子育て中のママが“支援者”を支える新しい仕組み 認定NPO法人サービスグラントが進めるメンタリングとは

2025-12-03 08:00

NPOの活動現場では、人と向き合う時間が長いからこそ、支援する側が孤立したり、悩みを抱え込んでしまったりすることが少なくありません。誰かの力になりたい思いがあっても、相談できる相手がいないまま日々の業務に追われ、気づけば疲れが溜まってしまう…。そんな“支援する人の孤独”に光を当てる取り組みがあります。

認定NPO法人サービスグラントでは、子育て中の女性たちが2人1組の「メンター」としてスタッフに伴走し、仕事やキャリアの悩みを整理したり、次の一歩を一緒に考えたりするプログラムをスタートしています。仕事の経験だけでなく、育児の中で自然と身につく“聴く力”を活かして、オンラインで月2回、3か月間にわたり寄り添っていく形です。

支援の対象となるのは、地域や社会課題に向き合うNPOの職員や運営者の方々。支援者が元気でなければ、必要とする人に適切な支援が届きにくくなるという現場の課題に向き合うものです。さらにこの取り組みは、参加するママたちにとっても社会とのつながりを取り戻す機会になり、自分の経験が誰かの力になっている実感を得られる点でも注目されています。

“誰かを支える人を支える”。そんな新しい視点から生まれたこの試みは、支援現場と子育て世代の双方にやさしい循環を生み出しつつあります。この記事では、その背景や取り組みの特徴を紹介していきます。

NPOで働く“支援者”が抱える現場の課題

NPOの活動は、地域の孤立や格差拡大など、行政だけでは届きにくいところに手を伸ばす重要な役割を担っています。特にコロナ禍以降、孤独・孤立の深刻化や物価高騰などの影響も重なり、支援を必要とする人は増え続けています。その一方で、現場で働くスタッフの多くが人手不足や業務の負荷に直面しており、相談できる相手が見つからないまま日々の課題解決に向き合わざるを得ない状況が続いています。

実際に、NPOの約6割が「人材の確保・育成が難しい」と感じている調査結果もあります。大切な支援を届けたい思いがあっても、スタッフの孤立や疲労が積み重なることで、活動が思うように前へ進めなくなるケースは少なくありません。支援の必要性が高まるほど、支援者自身のケアが後回しになってしまう。そんな矛盾を抱えた現場にこそ、新しいサポートの仕組みが求められています。

子育て中のママが“聴く力”で伴走するメンタリングとは?

支援の現場で働く人たちに寄り添うために生まれたのが、子育て中の女性がメンターとして参加するメンタリングプログラムです。特徴的なのは、メンターが専門家ではなく、育児や仕事の経験を積んできた「身近な社会人」であることです。子どもの話を丁寧に聞く日々の中で自然と磨かれる“聴く力”や、人との関わりを大切にしてきた姿勢が、悩みを抱えるNPO職員にとって大きな支えになります。

メンターは2人1組で活動し、オンラインで月2回、約3か月にわたって伴走します。形式的なアドバイスをするのではなく、相手の話を聞きながら整理を手伝い、気持ちの負担を軽くしたり、次に進むためのヒントを一緒に探したりするのが役割です。距離を置いた立場だからこそ見える視点や、生活者としての実感を持った言葉が、話し手の安心につながっていきます。

また、この取り組みはメンターとなるママたちにとっても、新しい一歩を踏み出す機会になっています。育児中心の生活の中で社会とのつながりを感じにくくなることがありますが、自分の経験が誰かの支えになることで、役に立てている実感や前向きな気持ちが芽生えるという声が多く寄せられています。日常の延長にある“聴く力”が、支援の現場で確かな価値として活かされている点が、このプログラムの大きな魅力です。

参加者に生まれた前向きな変化

これまでに参加したママたちからは、メンタリングを通じて得られた手応えがいくつも届いています。多くの方が口にするのは、「自分の力が人の役に立っていると実感できた」という声です。家事や育児の中で身についていく力は、社会の中でどのくらい通用するのか分かりにくいものですが、実際に誰かの悩みに寄り添い、前向きな変化につながった瞬間は大きな自信につながります。

