「三浦半島で宿泊を」新たな観光の形“地域まるごとホテル”、高齢化が進み「消滅可能性自治体」に指定…持続可能なまちづくりとは【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-11-19 20:38

三崎のマグロなど、関東屈指の観光地として知られている神奈川県の三浦市。実は、コロナ禍や建物の老朽化で宿泊施設の閉館が相次ぎました。

【写真を見る】地域全体を1つのホテルに 特徴的なホテルの数々

また、東京から車でおよそ1時間半という近さゆえに、日帰り観光客の割合が増えていて、県が行ったある調査では、去年、三浦半島を訪れた観光客が宿泊した割合はわずか1割ほど。

宿泊者は日帰り観光客の4倍以上も消費単価が高いというデータもあり、観光客の滞在時間を増やそうと三浦半島では、地域全体を1つのホテルに見立てたある取り組みが始まっています。

持続可能なまちづくりとは一体どんな取り組みなのか、取材しました。

築150年の商店をホテルに 港町・三浦が仕掛ける新戦略 

東京から車で約1時間半の神奈川県三浦市。
1990年代には、約5万4000人いた人口は、現在は約3万8000人と年々減少しています。

一方で、休日の街には多くの観光客が訪れています。名物の“三崎のマグロ”が、お目当てです。しかし…

都内・横浜からの観光客
「日帰りを予定してます。この後鎌倉に行こうかなと思ってます」

都内からの観光客
「日帰りで来られちゃうので」
「気軽に今日は来たって感じで」

日帰りの観光客ばかり。夕方になると、昼の賑わいが噓のように静まり返ります。

かつて、三崎漁港を中心に港町として栄えた三浦市。宿泊する観光地としても人気でした。

しかし、コロナ禍や老朽化を理由に宿泊施設が次々と閉館。3割近くいた宿泊客は約1割に。

そんな中、新たに始まった取り組みが、三浦の街をひとつのホテルとする「地域まるごとホテル@三浦半島」です。
地元企業が中心となり、県の支援を受けて、2025年から始まりました。そのホテルが、特徴的なのです。

ミウラトラスト 中川康太さん
「葉山商店という、ロープや網とか漁で使う道具が売られていた建物」

築約150年の建物がホテルなのです。

山形純菜キャスター
「失礼します。素敵。木の香りが感じられます。歴史を感じますね、ちょっと穴が開いていたり。お住まいだったんですもんね」

空き家だった建物をリノベーションして客室にしています。

ミウラトラスト 中川康太さん
「ファンよりさらに上を見ると、昔の滑車が…」

山形キャスター
「本当だ!あれ滑車なんですね」

こうしたリノベーションホテルを、三崎港地域で7か所展開しています。

宿泊費は、1泊当たり素泊まりで1人1万5000円~(※6名で宿泊の場合)と、少しお高めです。あえて、“食事なし”なのが「ポイント」なのだそうです。

「素泊まり」の狙いと、驚きの“宿泊者限定”サービスとは

山形キャスター
「ご飯はどうすればいいですか?」

ミウラトラスト 中川康太さん
「基本的には、僕らは街を歩いてもらいたいので、店をおすすめさせていただいたりとか」

“ホテルのレストラン”は街にある、たくさんの飲食店です。山形キャスターがチョイスしたのは、地元で獲れた海の幸が味わえる和食居酒屋、「サカナと酒菜 だ枠」。今が旬の「カワハギの肝和え」を頂きました。

山形キャスター
「おいしい!身がしっかりしまっていますね。すごく新鮮です」

実はこのお店、宿泊者限定で驚きのサービスがあります。

サカナと酒菜 だ粋 森大樹 店主
「おいしいカワハギが入ってくるところ見たいですか?」

山形キャスター
「見ることできるんですか?」

サカナと酒菜 だ粋 森大樹 店主
「朝市場に行ってみることができるんです」

こちらのお店は、店主の朝の買い付けに同行できるんです。

サカナと酒菜 だ粋 森大樹 店主
「かわはぎは肝が大事なので、ふっくらして大きそうな方がいいですね」
「タイは、ここのアイシャドウ、(目の上の部分が)青いじゃないですか。これがくっきりあった方が、鮮度がいい」

