男子100m代表の大東大・守祐陽、天国の母に誓う「恥じないような走り、いい走りをしたい」【東京世界陸上】

9月13日に開幕する東京2025世界陸上。男子100mの日本代表争いは熾烈を極めた。7月の日本選手権を制し、8月には8年ぶりとなる9秒台をマークした桐生祥秀(29、日本生命)、世界陸上2大会連続ファイナリストのサニブラウン アブデル ハキーム(26、東レ)とともに代表入りを決めたのが、現役大学生の守祐陽(21、大東文化大)。日本陸上界期待のニューフェイスが、世界陸上への意気込みと母への思いを語った。
【一覧】9月13日開幕『東京2025世界陸上』日程&出場選手
初の日本代表入り 守祐陽21歳
中学で陸上を始めた守は、市立船橋高校3年生の時にインターハイに出場し、100mで8位入賞。大東大3年で迎えた織田記念ではパリオリンピック™代表の東田旺洋らを抑え初優勝、今年5月の関東インカレで、追い風参考ながら9秒97をマーク。7月の日本選手権では7位と表彰台は逃したが、8月3日の富士北麓ワールドトライアルで10秒00を叩き出し、世界陸上参加標準記録を突破した。
8月下旬、埼玉県の大東大キャンパスで練習に励む守を訪ねた。
守祐陽:こんなにカメラ向けられるの初めてなので(笑)
Q.現在の調子はいかがですか
守:すごく調子がいいまま練習ができているので、ある程度疲労も溜めて調子の波を作っている状態なんですけど、ここから疲労を抜いていけばしっかり世界陸上で結果を出せる状態になるかなと思っています。
Q.入学当初は10秒00や世界陸上の候補になっている、そんな未来は想像できてました?
守:全くできていなかったです。日本代表になりたいと思い始めたのは大学3年生から4年生くらいの本当に去年くらいからだったので、こういう形になるとは思っていませんでした。
指導者は語る「高い可能性を持った選手」
守はそう謙遜するが、入学から4年間指導してきた陸上競技部短距離ブロック監督の佐藤真太郎氏は、その素質を早くから見抜いていた。
佐藤監督:
大学1年生の時に、関東インカレの200mで2番になって、その時に強い先輩の選手がいる中で、その人にくっついて走れたのは、高い可能性を持った選手だと感じました。100mではなく200mで結果を残せたのが強く印象にあって、200mをしっかり走れて100mがメインの選手だっていうことが非常に大きな強みで、まだ100mに対しての転換していく能力、伸びしろが大きくあるということでもあるので、そういったことが今回、守が10秒00を出したことに繋がっている。高校時代も400mを走るマイルリレーをやったり、200mも走れたり、市立船橋高校で様々な種目にチャレンジして結果を残している。そういった所は大きな期待値を1年生から感じましたし、高校の先生の指導方針が大きかったかなと思います。
大学では“いじられキャラ”??
炎天下の中、和やかな雰囲気で練習は行われていた。
チームメイト:普段はふざけているキャラですよ。そんなに真面目じゃないです(笑)
守:真面目です、真面目です!
チームメイト:ちょっとなんか、いつもと様子が違う。
周囲:(爆笑)
守:いやいや、違うよ、違うやん。ちょっと緊張しちゃって。
チームメイト:緊張って感じでいくんだ?
守:やりにくい(笑)
チームメイト:キャプテンとしては良かったです。しっかりしていました。
守:他はダメみたいな(笑)
日本代表でもアルバイト
どうやら“いじられキャラ”の一面もあるらしい守。そんな彼は、コーヒーショップのチェーン店でアルバイトもしているという。
Q.アルバイトは今もしているんですか?
守:全然入ってないんですけど忙しくて。(8月3日の)富士北麓の10日前ぐらいに本当に久しぶりみたいな感じで、1週間に1回ずつ入って。本当に幽霊バイトみたいになっちゃってて。すごくお店には申し訳ないんですけど、ずっと名前を置いてくれているので、いつでも連絡してみたいな感じだったので。迷惑かけてばっかりです本当に。
Q.アルバイトはどれくらい続けているんですか?
守:大学1年生の2月からなので、2年半くらい。でも一時期めっちゃ入らなかった時期とかあるので、ガッと1回空いて、入ってみたいな感じでやっているので、本当に店長さんには申し訳ないなって感じです。
Q.“日本代表”となったら、お店も応援してくれているのでは?
守:(世界陸上に)出場するかもってなってから、もう入れていなくて。店長さんに連絡したらすごく喜んでくれたラインが来たんですけど。出る前に1回お店に行こうかなと思っているので、報告は絶対したいなと思っています。
Q.今後も大会までは入らない?
守:そうですね。練習もまだあるので、申し訳ないんですけど本当に。店長さんに感謝って感じです。
自身のたゆまぬ努力と周囲の支えで、初の日本代表入りを果たした守。彼の原動力とはー。
守選手の原動力、今は亡き母の存在
Q.守選手が陸上をやる上で原動力はありますか?
守:もちろん走るのが好きっていうのもありますし、一つの原動力っていうか、母がいつも天国で見てくれていると思いながら頑張っていますし、周りの親戚だったり家族がすごく応援してくれているので、その人たちのためにも、結果を出したらすごく喜んでくれるので、その人たちのためにも頑張らないとなっていう気持ちはあります。
守が高校に入学した直後、母は病気で亡くなった。
Q.お母さんの言葉や教えで、今も大切にしてることは?
守:高校入学前に「インターハイに行ってね」っていう言葉をかけられたのは覚えていて、頑張ろうっていうのは思いました。
※市立船橋高校3年時にインターハイに出場し、100m8位入賞。4×100mリレー4位(2走)、4×400mリレー7位(4走)。
Q.世界陸上で、お母さんにどんな姿を見せたいですか?
守:日本代表になってるって言ったら本当に喜んでくれるはずなので、その姿を見せたいっていうのもありますし、いい走りをしないと怒られるので(笑)恥じないような走りをしたいと思っています。変な走りは絶対見せたくないので。父もそうですし、親戚のみんなも多分見てくれていると思うので、絶対いい走りはしたいなと思っています。
9月の東京・国立競技場。憧れの大舞台で守はどんな走りを見せてくれるのだろうか。
守:(世界陸上は)ずっとテレビで見ていましたし、いつかは出たいと思っていた憧れの舞台です。9秒台を出すなら世界陸上の舞台でと思っていますし、初めての世界陸上、国際大会の日本代表となるので、あまり気負わず日本の観客の皆さんに良い走りをお見せできればなと思います。