「保護犬」と学びあう受刑者たち…広島・尾道刑務支所の取り組みにカメラが密着「人に優しくできるようになった」 変わり始めた受刑者たち【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-10-04 15:12

殺処分を免れた保護犬たち。人間との共存を支援するための取り組みが意外な場所で始まっています。様々な事情を抱えた人間と保護犬。触れ合いを通じたそれぞれの成長の記録です。

【写真で見る】少しずつ受刑者に心を開き…元野犬のパクス

年間約2000頭が殺処分 保護犬たちのシェルター

広島・神石高原町にある動物保護シェルター「ピースワンコ・ジャパン 神石高原シェルター」には、飼い主に捨てられたり、野犬として保護されたりした、犬たち約150頭が飼育されています。

ピースワンコ・ジャパン 安倍誠 プロジェクトリーダー
「野犬の状態で今まで過ごしていた。人工的な部屋に入ったこともない。人間と触れ合ったこともない。

全国で今、環境省で公表されているのがもう2000頭以上、殺処分。その殺処分の方法っていうのも、炭酸ガスでの窒息死ですね」

このシェルターにいる犬たちの多くも、殺処分される予定でした。

人に慣れていないことが多い保護犬は、このシェルターで訓練を受けて、里親を探すことになります。

受刑者の新たな更生への取り組み“保護犬プログラム”

雑種のパクスは推定1歳6か月の雄です。殺処分される前に保護され、シェルターに来ました。

ピースワンコ・ジャパン 尾島李雅龍 飼育員
「今は緊張して怖がっている。本当は天真爛漫で、実はすごい人も大好き。一緒にボールで遊んだりとか、人と一緒に何かをするのが大好きな子です」

そんなパクスが車のトランクに乗せられ、向かったのは…なんと「尾道刑務支所」

刑務官
「ただいまから“保護犬プログラム”を開始します」

無免許運転などの道路交通法違反罪や窃盗罪などの罪を犯した、初犯の受刑者が多く収監される刑務所です。

この刑務所では、2024年12月から犬の保護や里親探しに取り組む団体と提携して、受刑者が「保護犬」を訓練するプログラムを行っています。全国でも珍しい取り組みです。

ピースワンコ・ジャパン 尾島李雅龍 飼育員
「同じ人ばっかりお世話していると、その人だけに依存してしまって、いざ新しい家族を見つけてお世話をしても、なかなかうまく信頼関係を築けない。

小さいうちからいろんなところに行って、いろんな人に触れ合ってもらうのは、ワンちゃんにとっても大事です」

受刑者たちは団体のトレーナーから指導を受け、犬と接していきます。
目標は、トレーナーがいない環境でも受刑者だけでハーネスを付け、一緒に散歩できること。

人に飼われた経験がある「保護犬」は順調に訓練をこなしていきますが、元野犬で人に慣れていないパクスは、キャリーケースから出てきません。

受刑者
「おやつをいただいても…」

大好物のおやつを目にしても、出てこようとしないパクス。キャリーケースの上部を取り外すしかありませんでした。

散歩訓練では、受刑者がリードを引きますが、全く動きません。

パクスの不安を感じ取り、寄り添うのが30代の受刑者です。「自分を変えたい」との思いで、このプログラムに臨んでいます。

受刑者は「不安や孤独を感じながら生きてきた」と言います。

受刑者
「誰にも大事にされんかったから、誰も大事にできん人間になって、そのまま刑務所に入ったっていう感じですね。

関わる人に、人間ってよるんだろうなって思います。犬もそこは一緒なんだろうと、あの子たちを見てると思いますね」

両親から愛情を受けずに育ったという受刑者。パクスの境遇に自分を重ね合わせ、心を通わせようとしますが…

受刑者
「(パクスと)接していると、目もあいませんし、呼びかけても反応もしてくれない」

プログラムが始まって日が浅いためか、パクスは心を開きません。

このプログラムは、保護犬とのふれあいによって、受刑者の更生につなげる狙いもあると担当刑務官は語ります。

尾道刑務支所 津村刑務官
「一番傷ついているのは事件の被害者ですが、傷つき体験を持った受刑者も多くいますので、傷つけられた保護犬に関わる中で、生命の尊重や他者に優しくできるという気持ち、役に立っているという自己肯定感。