また、普段の生活では出会わない人の話を聞くことで、自分自身の視野が広がったという声もあります。NPOの現場では、地域や社会課題に向き合う人たちの想いや葛藤が間近に感じられ、その姿勢に刺激を受けることも少なくありません。メンター同士がペアで活動する仕組みも特徴で、相手の進め方や言葉の選び方から学ぶことが多かったという意見が目立ちます。

定期的に誰かと話す機会ができたことで、自分自身の気持ちを振り返る時間になったという声も印象的です。育児中はどうしても自分のことを後回しにしてしまいがちですが、メンターとしての時間が“自分を見つめ直すきっかけ”として前向きに働く場面もあるようです。

こうした経験は、ママたちにとっても新しい成長の機会になっており、学びと気づきが連鎖する取り組みであることが伝わってきます。

NPO職員の9割が前向きな変化を実感し、受益者にも広がる効果

メンタリングを受けたNPO職員の多くが、活動に良い変化が生まれたと感じています。前年度の調査では、支援を受けた団体の満足度が100%、さらに9割が「今後の活動にポジティブな影響があった」と回答しました。日々の業務や悩みを整理することで、気持ちの余裕が生まれたり、次に踏み出すための視点が広がったりする効果が見られたようです。

また、この変化は職員自身だけにとどまりません。支援を必要とする受益者への対応にも良い影響が広がり、3000人を超える受益者にポジティブな変化が届けられたという結果も示されています。新しいアイデアが生まれ、活動が発展した事例や、企業からの協賛が得られるようになったケースもあり、現場の取り組みに新たな動きが生まれています。

職員の変化を可視化したデータでは、「自分の強みを認識できている度合い」が最も大きく向上しており、安心感や満足度も高まっていることが示されています。誰かに話を聞いてもらえることで、自分が積み重ねてきた経験や役割の価値に気づけるようになり、それが活動全体の前向きな空気につながっていると言えます。

メンタリングを通じて生まれた気づきや変化が、一団体に留まらず多くの人へ広がっていく。その連鎖が、支援者と受益者の双方に届いていることが、この取り組みの大きな成果になっています。

支援する人を支える新しい循環が広がり始めている

誰かのために力を尽くす人たちが、自分のことを後回しにしてしまうのは決して珍しいことではありません。そんな現場に寄り添うように生まれたこのメンタリングの仕組みは、支援を続けるための大切な土台を整える役割を果たしています。専門性よりも「相手の話を丁寧に聴く力」が軸になっている点も、多くの人が関われる新しいサポートの形として注目されます。

子育て中のママが誰かの支えとなり、NPO職員が前向きな気持ちを取り戻し、その変化が受益者へと広がっていく。そうした循環が自然に育っていく取り組みは、支援の現場と日常生活との距離を近づけ、新しい関わり方の可能性を感じさせてくれます。

今後も、この仕組みを通じて多様な人々の想いがつながり、地域や社会の中により良い変化が広がっていくことを期待したいと思います。


認定NPO法人サービスグラント 概要

認定NPO法人サービスグラントは、2005年に設立された非営利組織で、「プロボノ」のコーディネートを通じて社会課題の解決に貢献してきた団体です。
「プロボノ」とは、社会人が自分の経験やスキル、時間をボランティアとして提供することで、非営利団体(NPO)の抱える課題解決を支援する仕組みを指します。

サービスグラントは現在、約10,000人の登録プロボノワーカーを抱え、2,300件を超えるプロジェクト支援を実施。大小さまざまな団体と連携し、多様な社会課題に対して支援の手を差し伸べてきました。

このメンタリングプログラムも、そうした長年の経験とネットワークの中から生まれた、新しい支援の形のひとつです。

URL:https://www.servicegrant.or.jp/

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