ディナーショーや茶会は政治活動?「政治とカネ」どうあるべきか、高市氏の政治団体 総裁選前に計8000万円超支出【報道特集】

「政治とカネ」について、国会では高市総理や閣僚らに新たに浮上した問題が指摘されている。中には、ディナーショーや茶会への支出も。政治資金はどうあるべきなのか。
【写真を見る】上野厚労大臣 政治活動なのか疑問が残る支出が収支報告書に
2024年の総裁選 高市氏の政治団体が計8000万円以上支出
高市総理(11月26日)
「そんなことよりも、定数の削減やりましょうよ」
この発言をめぐって高市総理は今週、国会で追及された。
立憲民主党 吉田忠智 参院議員(12月3日)
「裏金問題の解決よりも、議員定数削減のほうが大切なのですか」
高市総理
「いずれかがより大切であるというような、優先度合いを示す趣旨でないことは言うまでもございません」
政治資金についての議論が続くなか、2024年の自民党総裁選での多額の支出が明らかになった。
総裁選挙管理委員長 逢沢一郎 議員(2024年8月)
「カネのかからない事前の準備に極力、努力・配慮をいただく」
裏金事件を受けて「カネをかけない総裁選」が打ち出されていたが、総裁選前後の期間で、高市氏の政治団体があわせて8000万円以上を動画制作や会報発送費などに、小泉氏の政治団体は約5000万円をPR会社に支出していた。
高市事務所担当者からの回答
「当方の後援会や、奈良2区支部からご入党の自民党員は全国に亘りますので、広報誌の発送も相応の金額となります」
「全国に講演や決起大会の応援等に出向く際の出張撮影費用や、動画の編集費として支払っております」
小泉氏の事務所
「政治信条を党員のみならず、国民の皆さまにご理解いただくための政治活動にかかる肖像写真の撮影、動画配信などにかかる費用であり、適正な支出です」
政治とカネの問題に詳しい上脇博之教授は…
神戸学院大学 上脇博之 教授
「自分たちが作ったルールさえも守ってない。高額の宣伝費をかけてしまう。あの時の謳い文句はどこいったんですか」
政治資金のあり方はどうあるべきか。新たな問題が次々と出てきている。
ディナーショーは政治活動? 政治資金から「会費」
高市内閣で初入閣した上野賢一郎厚生労働大臣は総務官僚出身で、2005年に初当選した、いわゆる“小泉チルドレン”だ。
裏金事件をめぐって2024年、当時の岸田総理にこう質した。
上野賢一郎 議員(2024年2月)
「自民党が具体的な政治資金規正法等の改正案を出さなければ、国会での議論は進みません」
その上野大臣が逆に今、政治資金の使い途を追及されている。
共産党 田村貴昭 衆院議員(11月28日)
「お酒を提供する場、他のお客さんもいる場で会議を行っているのか」
上野賢一郎 厚労大臣
「各界の有識者との情報交換・意見交換にかかる経費」
上野大臣の資金管理団体は2023年と2024年、東京・赤坂のスナックとクラブに31万4300円を政治資金から支出。その目的は「打ち合わせ飲食代」となっていた。
さらに地元・滋賀県でも、政治活動なのか疑問が残る支出が収支報告書にある。
滋賀県出身の演歌歌手のファンクラブに、2023年12月に1万1000円、2024年1月には1万7600円を「会費」として支出していた。
上野氏は国会で…
上野賢一郎 厚労大臣(11月28日)
「地元出身の方と応援する方はじめ、地域のみなさんが集まって会合したものに出席した会費」
滋賀県でファンクラブの関係者に取材すると、2023年はお座敷ライブ、2024年はディナーショーの参加費だったことがわかった。
ディナーショー参加者が撮影した写真には、まさにそのディナーショーでスピーチする上野氏が写っていた。
参加者の女性に話を聞くことができた。
ディナーショーの参加者
「そのとき名刺もいただきました。隣のテーブルだったんで。『ファンだから来ました』と言っていた」
「途中で帰られました、上野さんは。30分ぐらいいたかな。『次の用事があるから帰ります』言うて」
ディナーショーへの参加は政治活動なのだろうか。
ディナーショーの参加者
「おかしいよなと思う。自分が好きでディナーショー行ってるだけだから、自分の小遣いで行ったらいいと思う。自分のポケットマネーで行った方が疑われないと思う。おかしいと思います」
「うちも今度から経費で落とそうかなと思ったりもする」
「政治と直接関係ないもん、茶会は」地元からも疑問の声
国会で指摘された支出は他にも…
上野氏側が「会費」として2023年は1万1800円、2024年は1万2000円の支出をしていた長浜茶道愛交会。会長の花房房子さんが4日、取材に応じた。
長浜茶道愛交会 花房房子 会長(90)
「2人分、上野くんと秘書さんの1年分の会費です」
「茶会をしてるんです。その会費が1年間でこれだけ」
数年前、花房さんの勧めで会員になった上野氏だが、参加頻度は高くないという。
――来たときはどういうことをされる?
