省エネ法改正で企業の太陽光導入は加速するのか? 意欲72%の一方で立ちはだかる“導入できない理由”とは

カーボンニュートラルの実現が、世界的な競争力の指標として語られるようになって久しい。とりわけエネルギー消費が大きい企業にとって、再生可能エネルギーの導入はもはや選択ではなく“責務”となりつつある。その中でも比較的導入しやすいとされる太陽光発電は、多くの企業が事業所や工場での活用を視野に入れ始めている分野だ。しかし、実際にはその普及スピードは想像ほど速くない。現場では、意欲と現実のあいだに横たわる大きなギャップが依然として存在しているのである。
こうした状況を踏まえ、沖電気工業株式会社(OKI)(https://www.oki.com/jp/)が「省エネ法改正における企業のGX推進と、太陽光発電導入の意識・課題」に関するアンケート調査を実施した。対象は、企業の環境対策やエネルギー管理を担う特定事業者の担当者約400人。省エネ法改正やGX推進が求められる中、今まさに意思決定の最前線に立つ人々である。本調査では、多くの企業が太陽光発電の導入・増設に前向きである一方、設置条件やコスト面など複合的な課題によって導入が進みづらい現実が浮かび上がった。
半数の企業が未導入、高い壁に阻まれる太陽光発電

まず把握しておくべきは、現在どれほどの企業が太陽光発電に取り組んでいるかである。調査では、49.9%が「設置している」、50.1%が「設置していない」と回答し、導入状況はちょうど半々に分かれた。すでに一定数の企業が活用している一方、まだ導入できていない企業も過半を占めていることが分かる。
では、なぜ導入が進まないのか。その理由として最も多かったのが初期費用の高さ(41.4%)である。続いて、設置スペースが限られている(40.4%)、建物構造や耐荷重に制約がある(33.1%)といった物理的な制約が挙げられた。さらに、管理・メンテナンス負担(29.7%)、近隣住民への反射光など影響(18.7%)など、企業を取り巻く多様な課題も浮き彫りになった。
意欲はある。しかし、コストや設備条件といった現場の障壁が意思決定を阻む構図が明確に示されている。
障壁さえ無くなれば導入加速、企業の期待は85%

課題が多いにもかかわらず、企業は太陽光発電に対して前向きな期待を抱いていることも明らかになった。「従来の設置方法にとらわれず、設置可能性が広がる手法があるなら、省エネ法改正への対策がしやすくなると思うか」という質問では、「とてもそう思う」31.1%、 「ややそう思う」54.3%と、約85%の企業が前向きな姿勢を示したのである。
これは、例えば
・屋根以外の場所に設置するソリューション
・運用リスクを抑えるPPAモデル
・耐荷重や反射光の問題を回避できる技術
など、設置の柔軟性が高まることに強い期待が寄せられていることを意味する。
さらに、「今後3年以内に太陽光発電の導入・増設を検討する予定はあるか」という問いでも、「ある程度検討している」53.7%、「新規導入を前向きに検討している」18.2%と、約72%の企業が導入に向けて動き始めている結果となった。
一方で「導入や検討予定なし」は28.1%に留まり、否定的な姿勢は少数派にとどまっている。すなわち企業は、「導入したくてもできない」状況にあり、障壁が解消されさえすれば導入は一気に進むことを示唆する結果である。制度・技術・支援の改善が、実行フェーズへの転換を現実のものにする鍵といえる。
法改正で加速する導入検討、成功の鍵は伴走支援
2023年に改正された省エネ法は、企業にとって大きな転換点となった。エネルギー使用量の削減に加え、CO₂排出量削減が義務化されたことで、太陽光発電の導入は対応策としてますます現実味を帯びている。単なる「環境配慮の選択肢」から、「法対応と企業戦略に不可欠なインフラ」へと位置づけが変化したといえる。
一方で、導入に踏み切れない企業の多くは、初期費用や投資回収の見通しが立てづらいことに頭を悩ませている。また、建物条件など物理的な制約がある場合には、オンサイト設置を諦めざるを得ないケースも少なくない。こうした不安と制約を取り除くためには、適切な技術支援や制度活用のサポートが欠かせない。
今、求められているのは、
・設置診断や発電量シミュレーションによる意思決定支援
・補助金活用やPPAモデルによる初期費用の削減
・BCP対策も含めた運用サポート
・屋根以外の設置場所など柔軟な配置提案
といった“伴走型”のソリューションである。
調査を実施したOKIも、導入検討から運用まで一貫した支援を提供し、企業のGX推進に寄与しているという。制度・技術・サポートが揃い始めている今こそ、企業が課題を乗り越え実装へと踏み出す絶好のタイミングである。
調査概要:「省エネ法改正における企業のGX推進と、太陽光発電導入の意識・課題」に関する調査
【調査期間】2025年10月22日(水)~2025年10月23日(木)
【調査方法】PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
【調査人数】411人
【調査対象】調査回答時に特定事業者と回答したモニター
【調査元】沖電気工業株式会社(https://www.oki.com/jp/)
【モニター提供元】PRIZMAリサーチ
太陽光発電が企業競争力を高める時代へ
調査結果は、企業がGX推進において高い意欲を持つにもかかわらず、導入のハードルに阻まれてきた実態を示した。しかし、設置手段の多様化、政策支援の強化、外部パートナーによる伴走などにより、そのギャップが解消されつつある。太陽光発電は今後、単なる環境対策ではなく、企業競争力を左右する基盤インフラとなるだろう。
制度と技術の追い風を捉え、一歩踏み出す企業が増えることで、GXは掛け声から“新しい常識”へと変わっていく。今回の調査は、その転換点が目前に迫っていることを示す確かな証拠である。