漫画「じゃあ、あんたが作ってみろよ」作者・谷口菜津子氏が語る 男女のすれ違いとジェンダーの“見えない圧力” 【ドラマTopics】

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2025-11-17 11:00
漫画「じゃあ、あんたが作ってみろよ」作者・谷口菜津子氏が語る 男女のすれ違いとジェンダーの“見えない圧力” 【ドラマTopics】

男女のすれ違いや家事分担をリアルに描き、各漫画賞で注目を集めている「じゃあ、あんたが作ってみろよ」。

【写真で見る】火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』より

ぶんか社「comicタント」で連載中の本作は、「CREA夜ふかし漫画大賞2024」1位、「Renta!マンガ大賞2024」新時代恋愛マンガ賞、「このマンガがすごい!2025」オンナ編4位、「楽天kobo電子書籍Award2025」入賞と、数々の賞を受賞している。

第26回手塚治虫文化賞・新生賞受賞の受賞歴を持ち、日常の中にある“違和感”を優しくすくい上げる作風で支持を集める作者・谷口菜津子氏が、作品に込めた思いやキャラクター誕生の背景を語った。

きっかけはラジオから

執筆を始めるきっかけの一つは、お笑いコンビ・ラランドのラジオ番組だった。リスナーでもある谷口氏は、火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)で個性爆発美容師・吉井渚を演じるサーヤと対面した際を「ただ笑い合った感じでした」と振り返る。

「(相方の)ニシダさんにご迷惑をかけていたら申し訳ないなと思って、ちょっとおわびしたのですが、サーヤさんはまったく気にしていない印象で。“ありがとう”的なことをおっしゃっていたかもしれません。ファン過ぎてあまり覚えていなくて、記憶が飛んでいるんです(笑)」。

登場人物のキャラクター設定について問うと、「言語化しないで描いている」と谷口氏。「キャラクターの行動をつないでいく中で、“この人ならこうするだろうな”という感覚で動かしているので、意識的に『大切にしよう』と思って描いたことはあまりなくて」と語る。無理に“テーマを語らせない”ことで、キャラクターの自然な息づかいが生まれているという。

担当編集者とは主人公の2人について、「海老原勝男(竹内涼真)の少しダサいファッション」や「出身地の設定」など、細部を話し合いながら形にしていったという。「山岸鮎美(夏帆)は中高生の頃、雑誌の“モテテク”特集を熟読していたような子」という裏設定もあるそうだ。

土地柄ではなく、“背景の一つ”として描く

勝男の出身地を大分県とした理由について尋ねると、谷口氏は少し考えてから答えた。

「この作品の構想が始まった2022年、担当編集者さんと“出身地があるほうがいいですね”という話になり、担当編集者が大分県出身だったこともあり取材もしやすそうなので大分県が出身地という設定にしました。」。

一見シンプルな設定に見えるが、その背景には“地域らしさ”をどう描くかというテーマがあったという。

「ただ、『九州男児だからこうだ』という固定観念をそのまま当てはめたわけではありません。読者の方からは『九州男児=こういうものだ』という声もあれば、『そんな人ばかりではない』という声もあって。それらを受けて、“この地域だからこう”、という答えを作るつもりはなく、むしろ“地域によってジェンダーの圧力が残っているかもしれない”という問いを作品に織り込みたかったんです」。

都内でも、出身地に関係なくジェンダーや価値観の圧を感じる場面がある。
「だからこそ、勝男という人物を通して、“地域背景=万能”という図式にはしたくなかった。それが私なりのリアルな視点でした」と語った。

男性読者からも届いた共感の声

読者から寄せられるSNSでの反応も、欠かさずチェックしているという。「連載中は“こんな男はいない”“今の20代にこういうタイプはいない”という声もあって、“そうなのかもな”と思っていたんです。でも今回、ドラマを通じて“自分の中にも勝男がいる”という感想を見つけて、描いていたことはそんなに的外れじゃなかったのかもと思いました」。

そんな中で、思わぬ言葉にも出会った。「“老害”って初めて言われたんです(笑)。37歳なのですが、そんなふうに見られるとは思っていなくて。でも、誰かがそう感じたなら、それも事実なんだろうなと受け止めました。これから年齢を重ねていく中で、若い人にお節介をしていないか、価値観の変化にちゃんと向き合えているかを考えるきっかけになりました」。

谷口が特に印象に残っているエピソードとして挙げたのは、ドラマでは第5話で描かれた勝男と兄・鷹広(塚本高史)との関係が分かる場面。

「男性の読者から“すごく良かった”という声をいただいて。担当編集者も男性ですし、主人公を男性にしたことで、男性にも届く物語にしたいという思いがあったので、うれしかったです」と明かす。

男女のすれ違いを“対立”ではなく“共存”として描く

本作のリアルな“価値観のすれ違い”描写について、谷口氏は「鮎美と勝男、どちらか一方が悪いという描き方をしないように意識している」と話す。

「どの作品でもそうですけど、何か問題が起きた時に“どちらかが悪”ということは、あまりないと思っていて。今も勝男と鮎美の関係の中で、どちらかが悪いとか、どちらかに比重が乗ることはあるかもしれません。でも、問題が起きた時にお互いが同時にそれを取り除こうとすることが大事なんです。私の中では、“片方が変われば解決”ではなく、両方が少しずつ改善していくことで問題が解けていく、という考え方があるんです。たぶんその考え方が、作品にも出ていると思います」。

一部の読者からは「実は鮎美が原因だったのでは」という声も寄せられるが、谷口氏はその見方にも慎重だ。
「そういうことではなくて…本当に難しいのですが、だからこそ漫画で描いているんだと思います。鮎美の家庭環境や見てきたもの、そして勝男との閉鎖的な関係性――いろいろな背景が重なって問題が生まれている。だから、どちらかが悪いとか、どちらかだけが変われば解決、というものではないんです」と語る。

登場人物を一方的に裁くことなく、それぞれの視点から“リアルなズレ”を丁寧に描く谷口氏の筆致。そこには、現代の夫婦関係やジェンダー観の複雑さを真正面から見つめるまなざしが息づいている。

もし鮎美と勝男の“その後”を描くなら? そう問うと、少し笑いながら「離婚後の2人とか」と話す。「“老害ショック”もあったので(笑)、30代後半になった2人を描くのも面白いかもしれません。今の自分の年齢に近いリアルを見た作品になりそうです」。

谷口氏のまなざしの先には、常に“変わっていく人たち”の姿がある。“その後”を描く日も、そう遠くはないかもしれない。

谷口氏が描く本作は、“変わっていく人たち”の物語。「鮎美が自分の足で悩みに向き合う巻になる」と谷口氏が語る最新第4巻は、12月10日(水)に発売予定だ。
完璧ではない登場人物たちが、それでも少しずつ歩み寄ろうとする姿は、現代を生きる私たちの姿と重なる。「どちらが悪い」「どちらが正しい」ではなく、互いの違いを見つめ直す――。
そんな視点を持つことの大切さを、物語を通して静かに伝えている。
切さを、物語を通して静かに伝えてくれる。

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