観光から移住へ「住みやすいところだと感じてもらいたい」

宿泊者限定の特別な体験は他にもあります。

平安時代に創建された「海南神社」では、普段は入れない本殿を見学し、参拝することができます。歴史ある神社を守る米田さんには、こんな想いが…

海南神社 米田郷海 宮司
「三浦の良さを全国・全世界に知ってもらい、住みやすいところだよと、みんなに感じてもらい来てもらう」

「街を未来につなげたい」との想いは、確実に広がっています。

三浦ブルワリー 小松哲也 代表
「若い人たちは、都内・関東近県に仕事を求めて、出て行ってしまうので。やっぱり一番大きな課題だと思います」

三浦市の土地に惚れこみ、2年前にブルワリーを開業した小松さんは、街に新たな産業を生むべく、三浦産の小麦を使ったビールを開発しました。

三浦ブルワリー 小松哲也 代表
「一つのランドマークとして、ここからいろんな新しいものを発信できたら面白いなと思っています」

「消滅可能性自治体」に指定 再起のために必要なものとは

山形純菜キャスター:
三浦市は、2024年に「消滅可能性自治体」に指定されました。
「消滅可能性自治体」とは、2050年までの30年間で20歳〜39歳の女性が50%以上減少すると予想される自治体のことです。

高齢化も進んでいて、2005年に23.9%だった高齢化率は、2025年には42.1%まで上昇しています。(2005~2020年は国勢調査、2025年は三浦市のデータより)

今回取材した三浦ブルワリーの小松哲也代表は、「地域に若い人があまりおらず、採用に苦労した。足を運んでもらって魅力を知ることで、若者が移住するきっかけになれば」と話していて、「地域まるごとホテル@三浦半島」の取り組みに賛同しています。

12月には、“泊まれるブルワリー”として、三浦ブルワリーの2階に「Tap Inn MIURA」という宿泊施設をオープンするそうです。料金は1人1泊1万5000円〜(素泊まり)で、お部屋にビールサーバーがついていて、クラフトビールが飲み放題です。

このように地域が一体となって、魅力を伝えていく取り組みを行っているということです。

井上貴博キャスター:
今の映像を見ていても、地元の方の熱がすごく伝わってきて、魅力的に感じます。

最近の外国人観光客の流れを見ても、華美なところに行きたがってるというよりも、その街の物語や、熱を感じに行っているように思います。
しかも今、ネットやテクノロジーで世界に発信できるので、そういった意味ではどこにでもチャンスはあるのかなとは思います。

「The HEADLINE」編集長 石田健さん:
2つポイントがあります。1つは、シンプルにSNSでそういった発信をできてないというところです。
もう1つは、先ほどのカワハギもそうですが、「体験をやりたい」というときに、ランドオペレーターと呼ばれる、その街の魅力を伝える人の不足があります。

ランドオペレーターは、外国語が堪能な人でなくても、Google翻訳だけでも(良くて)、本物の人たちが語っているということがすごく大事です。どの自治体の人と話しても、そうしたランドオペレーターが足りていないと言います。

ランドオペレーターを増やすことによって、東京や京都以外から、その近隣に行ってもらえます。
逆に東京に来た人は、三浦に30分〜1時間で行けるので、そういったところにこそ観光資源としてのチャンスがあると思います。

地元の人が気づかない“価値”を観光資源に

山形キャスター:
三浦半島の「地域まるごとホテル」の取り組みは、三浦市だけでなく横須賀市エリアでも行われています。

横須賀市にある浄楽寺は、800年以上の歴史があり、国指定の重要文化財の仏像も安置されている、由緒あるお寺です。

泊まれるのは、築100年以上の建物を改装した部屋で、昔ながらの雰囲気を味わうことができます。
食事は近くのレストランで、地元の食材を使った料理が楽しめます。

宿に泊まるとできる特別な体験が、まず朝の読経です。さらに仏像を彫ることもできます。こうして歴史や文化に触れあって、地域の魅力を感じてもらいたいということです。

出水麻衣キャスター:
海外の人が大好きな体験じゃないでしょうか。まさに今流行りの「マインドフルネスを実践できる」ということで、打ち出すべきですね。

「The HEADLINE」編集長 石田健さん:
こうした、地元だとなかなか(価値に)気付けていないものを、どうやって広げていくかというところで、まだまだやりようがありそうですね。

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<プロフィール>
石田健さん
ニュース解説メディア「The HEADLINE」編集長
鋭い視点で政治・経済・社会問題などを解説

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