長浜茶道愛交会 花房 会長
「来たらお茶を飲んで帰るだけの話」
――(茶会中は)喋っちゃダメなんですか?
「そうですね、あんまり無駄な話は。お茶に関する話はいいですけどね。雑談はダメですね、茶席の雑談はダメ」
「去年だったか、奥さんやら子供やら連れて一緒に来られてましてね」
茶会が政治活動にあたるのか、花房さんは疑問に感じている。
長浜茶道愛交会 花房 会長
「政治資金として(会費を)もらってると初めて知りましたけど、私は自費で払ってると思ってますから受け取ってますけどね」
「政治と直接関係ないもん、茶会は。市民と一緒に仲良くしようという思いはいいけど、政治に繋がるということはないと思うし、私も政治のために誘ったわけではない」
上野大臣に言いたいことは?と花房さんに問うと…
長浜茶道愛交会 花房 会長
「『会費、政治資金で出してるのか』って言いますわ。そして『あんた何してんねんや』って怒ります」
地元から上がる疑問の声。上野大臣に聞いた。
――こうした会への出席は政治活動と言えるのか、政治資金から支出していたことは適切だとお考えでしょうか?
上野 厚労大臣
「ご指摘の件につきましては、法令に沿って計上させていただきました。しかしながら、今後は疑念を招かぬように、同様の支出については行わないようにしたいと考えています」
国会では、高市総理と小泉防衛大臣の政治資金をめぐるこんな問題も指摘されている。
上限額を超える寄付 高市氏の支部は“事務的なミス”と説明
立憲民主党 吉田忠智 参院議員(12月3日)
「政治資金規正法で定められた上限を超える寄付を受けていたことが、2024年分の政治資金収支報告書から発覚しました」
高市氏が代表を務める選挙区支部の収支報告書を見ると、2024年8月、ドトールコーヒーの創業者が会長を務める「鳥羽珈琲」から、法律が定める上限を超えた1000万円の寄付を受けていた。
「鳥羽珈琲」の資本金は1億円で、寄付の上限額は750万円だ。
高市氏の支部は250万円を返金した上で、「上限の一覧を添付し確認を要請していて、資本規模は満たされているものと理解していた」と説明。事務的なミスだったとしている。
小泉進次郎 防衛大臣(3日)
「大切なことは、献金を受け取った議員や政党支部が、国民の皆様に対する説明責任をしっかりと果たす」
小泉氏が代表の選挙区支部も2024年、蔦屋書店の創業者が代表の「マスダアンドパートナーズ」から、上限を250万円上回る1000万円の寄付を受けていた。
上脇教授は今週、高市氏と小泉氏に加え、寄付をした2つの企業などについても政治資金規正法違反の疑いで刑事告発した。
上脇教授は、企業・団体献金そのものに問題があると考えている。
神戸学院大学 上脇博之 教授
「(会社は)ただではお金ださない。当然会社は利益をあげるためにお金を運用しています。となると、お金を出した以上は、その見返りがほしい。特に高額な政治献金をするところはなおさらのこと」
小泉氏の支部に寄付した「マスダアンドパートナーズ」は、報道特集の取材に対し…
小泉氏の選挙区支部に寄付「マスダアンドパートナーズ」の回答
「将来を期待している自民党政治家として応援しています」
「確認が不十分であり、上限を超過しているという認識はございませんでした」
高市氏の支部に寄付した「鳥羽珈琲」は、「会長の体調不良により回答が難しい」としている。
政党交付金と企業・団体献金は「二重取り」か
企業・団体献金をめぐっては、30年ほど前に与野党のトップで合意した内容がいま議論になっている。
1993年、政治改革を旗印に誕生した細川連立政権。当時、野党だった自民党の総裁・河野洋平氏と合意書を交わした。
自民党 河野洋平 総裁(1994年 当時)
「2人で合意書に署名をさせていただきたいと思います」
税金を原資とする政党交付金の導入が決まった。そのかわり、企業・団体献金の将来の廃止とセットだったというのが、細川氏、河野氏の主張だ。
しかし2024年、当時の石破総理は…
石破茂 総理(当時)
「政党助成金を導入する代わりに、企業・団体献金は廃止の方向となったというようなこと、そういう事実は実際にございません」
これに対し細川元総理は2024年12月、JNNの取材に応じ、反論した。
細川護熙 元総理
