。
※JNN世論調査 8月2日・3日実施
有効回答:1003人
国会議員が地元に帰っても、地元の有権者から似たような反応を受けているということが取材でわかっています。「石破総理は辞めるな」という声のなかで、あえて氏名を公表して総裁選の前倒しに賛成することはリスクが高く、足踏みする議員が多いのは事実です。
「前倒し賛成」に名前の公表が必要な理由とは?
高柳キャスター:
提出する書面で名前の公表が必要というのも大きなポイントですね。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
2つ理由があると思います。
▼まず表向きの理由として、総裁という最高権力者の身分に関わることなので、議員1人1人が氏名を公表して明確にしましょうというのが1つです。
もう1つの理由は、▼もし今後も石破政権が続くのであれば「前倒し総裁選を行うべきだ」という意思を鮮明にした人は、「残念ながら次の人事では要職にはつけませんよ」という一種の脅しだと思います。
これをきっかけに、自民党の中は“国民不在のバトル”に入りつつあるということです。
井上貴博キャスター:
参議院選挙が終わったあとから、「誰が責任を取るんだ」という自民党内のゴタゴタをいつまでやっているんだろうと感じます。時間の浪費でしかないので、ルールを決めてできないのかと思います。
たとえば国政選挙の終了後、党内で総裁選をやるかどうか決めておき、党所属議員と都道府県連の皆さんに連絡して…というように、迅速に出来ないのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
自民党は「総裁の良識に基づいて判断する」という、今までの古いルールに縛られているわけです。
たとえば日本維新の会は、国政選挙のあと「投票しましょう」ということになっています。本来ならそういうルールを作る時期ですよね。
自民党内でもさまざまな意見 政務三役に対しけん制も
高柳キャスター:
総裁選の前倒しをするべきか、しないべきか、それぞれの意見も聞きました。
【自民党議員の意見は】
前倒しすべき
「石破さんが総裁にいることが党の分断を招いているのは事実」
前倒し必要なし
「総裁選を行えば、国民に目を向けず政局に走っていると思われる」
党内でも、さまざまな意見が出ていますね。
TBS報道局 政治部 橋口由侍 記者:
賛成表明が難しいというなかでも、特にハードルが高いといわれているのが、現職で石破内閣に入っている政務三役です。
実際、ある政権幹部は「政務三役に入っている人は、前倒しに賛成するのなら役職を辞めてから署名してもらうほうがいい」とけん制しています。
そういったなかでも、神田潤一法務大臣政務官は「『職を辞してから賛成を表明するべきだ』というふうに言われたら、辞職を前提に態度を表明するということが今の時点ではあり得る」と言っています。
高柳キャスター:
神田政務官について、「政務官」というポジションから考えるとどうでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
職を辞して、賛成するというのが筋だと思います。
しかし、こういった動きが広がるかどうかは、そうとも言えないかもしれません。ポストにしがみつく人が多いですからね。
井上キャスター:
時間をかければかけるほど、自分のポストや次の選挙で勝てるのか、今は国民からどう見られているのかなど、自分のことばかりで国民のことを考えていないように感じてしまいます。
一刻も早く国会を開いて、政策の話をしてほしいです。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
7月20日の参議院選挙後、▼戦後80年談話も出せず、▼ガソリン減税も動かず、▼給付・消費減税もまったく動いていないということを真面目に考えてほしいですよね。
出水麻衣キャスター:
「辞任すべきでない」と考えている半数ぐらいのなかには、「ゴタゴタはいいからとにかく政策をやってくれ」という思いの方もいますよね。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
あとは「裏金議員たちの暗躍に負けてたまるか」という政局的な思惑と、両方混じっています。
今後の見通し 体制を整えることが急務…?
井上キャスター:
「結局何もやってくれないの?」という思いが強いですが、橋口記者は取材していてどう感じますか。
TBS報道局 政治部 橋口由侍 記者:
まずは、自民党内できちんと体制を整えることが求められます。
自民党と公明党の少数与党になって物事が進まず、野党と協議をして進めていかなければなりませんが、体制が整うまでは野党も協議に参加しにくいです。まずは自民党の体制をきちんと立て直すことが大事だと思います。
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<プロフィール>
橋口由侍
TBS報道局政治部 与党キャップ
総理官邸・外務省・防衛省などを取材
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年