そういったものを感じてもらうことで、受刑者の改善更生とか社会復帰に向けての強い動機付けにつながっていくんじゃないか」

怖がる保護犬…苦戦する受刑者 初の“泊まり訓練”での変化

それから1か月後、受刑者が準備をしていたのは、パクスのための餌や水。

この日、里親に引き取られた後の生活を想定した“泊まり訓練”が行われました。

ピースワンコ・ジャパン 仁尾愛美 チーフトレーナー
「この1泊2日が受刑者とパクスだけの生活。パクスもこういった環境が初めて。どういった感じになるか、私たちもちょっと想像がつかない」

津村刑務官
「パクスが体調不良になったり、そういった事態がなければいいな」

「保護犬」と受刑者が同じ部屋で寝泊まりするのは、尾道刑務支所でも初めての取り組みです。

指導役のトレーナーや刑務官が不安を口にするなか、受刑者は…

受刑者
「人を馬鹿にして笑う以外、何もできないような人間でした。どうせ自分は大したことできんし、『別にいいや』みたいな。なんかあったらすぐに逃げることを考えて、ものすごく弱かったです。(パクスと)1日一緒におって、少しは慣れてくれるといいなと思いながら」

ここまで、うまくコミュニケーションがとれていないパクスと受刑者。期待と不安が入り混じる中、就寝を迎えました。

受刑者
「一番びっくりしたんですけれど、朝起きたときに、様子見がてらケージに入って撫でていたら、手を舐めてくれまして。

普段こんな感じなんだろうなっていう面が見られたので、それが嬉しかったですね。ようやく何か怯えている顔以外が見られた」

この日は、屋外で散歩訓練も行われました。少しぎこちないですが、パクスが受刑者の隣を歩いています。

受刑者
「人と一緒に歩くことがないんだなっていうのは思うんですけど、こうやって回数こなして練習していくしかないんだろうなと思う。最終的にはちゃんとお散歩が本当にできればなと思います」

「外で生きて良い理由の一つに」変わる受刑者と保護犬

初めての“泊まり訓練”から1か月が経った2025年6月。

パクスはこれまで、自分から外に出たことはありませんでした。しかし、“泊まり訓練”をともにした受刑者がリードを付けると、パクスが初めて自ら外に出てきたのです。

ピースワンコ・ジャパン 仁尾愛美 チーフトレーナー
「だいぶ心を許しているというか。ハーネスとかブラッシングしてもらってるときに、受刑者の皆さんの臭いを嗅いだりしていて、プログラムを1回ずつ受けるたびに、パクス自身も、この人知ってる人たちって分かってきているので。

まだ緊張はしてますけど、緊張の度合いが違うかなと見ていて思います」

前回はぎこちなく歩いていたパクスですが、今回はうまく受刑者と散歩ができました。

受刑者
「(Q.こんなに歩いていました?)全く。しかもパクスこっちって言って先導したら、ちゃんと動くようなってるんで、ちゃんとお散歩できるようになってる。びっくりしました」

パクスの成長に驚く受刑者。自らの変化も感じています。

受刑者
「犬と接して優しくしてると、人に優しくできるようになったというか。二度と入らないために努力しようと思ってます。(パクスの存在は)もう強い支えですね。今月も頑張ればパクス来る、来月も頑張ればパクス来る。本当に励みになってます。

外に出たらどんなかたちになるか分からないが、保護犬の活動には参加させてもらいたい。大げさな言い方になるんですけど、自分が外で生きていっていい理由の一つにしたい」

受刑者と保護犬を見守ってきた刑務官は…

津村刑務官
「普段の生活の場でも、辛いこととか苦しいことがあったときでも、いついつには保護犬の指導があるし、それに向けて頑張っていこうであったり、ちょっとした些細なことであっても、協調性や他者への気遣いとか、芽生えてきているんじゃないかなと実感しています」

全国に広がる「保護犬プログラム」

上村彩子キャスター:
犯罪に手を染めてしまう裏には、家庭環境が複雑に絡み合っていることも多いです。愛情を与えて、そして、相手の心情やペースを慮る経験というのを、保護犬を通して得られるのは受験者にとって意味のあることなのではないかなと思います。

喜入友浩キャスター:
この保護犬プログラムですが、現在、国内2か所の刑務所で行われていますが、全国14の刑務所でも導入を検討しているそうで、広がりを見せそうです。

一方で、現場の課題となっている“再犯率の高さ”。検証が必要ですが、現場としては新たな被害者を生まないために、これまでとは違った更生の道を探っている段階です。

上村彩子キャスター:
そして、このプログラムは保護犬にとってもいい訓練になります。普段とは違う環境で多くの人と触れ合って、人に慣れる経験は必要不可欠です。

受刑者の更生、そして、保護犬にとっては新しい家族との出会いに繋がる…そんな結果に期待したいです。

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