「一言で言うと石破さんの話は、マルかバツかと言われたらバツだと思います。誰が考えても二重取りになるわけですから。企業献金が正当化されるような石破総理の言いぶりには、やっぱり私は大いに気になりますね」
「もう30年経ったんだから、もう早くそのとき決めた通りにやってくださいとしか言いようがない」
河野氏も2024年12月、国会内で講演。政党交付金は企業・団体献金の禁止とセットで、「企業・団体献金の廃止が実行されていないのは問題だ」と批判したという。
一方で、高市総理は…
高市総理(11月5日)
「政党助成金を導入した当時、企業・団体献金の禁止がセットとの約束があったとは認識しておりません」
旧安倍派幹部の元会計責任者「半分冗談、半分脅しで全部責任を負うと…」
上脇教授は、自民党の消極的な姿勢は裏金事件の解明が不十分なままになっていることにも表れていると指摘する。
神戸学院大学 上脇博之 教授
「中途半端にやってるから、自民党としても中途半端な政治改革でも大丈夫という風になっているんじゃないか。裏金事件はもう過去のことだと」
自民党の派閥をめぐる裏金事件では、元会計責任者2人が有罪になった一方で、派閥幹部の刑事責任は問われなかった。
旧安倍派幹部の会計責任者だった男性は…
旧安倍派幹部 元会計責任者
「仕方ないこと。会計責任者になるときに、半分冗談、半分脅しで、会計責任者が全部責任を負うと。この収支報告書に関しては。それがそもそも会計責任者になったときの付随したものだと思っている」
──議員の関与はしゃべらないということ?
旧安倍派幹部 元会計責任者
「言えないでしょうね。言わないでしょ普通は」
裏金作りがいつ始まり、具体的に何に使われてきたのか。解明は進んでいない。
「不断の監視」政治資金をデータベース化
「政治とカネ」の問題に解決の道筋はあるのか。シンクタンクの代表理事・西田尚史氏。国会議員など2300を超える収支報告書をデータベース化し、2025年4月に公開した。
政策推進機構 西田尚史 代表理事
「『政治家から探す』というところから高市さん、を打っていただくと、高市早苗さんの欄が出てきて」
例えば、高市氏の場合、自身が代表をつとめる「新時代政策研究会」と「選挙区支部」、2つの政治団体がある。データベースでは、2つの団体の収入と支出の合計や内訳が一目でわかるようになっている。
西田代表理事
「2023年度に収入総額は1億円集められている」
一方、企業・団体側についても、献金先の一覧がわかる。
西田代表理事
「『日本医師連盟』を検索してみると、『日本医師連盟』が出てきて。突出して大きい額、総額でいくと2億9740万円。献金ないしパーティー券の購入をしている。政治団体もそうですが、どの政治家にいくら出しているのか、ランキング形式でわかるような形にしている」
西田氏がこのシステムで分析すると、主要5政党への企業・団体献金の総額の約96%が自民党だったという。
西田代表理事
「こういうデータベースがあって、初めて不断の監視ができる。それはコストをかけずにできるものだと思うので、維持していきたい」
さらに、“政治資金をまる見えにする”、という政党も出てきている。
「政治資金まる見え」プログラムを無償公開
2025年7月の参院選で、初めて議席を獲得した「チームみらい」の党首・安野貴博氏。
AIエンジニアでもある安野氏は、「まるみえ政治資金」をうたい、ホームページで全ての収入と支出を公開しているという。
「チームみらい」党首 安野貴博 参議院議員
「全ての出入金ということで、通帳みたいな感じ。全部ここで出ているお金を1円単位で見ることができる」
銀行口座やクレジットカードなどのカネの動きを、会計ソフトを通じてほぼ自動的に公開する仕組みだ。
安野貴博 参議院議員
「これくらいシステムをがっちり固めている場合、例えば銀行口座に振り込まれたけれども不記載になることは、わざわざ除こうとしないと起きない」
安野氏は、このシステムのプログラムを無償で公開していて、政治資金の透明化をより進めるべきだと主張する。
安野貴博 参議院議員
「日本の戦後の政治史上、色々な(政治とカネの)事件が起きては、ちょっとだけ政治資金規正法が改正されるというのが続いている」
「政治とカネの問題よりも、話し合うべき課題はいっぱいある。だからこそ問題が起きないような仕組みをしっかりと作って、政治家の活動に埋め込んでいくべき」